マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

カムイ外伝

2009-09-26 12:19:23 | 映画ー劇場鑑賞
ーカムイ外伝ー
2009年 日本
監督=崔洋一 原作=白土三平 キャスト=松山ケンイチ(カムイ)小雪(スガル(お鹿))伊藤英明(不動)大後寿々花(サヤカ)イーキン・チェン(大頭)金井勇太(吉人)芦名星(ミクモ)土屋アンナ(アユ)イ・ハソン(カムイ(少年時代))山本浩司(-)PANTA(絵師)佐藤浩市(水谷軍兵衛)小林薫(半兵衛)

【解説】
白土三平原作の傑作コミックを『血と骨』の崔洋一が実写化したアクション娯楽大作。忍びのおきてに背き、たった一人で追っ手から身をかわす不屈の主人公の苦悩と孤独を浮きぼりにする。孤高のヒーローをその抜群のセンスで演じるのは、『L change the WorLd』の松山ケンイチ。ヒロインを『ラスト・ブラッド』の小雪が演じている。人気脚本家、宮藤官九郎と監督が共同で手掛けた脚本からあふれ出す人間味に満ちた物語に圧倒される。


【あらすじ】
鉄の意志を持ち、見事な剣の腕前を持つ忍者カムイ(松山ケンイチ)は、おきてにがんじがらめにされた忍びの世界に閉口してそこから抜け出す。かつての仲間、大頭(イーキン・チェン)やミクモ(芦名星)はそんな彼を裏切り者とみなし、執拗(しつよう)にその後を追う。ある日、漁師の半兵衛(小林薫)を助けたことでカムイはその家族に歓迎されるが……。

【感想】
「カムイ伝」は私の青春の書のひとつで、ゴールデンコミックスの13巻から21巻を持っています。
いつか全巻揃えるのが夢だったんだけど、最近になって、「カムイ伝2部」もあることを知りました。
第3部も構想中とか。
ちょっと、気持ちが萎えてしまいました。

とにかく、カムイ伝は難しい。
登場人物もたくさんいて、話も複雑。
第一、肝心のカムイが初めの3巻くらいでほとんど登場しなくなります。

そこで、カムイファンはカムイが主人公のスピンオフ「カムイ外伝」に救いを求めたのでした。
これも、3巻持っていて、これだけだと思っていたら、とんでもないねー。
ウィキで調べたら、第2部もあったんだ!!
映画になっているのはこの第2部の「スガルの島」のようですね。
従って、この話は私の知らない話でした。

「L」の松山ケンイチがカムイを演じると聞いた時から、とても楽しみにしていました。
今、なぜカムイなんだろう、とも思ったし、2004年の「デビルマン」の悪夢もよみがえってきました。
(この作品はいまでも私のワースト1です)
こんなふうに、期待と不安の中で見に行ったわけです。



当時の劇画って、一種独特の時代の雰囲気を映していたし、今とは全然違う、混沌とした感じの中にも、単純な明るさがあった時代だと思います。
いろんな考え方の人がいたにしても、認識は同じ、時代としてのコンセンサスがはっきりしていたと思う。
これが、現在とは大きな違いだと思います。

話は変わるけど、カムイは美形です。(ここが大切!)
いわゆるイケメン。
そして、すごーく強い、意思が硬い、頭がいい。
今で言ったらイチローのようなストイックなヒーローです。

「カムイ外伝」はカムイが抜け忍となって、忍びの世界から追われているというシチュエーションですが、カムイ自身は自らの自由と魂の平和を求めて逃走を続けています。
ただ、自分が生き延びるために人を殺しているのではありません。

なぜ、それほどまでにカムイが自由と魂の平和を得ようとするのか、それが「カムイ伝」の大きなテーマでもあります。
「カムイ伝」のほかの主人公たちも、自分たちの生まれた状況をよりよくするために戦っている大叙事詩です。

カムイは、江戸時代の最下層である、ので生まれ、読んで字のごとく、人とは扱われない暮らしを強いられています。
とても貧しく、嫌われる仕事しか与えられず、百姓から差別されて育ちます。
子供心に、差別されないためにはどうすればいいかを考えて、強くなりたい一心で忍びの組織に入るのです。

カムイが大人になってわかったこと、この社会のしくみそのものが、自分をがんじがらめにしているということ。
誰かを差別して優位に立つことによって、階級社会を作り、権力に歯向かう気力まで萎えさせている世の中。
巧みな権力構造です。

しかも、闇の組織である忍びには、もっと厳しい掟がありました。
そこには、カムイの望む自由や幸福なんて皆無だったのです。
絶望したカムイは組織を抜けます。
きっと、自分の納得のいく生き方がどこかにあると信じて、なにがなんでも生き抜くという強い意志に、共感を覚えたものでした。

学生運動華やかなりし時代、学生たちの鬱屈した閉塞感を代弁しているかのような物語。
「カムイ伝」のもう一方の主人公正助は、仲間と連帯して自由な社会を目指しますが、カムイはドロップアウトしてアウトローの生き方を選んだのでした。
それが「カムイ外伝」!!

さて、もちろん映画はそんな深い共感は望めないとは思っていました。
感動と共感のある劇画ですが、そうはいっても劇画なので、辻褄の合わせ方やリアルという点からは、実写では難しい問題もたくさんあると思いました。

びっくりするくらい前置きが長くなってしまいましたが、ネットでレビューを探して読んでみると、評判がいいとはいえないのです。
一緒に行く夫や娘にも「期待したらあかんみたいよ」と前もっていいました。
私も、すごく覚悟して見ていました。

☆ネタバレ
でも、前半はよかったんではないかな?
「変移抜刀霞斬り(へんいばっとうかすみぎり)」や「飯綱落し(いづなおとし)」など、カムイの得意技が丁寧に描かれていたし、疾走感もよかったと思いました。

伊藤英明の不動もよかったと思うし、サメのCGもありえないけど、べつに問題ないと思いました。

ただ、大頭があまりすごみがなかったことと、謎の絵師が最後まで謎だった!!
それから、佐藤浩市の領主とその妻土屋アンナがストーリーからも浮いていたように思いました。
それから、唐突な毒殺!!
あそこでテンションがぐっと下がってしまって、あとの対決が際立たなかったのが、残念。



原作のエロティシズムや残酷さなどのニュアンスは確かに足りないなあ。
映像はすごく残酷なんだけど、マンガチックで、逆に漫画が原作ということを強調している感じがしました。
でも、これは年寄りの知ったかぶりかもしれないので、今の人の感性にはよかったのでしょうか、どうでしょうか?

夫は酷評していましたが、娘は「面白かった」と言ってくれたので、カムイファンの母としては、ほっとしました。


庭から昇ったロケット雲

2009-09-26 12:17:46 | 映画ーDVD
ー庭から昇ったロケット雲ーTHE ASTRONAUT FARMER
マイケル・ポーリッシュ監督 ビリー・ボブ・ソーントン(チャーリー・ファーマー)ヴァージニア・マドセン(オードリー・“オーディ”・ファーマー)ブルース・ダーン(ハル)ティム・ブレイク・ネルソン(ケヴィン・マンチャク)マックス・シエリオット(シェパード・ファーマー)ジャスパー・ポーリッシュ(スタンリー・ファーマー)ローガン・ポーリッシュ(サンシャイン・ファーマー)マーク・ポーリッシュ(FBI捜査官マチス)ジョン・グライス(FBI捜査官キルボーン)

【解説】
父の死という事情から宇宙飛行士の夢をあきらめ、実家の農場を継いだ男が、自作のロケットで宇宙へ飛び立とうとする感動の家族ドラマ。監督は『ツイン・フォールズ・アイダホ』のマイケル・ポーリッシュ。主人公の農夫を『チョコレート』のビリー・ボブ・ソーントン、その妻を『サイドウェイ』のヴァージニア・マドセンが演じている。奇想天外なストーリーではあるが、夢を信じ続けることの大切さを問うハートフルな作品。

【あらすじ】
空軍パイロットを経てNASAの宇宙飛行士訓練プログラムに参加したチャーリー(ビリー・ボブ・ソーントン)。しかし、父の急死により、彼は実家の農場を継がざるを得なくなる。夢をあきらめたかに見えたチャーリーだったが、帰郷から10年、彼は自分で作ったロケットでの宇宙行きを計画。そんな彼を妻と3人の子どもたちが支える。

【感想】
この映画、なかなか評判がいいんですが、私はちょっと不思議でした。

宇宙飛行士の夢を諦められない主人公チャーリー(ビリー・ボブ・ソーントン)が、自分の農場でロケットを組み立て、打ち上げようというもの。
それを支える、妻と息子。

飛行機じゃなく、ロケット!!

途中では、無謀にも準備が整わないままに打ち上げて、みんなに大迷惑をかけ、自分も大けがをしても、夢を貫いて打ち上げに成功したと言う物語。

支えた家族は、ほんと偉いと思うけど、これって、男のロマンというより、わがままじゃないかなあ、と思いました。