“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「シリコンバレーを越えて」(ラメシュ・スリニヴァサン著/ニュートンプレス)

2021-09-09 09:33:30 |    企業経営



<新刊情報>



書名:シリコンバレーを越えて〜次世代の革新家がめざすデジタル新技術と平等社会〜(上)(下)

著者:ラメシュ・スリニヴァサン

監修:大屋雄裕

翻訳:田村豪

発行:ニュートンプレス

 現代の主要なテーマであるデジタルテクノロジー。その根本を成す、アップル、グーグル、フェイスブックといったIT企業のメッカでもあるシリコンバレーから想起したという同書は、主にハイテク企業によって引き起こされたさまざまな問題について取り上げている。ほんの一握りのテックエリートと呼ばれるIT長者による富の独占。そして、開発者側の偏見が反映されたデジタルにおける人種差別の問題など……。そういった多種多様な問題を取り上げながら、効率性と公平性、民主主義、多様性の価値とのバランスをとったテクノロジーの例を世界各地から紹介。また,プライバシー保護システム、普遍的なベーシックインカム(基本所得保障)、勤務先が変わっても引き継げるポータブルな社会福祉給付、組合の組織化、デジタル協同組合、労働者評議会などのように、あまり広くは確立されていないが、イノベーションの最先端の例を紹介。私たちの未来が、新しいテクノロジーとともに平等で生きやすいものになるように、との著者の思いが詰まった一冊。
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●科学技術ニュース●住友林業クレスト、鹿島工場の使用電力を100%再生可能エネルギ―化を実現

2021-09-09 09:32:51 |    ★炭素ニュース★
 住友林業の全額出資子会社、住友林業クレスト(愛知県名古屋市)は、鹿島工場にPPAモデル(電力販売契約:オンサイト型自家消費太陽光発電サービス)とカーボンフリー電力を導入し、使用電力の100%再生可能エネルギー化を実現した。

 三井住友ファイナンス&リース(SMFL)グループのSMFLみらいパートナーズが提供するスキームを活用し、工場使用電力のカーボンニュートラルを達成した最初のケースとなる。

 ①PPAモデルによる太陽光発電設備設置で再生可能エネルギー活用

 建具や造作材など住宅用各種部材の製造販売を行う住友林業クレストは2020年5月に鹿島工場に工場棟を新設。新工場棟の屋根に2020年9月、SMFL みらいパートナーズが太陽光発電設備を設置した。同設備は発電容量623kW、年間発電量約55万kWh(一般世帯約120戸分)の電力を供給し、同工場全体の年間電気使用量の約20%を賄う。

 ②カーボンフリー電力の活用
 住友林業クレストは、SMFL みらいパートナーズの仲介によりエナリスが提供するカーボンフリーの電力を購入。購入電力は再生可能エネルギー電力に非化石証書(FITトラッキング付き)が付与されており、RE100に適合した電力となっている。太陽光発電設備だけでは調達しきれない残る80%の電力分を化石由来の電力からカーボンフリーの電力に切り替えた。

 この2つの取り組みで住友林業クレストの鹿島工場で使用する電力は再生可能エネルギー比率100%となり、年間約1,288トンのCO2を削減する。<住友林業>
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●科学技術ニュース●NIMSと東京工業大学、水素化物の出現を支配する因子を解明

2021-09-09 09:32:04 |    ★水素ニュース★
 物質・材料研究機構(NIMS)および東京工業大学は、水素社会における基盤技術と位置付けられる金属水素化物の探索において、母体金属の硬さが金属の水素化物形成能の支配因子であることを発見した。

 この単純な判定指針を用いることにより、従来のような試行錯誤の材料探索に頼らず、効率的な水素吸蔵材料の開発が可能になると期待される。

 水素社会では水素を大量に含有する金属水素化物が重要な役割を果たす。貴金属パラジウム (Pd) は水素透過材料として実用に供せられているが、高コストという問題がある。周期表上Pd近傍にある遷移金属元素群は水素化物を形成しないため、このPdの物理的特異性の原因を解明できれば、新たな廉価な水素機能性金属系材料の開発の可能性が開ける。

 同研究では、遷移金属と水素との化学結合に着目し、Pd水素化物の特異性を明らかにした。

 遷移金属はその最外殻d軌道を用いて水素と結合を生じ、固体水素化物を形成する。さらに、周期表でPd近傍に位置する元素との水素化の違いを、電子構造計算により弾性率 (圧縮し難さ。直感的な硬さの指標) を用いて明らかにし、Pd同様に軟らかい金属中のピンク色の横線よりも小さな弾性率を持つ金属は、水素化物を作り易い傾向があることを発見した。

 周期表において、遷移金属群の両端に位置する金属は軟らかい傾向がある。d軌道が埋まっている銅族、亜鉛族では水素と結合できないために、格子が軟らかくても、例外的に水素化物を生成しない。さらに、この硬さによる水素化の判定指標は、金属、合金だけでなく、水素吸蔵金属間化合物にも適用できることを明らかにした。酸化物、窒化物などの無機化合物の生成には、このような因子は知られておらず、水素化物生成の特異性を示すもの。

 今回の成果は、新たな合金、金属間化合物の潜在的水素吸蔵能力の迅速な判定を可能にすると期待される。今後は、廉価でかつ安定供給が見込める元素をもとに、水素関連機能 (例えば、水素透過、水素吸蔵) を有する金属間化合物の開発を目指すと同時に、その化学的応用展開も見据える。<物質・材料研究機構(NIMS)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「並行プログラミング入門」(高野祐輝著/オライリー・ジャパン<オーム社>)

2021-09-09 09:31:37 |    情報工学



<新刊情報>



書名:並行プログラミング入門~Rust、C、アセンブリによる実装からのアプローチ~

著者:高野祐輝

発行:オライリー・ジャパン<オーム社>

 複数のプログラムを並列に実行する「並行プログラミング」は、処理速度を飛躍的に向上させる昔からある手法だが、タスク管理、プロセス管理、スレッド管理をはじめ、複雑なしくみについての幅広い知識とテクニックが必要となる。同書はRustとCを使い、CPUのアトミック命令、グリーンスレッド、アクターモデル、ソフトウェア・トランザクショナルメモリ、async/awaitなど、並行プログラミングに関する理論的な背景から実装までを網羅的に扱う。ソースコードはGithub上で公開、実際に動作するソースコードを参考にしながら読み進められる。
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