産業技術総合研究所(産総研)ナノ材料研究部門 電子顕微鏡グループ 古賀健司 主任研究員、触媒化学融合研究センター革新的酸化チーム 洪達超 主任研究員は、物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 石原伸輔 主幹研究員と共同で、植物ホルモンのひとつであるエチレンを、従来とは違う方式で、選択的に検出する試作機を開発した。
同試作機は、ポータブルで、簡単な操作により、青果物(野菜や果物)の品質管理で鍵となるエチレンガスの濃度を貯蔵や物流時に容易に測定できる。
産総研とNIMSは共同で、エチレンの選択的検出について、新しい原理による研究に取り組んできた。しかし、その取り扱いには専門技術や研究用計測器が必要であり、技術の社会実装に課題があった。
今回、このギャップを埋めるために、誰でも簡単に使えるエチレンセンサーの試作機を開発した。
同試作機は、新しいエチレンの検出原理に基づくものであり、エチレンは触媒層によってアセトアルデヒドに変換され、アセトアルデヒドはアミン塩試薬と反応し塩酸ガスを発生させ、CNTセンサーの抵抗値を減少させるものである。
なお、既存のセンサーでは、共存ガスの影響により誤検知が起こる場合があるが、同試作機の検出方式では、流路切り替え前に共存ガスを含めた外乱による影響をキャンセルし、流路切り替え操作による電位差の変化を確認することで、確実なエチレン成分の検出が可能である。
今後、本試作機を企業へとレンタルすることで実地検証を進め、将来的な社会実装を目指す。また、現状では定期的な校正が必要であるため、長期安定性の向上を目指してセンサー材料の改良を継続する。<産業技術総合研究所(産総研)>