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●科学技術ニュース●理研、酸素による表面反応経路の制御に成功

2022-06-14 09:36:50 |    化学
 理化学研究所(理研)開拓研究本部Kim表面界面科学研究室のチー・ジャン基礎科学特別研究員(研究当時)、數間惠弥子研究員(研究当時)、金有洙主任研究員の研究チームは、酸素による末端アルキン(末端に炭素-炭素の三重結合を持つ有機分子)の表面反応経路の制御に成功し、炭素-水素(C-H)結合の活性化過程に関与する酸素種の触媒性能と反応機構を解明した。

 同研究成果は、部分酸化やエポキシ化[1]など、多くの重要な界面化学プロセスの単一分子レベルでの理解に貢献すると期待できる。

 今回、同研究チームは、銀基板表面上に末端アルキン分子を蒸着し加熱すると、新しい炭素-炭素(C-C)結合を形成する「C-Cカップリング反応」が起こる一方、分子系に酸素を導入することで末端アルキンのC-Cカップリングの代わりにC-H結合の開裂を伴う「C-H活性化反応」が起こることを見いだし、酸素により表面反応経路を効率的に制御することに成功した。

 走査型トンネル顕微鏡(STM)イメージング/操作技術と密度汎関数理論(DFT)計算を組み合わせることで、分子状酸素および原子状酸素がそれぞれ会合性および解離性のメカニズムにより水素の脱離を引き起こし、室温以下でもC-H活性化の反応経路を高い選択性で誘導できることを明らかにした。

 また、酸素を導入する触媒戦略を適用したC-H結合活性化プロセスでは、有機金属構造も形成することを明らかにした。

 同研究では、分子系に酸素を導入することで、末端アルキンの表面上の反応経路をC-CカップリングからC-H活性化へと高い選択性で誘導できることを系統的に実証した。また、気体分子とあらかじめ吸着した表面との反応機構に関する基礎的な知見を提供し、これらは部分酸化やエポキシ化など、多くの重要な界面化学プロセスの理解に道を開くもの。

 同研究で明らかになった酸素種の触媒性能と反応機構は、分子系に気体分子を導入することで表面上の特定の反応経路を選択的に制御し、高度に加速するための有望な戦略を提供すると期待できる。また、気体分子が関与する界面化学反応過程の基礎的な理解にも有用であると考えられる。<理化学研究所(理研)
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