経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

小さな政府と所得再分配

2010年04月23日 | 社会保障
 社会を変えるには、「どうすれば」が重要だ。市場主義とか、福祉社会といっても、それらにどんな制度があるのかが分からなければ選びようがない。むしろ、有効な制度が積み重なって社会ビジョンが形成される。「新しい公共」もそうしたものではないか。日経の経済教室は、3日続けて社会ビジョンに関する論文を掲載した。紙幅の関係もあろうが、具体策に乏しい感は否めない。

 水曜のC.ホリオカ・神田玲子論文では、自由主義的なセーフティネットとして、ノンリコースローン、リバースモーゲージが挙げられていたが、こうした金融機関にリスクを持たせる制度は、政府による再保険の制度設計が必要に思う。

 また、雇用契約の多様化、差別をなくす法律強化、保育サービス充実、世代間の公平配分を挙げた上で、給付は真に必要とする人に限るとするが、どうすれば良いのかが具体的でない。これらを実現するには、社会保険の制度設計が欠かせないだろう。

 昨日の八代尚宏論文にも同様のことが言える。求められる規制改革が列記されており、医療・介護需要の増加が内需拡大の好機になると言うが、やはり、需要側の支払能力を確保する社会保険をどうするかの問題が残される。

 今日の根本祐二論文も、切り口は非常に興味深く、今後の展開も期待できると思うのだが、具体的な手法の開発という点では、効率化の源泉をどこに置くのか、人件費の削減にあるのか、過剰品質を見つけての公共投資の節約にあるのか、まだこれからという感じである。

 三つの論文に共通するのは「小さな政府」を目指す観点であり、筆者も、政府が実施に当たるのは最小限にする必要があると考えている。政府による実施は、硬直的な公務員給与やリスクを恐れた過剰品質になりがちだからだ。他方、政府は、所得再分配の役割は果たさなければならない。これは政府が効率的にできることでもある。

 本コラムでは、年金制度から保育需要の裏づけとなる所得再分配を引き出したり、非正規労働のセーフティネットを張りなおすために、賃金労働者内での負担の再配分による社会保険の適用拡大を提案したりしている。こうしたマクロ的な基盤があってこそ、ミクロ的な自由市場の機能が有効に働くのである。

(今日の日経)
 電子部品再び増産投資。農家所得保障1兆円バラマキ色濃く。日本の安保意識試す中国軍。国内排出量取引・制度設計政府内で綱引き。中国海軍、東方へ活動拡大。米消費・復調は本当か。電ガス6月値上げ・2月連続。マツダ危機前水準に。海外注文断る・新日鉄。20年債入札好調・生保需要。経済教室・PPP・根本祐二。新宿区・福祉委託にも最低制限価格。
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