研究者にとって一番大切なのは、良い問題を見つけることである。それが良い成果につながっていく。特に、社会科学の場合、世の中に問題はたくさんあるように見えて、意外に新しいものを見つけることは難しい。それは、研究者も社会の中にあって、常識に囚われがちだからである。
国学院大学の本田一成教授の「主婦パート・最大の非正規雇用」(集英社新書)は、世間が見逃しがちな問題を抉出したものとして高く評価できる。統計や実証が十分でないと言う向きもあるかもしれないが、新しい社会問題というのは、そういうものであって、問題が意識されてから情報が集まりだす。
筆者のように社会保障をやっていると、主婦パートが大きな問題であることは痛感させられる。そして、「主婦パートの何が問題なのか、お気楽な人たちではないか」という無理解にも直面する。主婦パートに見られる貧困や不合理を問題と思ってもらえないときほど、解決が遠いと感じることはない。
本田先生は、主婦パート層は夫の家事協力が少ないと指摘し、家庭でもつらい立場にあるとするが、これは夫が低賃金で長時間労働を余儀なくされているためであろう。これも貧困の一つの側面なのだ。少子化対策には夫の家事協力が必要と言われたりもするが、少子化もイコールおカネの問題と見なければいけない。
主婦パートを能力に見合った経済的な地位まで引き上げるには、社会保障制度の改革は不可欠である。本田先生と同様、筆者も、社会保障の適用になる「パートタイム社員」化がどうしても必要だと考えている。
具体的には、年収130万円までは、保険料と同額の反対給付を行って、実質的な負担を現在と同様ゼロにしつつ、社会保険の権利を与えるべきである。また、130万円を超えたら、現在のように、いきなりフルの保険料率をかけるのではなく、所得に応じて率が逓増していくように反対給付を行い、大卒初任給程度まで、フルの保険料率にならないようにする必要がある。所要財源は3兆円というところか。
こうして保険料の段差をなくし、能力を引き出すことは、主婦パートにプラスになるだけでなく、生産性を高めて、企業や社会のメリットにもなる。その大きさからすれば、本来なら、経済構造改革の最需要課題でもおかしくないものだ。ところが、政治課題としては、特定の業界がメリットを受ける「構造改革」がクローズアップされる。そこに社会科学の難しさがある。
(今日の日経)
セブン省エネ店舗世界に2万店・電力消費3割抑制。発電用石炭4割上げで決着。円キャリー再び・新興国通貨に。日立、リチウム電池寿命2倍に。マンション活況は都心のみ。
国学院大学の本田一成教授の「主婦パート・最大の非正規雇用」(集英社新書)は、世間が見逃しがちな問題を抉出したものとして高く評価できる。統計や実証が十分でないと言う向きもあるかもしれないが、新しい社会問題というのは、そういうものであって、問題が意識されてから情報が集まりだす。
筆者のように社会保障をやっていると、主婦パートが大きな問題であることは痛感させられる。そして、「主婦パートの何が問題なのか、お気楽な人たちではないか」という無理解にも直面する。主婦パートに見られる貧困や不合理を問題と思ってもらえないときほど、解決が遠いと感じることはない。
本田先生は、主婦パート層は夫の家事協力が少ないと指摘し、家庭でもつらい立場にあるとするが、これは夫が低賃金で長時間労働を余儀なくされているためであろう。これも貧困の一つの側面なのだ。少子化対策には夫の家事協力が必要と言われたりもするが、少子化もイコールおカネの問題と見なければいけない。
主婦パートを能力に見合った経済的な地位まで引き上げるには、社会保障制度の改革は不可欠である。本田先生と同様、筆者も、社会保障の適用になる「パートタイム社員」化がどうしても必要だと考えている。
具体的には、年収130万円までは、保険料と同額の反対給付を行って、実質的な負担を現在と同様ゼロにしつつ、社会保険の権利を与えるべきである。また、130万円を超えたら、現在のように、いきなりフルの保険料率をかけるのではなく、所得に応じて率が逓増していくように反対給付を行い、大卒初任給程度まで、フルの保険料率にならないようにする必要がある。所要財源は3兆円というところか。
こうして保険料の段差をなくし、能力を引き出すことは、主婦パートにプラスになるだけでなく、生産性を高めて、企業や社会のメリットにもなる。その大きさからすれば、本来なら、経済構造改革の最需要課題でもおかしくないものだ。ところが、政治課題としては、特定の業界がメリットを受ける「構造改革」がクローズアップされる。そこに社会科学の難しさがある。
(今日の日経)
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