ー股旅ー
1973年 日本
監督=市川崑 脚本=市川崑・谷川俊太郎 キャスト=萩原健一(黙太郎)小倉一郎(源太)尾藤イサオ(信太)井上れい子(お汲)常田富士男(仁義を受ける男)夏木章(石津の重蔵)加藤嘉(百姓又作)大宮敏充(半稼師の安吉)二見忠男(番亀)野村昭子(おはる)和田文夫(壺振り)加茂雅幹(百姓)吉田友紀(源太の弟余助)坂本長利(旅籠の亭主)美山晋八(野手の半兵衛)黛康太郎(半兵衛の子分)
【解説】
ヤクザの世界で名を売ろうと、社会の底辺で懸命にもがく3人の若者の姿を描いた、異色のアウトロー時代劇。前年、TVシリーズ「木枯し紋次郎」を手がけた市川崑監督が、70年代の閉塞した世相を反映させたアンチ・ヒーロー像を描く。一人前の渡世人をめざし、生まれ故郷を飛び出した源太、信太、黙太郎の3人だったが、厳しい世の中、喰うのもままならい。ある日、空きっ腹をかかえ、流れ着いた先、ニ井宿・番亀一家の世話になるのだったが……。(allcinema ONLINE)
【感想】
学生時代に見て、邦画にはまった頃の作品。
あの頃、ほんとわくわくして映画を見ていました。
そのうえに、この映画には特別な思い出があります。
生駒山頂遊園地で故・高田渡さんがライブをしていらして、そのライブに行きました。
帰りのケーブルカーの中で、高田渡さんと一緒になり「映画『股旅』見た?よかったね」
と声をかけていただきました。
生涯でたった一言、渡さんと交わした会話ですが、私の自慢の一つです。
さて、久しぶりに見直してみると、やくざ映画と言うより、青春群像劇という感じでした。
長々とした仁義から始まりますが、やくざ映画に出てくるような、かっこよさはどこにもない。
3人の装束はむしろ、とてもうす汚いです。
殺陣もぎこちない。
そりゃそうです、彼らは水飲み百姓の子供で、さらにあぶれ者。
剣術なんて習ったこともないし、怖かっただろうし。
家族からも村からも落ちこぼれて無宿者となってしまった黙太郎(萩原健一)源太(小倉一郎)信太(尾藤イサオ)が、渡世人=アウトローとして宿場宿場を流れ歩くうちに出会って、別れて、また出会って一緒に旅をする物語。
貧しい生まれのものはどこまでいっても貧しく、安住の場所なくやはり救いのない旅暮らししかない。
それでも彼らは、わずかな希望を糧に生きていくしかないのです。
それは、お金で年寄りの妻に売られたお汲(井上れい子)も同じ。
辛い生活から連れ出してくれた源太を頼るが、結局は飯盛り女に売られてしまう。
この二人の別れはとても切ないものがありました。
すごく淡々としたナレーションがいいです。
一世を風靡したテレビドラマ「木枯らし紋次郎」を思い出します。
☆ネタバレ
信太も源太もしょうむないことで死んでしまうし、最後一人残された黙太郎の「げんた~」と呼ぶ声がむなしい。
当時の学生の閉塞感と重なるところがあります。
さて、38年後の今、若者の状況はどうなっていますか?
同じ閉塞感の中にあっても、飛び出してアウトローになる人もいないのでは?
守りに入っている感じが強いですが、挑戦する若者に期待したいと思います。
やはり、この映画はいいわ!!