国立天文台の廣田朋也助教が率いる研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、オリオン大星雲にある生まれたばかりの星 オリオンKL電波源I(アイ)において、高エネルギー状態にある水分子が放つメーザーの検出に成功した。
高エネルギー状態の水メーザーは、年老いた星では、これまでに数例の検出例があるものの、生まれたばかりの星では初めての検出。これは、アルマ望遠鏡のかつてない高い感度と撮像能力によって初めて可能になった研究成果。
研究チームはこれまで、国立天文台の電波望遠鏡ネットワークVERAを用いて、オリオンKL電波源Iの観測を行ってきた。電波源Iの周囲にあるガスの円盤や高速ジェットからは、低エネルギー状態にある水分子や一酸化ケイ素分子のメーザーが発せられている。
VERAで得られたこのデータと今回アルマ望遠鏡で検出された高エネルギー状態の水メーザーを比較すると、それらが同じ速度で運動するガスから放出されていることが明らかになつた。このことは、高エネルギー状態の水メーザーも、生まれたばかりの星のごく近傍にあるガス円盤、あるいは高速ジェットの高温ガスから放射されていることを意味する。今回の研究により、高温ガスの新たな観測手段を手に入れ、生まれたばかりの星のより近くにまで迫る研究が可能になった。
今後アルマ望遠鏡はさらなる高性能化が進められ、近い将来に現在の50倍の高解像度の天体画像が得られるようになる計画。これにより、アルマ望遠鏡を用いて、高エネルギー状態にある水メーザーの観測を通して、オリオンKLの性質やその周辺を回るガス円盤、噴き出す高速ジェットの詳細な撮像が可能になり、星がどのようにして生まれるかという謎の解明が進むと期待される。