経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

北野一氏の説得力ある重要な異論

2010年04月02日 | 経済
 ネットの良いところは、異論が見つけられるところだ。消費税の引き上げは、いまや「常識」になっているのだが、分析のない新聞受売りの論は意味がない。しかるに、分析のある異論には、少なくとも情報としての価値がある。JMM村上龍の寄稿家・北野一氏の3月15日の論は、なかなかのものだ。

 最近は、「財政赤字は巨額だ。長期金利が上昇する危険が迫っている」という論が新聞に目立つ。それは教科書どおりの分析であり、おかしくはないのだが、それは25年前から言われていることで、現実には、金利が上昇するどころか、下がってきている。教科書と反対のことが起こっているのはなぜか、本当は、そこに注目しなければならない。

 北野氏は、それをきちんと指摘しているし、「企業や家計がお金を借りず、経済活動が停滞したものだから、政府が仕方なく借金を重ねた」という分析も的を射ている。「デフレの結果として財政赤字が積み上がっているかもしれないのに、なぜ、また(消費税を上げろという)デフレ的な行動をとるのでしょう」という疑問ももっともだ。

 日本が財政赤字を積み上げてきたにもかかわらず、金利も物価も安定していたのは、1997年のハシモトデフレまでは、社会保障基金、すなわち、公的年金が所得を吸い上げてきていたからである。これはGDP統計で簡単に確認できる。財政は赤字でも年金は黒字で、政府全体としてはバランスがとれていたわけで、財政だけを見て空騒ぎをしていただけなのだ。

 ハシモトデフレは、政府全体としては債務は大きくないのに、わざわざ急激な緊縮財政を敷いて日本をデフレにし、財政赤字も膨らませた惨憺たるものだった。財政再建を優先し、景気が上向くたびに需要を吸い上げることを先に行い、後手に回って不況対策をするという繰り返しなら、金利が上がるわけもない。

 また、北野氏の「説得力がないから重要ではない、あるいは、説得力があるから重要であると思わないこと」だという指摘は傾聴に値する。成長を確保して財政再建をすることは、需要の安定を保って回復を待つだけなので説得力が乏しいが、他方、増税で財政再建は単純で分かりやすい。危険でも分かりやすい方法を選びがちなのだ。

 それもこれも、社会保障を安定させるには消費税しかないという固定観念が基になっている。そうでない方法もあることは、「小論」に示してあるとおりだ。これを知れば、焦って危険な方法を選ぶことはなくなると思うのだが。

(今日の日経)
 日銀短観・改善は非製造業、中小にも広がり。ペイオフ引き上げ再浮上。アフリカ・インド商人が中国製品を売る。東芝、2012年に超微細メモリー量産。経済教室・サービス業の低い生産性が円高の一因。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/economy/article606_2.html
コメント (1)
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