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●科学技術ニュース●日本製鉄、2030 年に対2013年比30%減のCO2排出削減を実現へ

2021-03-22 09:30:21 |    ★炭素ニュース★

 日本製鉄は、同社独自の新たな対策として「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050~ゼロカーボン・スチールへの挑戦~」を掲げ、経営の最重要課題として諸対策を検討・実行しているが、2030 年においては、現行の高炉・転炉プロセスでの COURSE50の実機化、既存プロセスの低 CO2化、効率生産体制構築等によって、対 2013 年比30%減の CO2排出削減を実現する。

 2050 年に向けては、電炉による高級鋼の量産製造、Super COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じた CO2の抜本的削減、水素による直接還元鉄製造などの超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策なども含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指す。

 特に、究極のゼロカーボン・スチールの製造技術である 100%水素による直接還元鉄製造は、前人未到の技術であり、極めてハードルの高いイノベーションが必要となる。

 また、電炉による高級鋼の量産製造においては電炉の生産性向上や大型化・効率化、材質有害元素の無害化技術の確立、高炉水素還元においては水素還元時の吸熱反応に対する水素加熱吹込み技術の確立等、極めて難しい技術開発が必要。

 こうしたイノベーションに向けては、約 5,000 億円の研究開発費、設備実装に約4~5 兆円の投資を要すると見込まれる。加えて、2050 年段階での外部条件含めたベストケース想定でも、粗鋼製造コストは現状の倍以上になる可能性がある。

 ゼロカーボン・スチールは鉄鋼業界のチャレンジだけでは実現できない。非連続的イノベーション等の研究開発や設備実装に対する長期かつ継続的な政府の支援、安価安定大量の水素供給インフラの確立、国際競争力のあるコストでのカーボンフリー電源の実現、経済合理的な CCUS の開発・実用化のための国家プロジェクトの推進、国際競争におけるイコールフッティングの確保、莫大なコストを社会全体で負担するしくみの構築等が前提となる。

 同社は、このような鉄鋼製造プロセスの抜本的技術革新を推進するだけでなく、名古屋製鉄所次世代型熱延ラインの新設や電磁鋼板製造体制の強化を通じて、車体軽量化のための超ハイテンや電動車で使われる駆動モーター用高性能電磁鋼板等の高機能商品の開発・供給能力増強によって、CO2削減に資する商品でも我が国のカーボンニュートラル実現に貢献していく。(日本製鉄)


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