マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

初雷

2009-09-15 13:33:19 | 舞台
ー初雷ー
文学座公演 ピッコロシアター
作=川凬照代 演出=藤原新平 出演=八木昌子、倉野章子、つかもと景子、上田桃子、早坂直家、石川武、反田孝幸

【あらすじ】
津田理子(倉野章子)は兄嫁亡き後、兄・篤志(石川武)の子供たちを育てるために、実家で兄一家と暮らして15年。ようやく、兄の長女・智子(上田桃子)は就職し、長男・潤一(反田孝幸)は2浪して希望の大学に進学した。自分の役目が終わったことを実感し、第二の人生の幕が空いたことを自覚した理子だったが、50歳を過ぎた自分に何ができるのかを自問する。そして、兄の同級生の山岡(早坂直家)と再会。彼が独立して起こした会社へ誘われて、心が揺れる。また、かつての同僚からも社会復帰の難しさ、厳しさも知らされる。その上、智子の秘めたる思いが明かされる日が来て、異形家族のひずみが暴かれていく…。

【感想】
作者の川凬照代さんとは、先月「勝部月子さんの出版を祝う会」で東京でお会いしたばかりです。
勝部さんのK女子大の先輩で、私も鳥越文蔵先生を囲んで、ここ数年おつきあいをさせていただいています。
主に、美味しいものを飲んだり食べたりする会でです。

川凬さんが劇作家さんということは聞いていたのですが、たいてい和服で小柄でかわいい声でかわいくお話ししてくださる川凬さんからは、一人で家にこもって創作していらっしゃる姿は想像ができませんでした。

今回、大阪で公演されるというお誘いを頂いて、楽しみに見せていただきました。
川凬さんにはお会いできませんでしたが、いろいろ考えさせられるお芝居でした。

まず、感じたのは、こういう地味な家庭劇のテーマを、地道に演劇で表現している劇団があると言うこと。
そして、今、日本の家族が直面している問題点を、いくつも盛り込んで、笑いあり涙ありのドラマに仕立てられた川凬さんの力量に感心したことでした。

「これは、私の話かしら?私、川凬さんに取材されたかしら?」と思ってしまいました。
舞台は2002年と言っていましたから、そんなはずはないのですが、それほどまでに身近なテーマでした。

キーワードも、「クレーマークレーマー」だとか、頑固で家族と打ち解けない親父とか、お茶もいれられない中年男性とか、音信不通だった昔の男友達が離婚したとか、思わず、自分に置き換えてしまいそうな素材の数々。

そして、テーマは普遍的な、家族のために何ができるか、あるいは、自己犠牲だと思っていたことが、本当に愛する人のためだったのか、など。

背景は現代的な異形の家族。

それらをうまく盛り込んで、観賞後もさわやかな気持ちになる娯楽作品に仕上げてありました。

核家族からさらに進んだ現代では、もう完璧な家族の形なんて求められないけれど、でも、人は家族なしでは生きてはいけない。
家族となれば、よかれとおもってしたことが報われないこともあり、自己犠牲もあるし、それがまた喜びに変わることもあるでしょう。
この作品は、そんな人生の機微を感じさせ、共感できるお芝居でした。

理子はこのあと、どうするのでしょう?
自立なんて、もうとっくの昔に忘れて、主婦というぬくぬくのお座布団に沈み込んでしまった私も、ちょっとは重たいお尻を浮かせてみようかなあ、と思いました。

川凬照代さんのプロフィール
鹿児島県枕崎市生まれ。港町に生きる家族を描いた『塩祝申そう』で第一回文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。同作品は『鰹群』『港の風』との三部作となり、ぐるーぷえいとにて藤原新平演出で上演。1988年『二人で乾杯』(劇団東演)、1989年『盛装』(ぐるーぷえいと)など正統的なリアリズム演劇を多数執筆。
文学座では1995年『野分立つ』(主に全国演鑑連加盟団体での上演により2002年まで再演を重ねるヒット作となる)、1997年『盛装』〔改訂〕を上演している。現実感のある会話を紡ぎ、登場人物たちの心の動きを緻密かつ的確に表現することには高い評価を得ている。

エレジー

2009-09-15 13:25:50 | 映画ーDVD
ーエレジーーELEGY
2008年 アメリカ
イザベル・コイシェ監督 ペネロペ・クルス(コンスエラ・カスティーリョ)
ベン・キングズレー(デヴィッド・ケペシュ)パトリシア・クラークソン(キャロライン)デニス・ホッパー(ジョージ・オハーン)ピーター・サースガード(ドクター・ケニー・ケペシュ)デボラ・ハリー(エイミー・オハーン)

【解説】
現代アメリカ文学の巨匠、フィリップ・ロスの短編小説「ダイング・アニマル」を映画化した大人の愛の物語。セックスから関係をスタートさせた男女が、真の愛に目覚めるまでをしっとりと描く。身勝手な大学教授役に『砂と霧の家』のベン・キングズレー。美ぼうのヒロインをスペインを代表する若手女優、ペネロペ・クルスが体当たりで演じている。男女の間に横たわる深くて暗い溝にため息をつきながらも、愛への希望を抱かせてくれる。

【あらすじ】
大学教授のデヴィッド(ベン・キングズレー)は、教え子のコンスエラ(ペネロペ・クルス)と一夜を共にする。彼は30歳も年の離れた若く美しい女性との情事に有頂天になり、親友ジョージ(デニス・ホッパー)にも彼女のことを打ち明ける。やがて二人はお互いをかけがえのない存在だと認識するようになるが、デヴィッドの態度は煮え切らず……。


【感想】
初老の大学教授と教え子の女子大生。
一歩間違えば、エロ映画になりそう。
実にきわどいんだけど、映像はとてもきれいでした。

大学教授のデヴィッド(ベン・キングズレー)は独身主義者。
一度は結婚して、今は医者になっている息子がいる。
20年前の教え子だったキャロライン(パトリシア・クラークソン)とはセックスフレンドとして長年の付き合いがある。

あるとき、授業に遅れて来たコンスエラ(ペネロペ・クルス)を見初め、ゴヤの着衣のマハを見せ、デートに誘い、その後ベッドインとなる。

デヴィッドはかつてない激しい恋心を抱き、独占欲に苦しみ、嫉妬心もむき出しにする。
コンスエラは駆け引きのない愛を求め、まっすぐにデヴィッドを愛するが、デヴィッドはそこからの一歩を踏み出せず、結局二人は別れてしまいます。

そして、2年後に鳴った電話の主は、コンスエラでした。
「私は今、あなたが必要なの」

この作品では、デヴィッドの長い間の愛人の存在や、息子の不倫など、快楽主義者であるはずのデヴィッドにも浮き世のしがらみがあり、その人たちのセリフもいちいち味わいがありました。

その一瞬の輝きとしての性や愛を求める男と、永遠の愛を求める女。
いつまでたっても平行線の男と女のラブストーリーでした。

「あなたになら言える秘密のこと」のイザベル・コイシェ監督、男性が作る映画とはひと味違っている感じがしました。