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■科学技術ニュース■慶應大学、 書道の達人の筆使いを忠実に再現するシステムの開発に世界初めて成功

2012-10-11 10:32:02 |    機械工学

 慶應義塾大学理工学部の桂 誠一郎准教授は、NEDO の産業技術研究助成事業の一環として、書道の達人の動作情報から細やかな力加減を抽出・保存し、ロボットにより忠実に再現する「モーションコピーシステム」の開発に世界で初めて成功した。

 今回、書道家の佐渡壽峰氏の協力の下、「モーションコピーシステム」による書道動作の保存・再現の検証を行い、書かれた文字を高い精度で再現することが可能であることを明らかにした。「モーションコピーシステム」を使用することで、どのような文字でも動作情報を記録し、再現が可能となる。同技術により、インターネット等を利用したスキルのトレーニングなどに応用することも可能。

 特に、力加減は他者に伝えることが困難だったために、熟練技能の習得には長時間の修業が必要であった。「モーションコピーシステム」のスキルトレーニングへの応用により、これまで「勘と経験」に頼っていた熟練技能の伝承を効率良く達成できるものと期待される。

 「モーションコピーシステム」は動作を保存するための「モーション保存システム」と再現するための「モーション再現システム」の2つのプロセスによって構成されている。まず動作の保存プロセス
は「録触」に相当するもので、操作者にアクチュエータ(マスタシステム)を装着して動作における動きと力加減をデジタル情報として抽出し、操作者の動作を代行するアクチュエータ(スレーブシステム)によって再現させることで、実世界における作用力と反作用力を分離して抽出することが可能になる。

 一度抽出した動作はデジタル情報として保存されるので、「いつでも・どこでも」ユビキタスに再現することができる。再現プロセスでは、スレーブシステムのみを使用して動きと力加減を再現する。同技術では、加速度制御に基づいて動作を再現するため、双対性の関係がある動きと力加減の双方を忠実に再現することに成功した。

 「モーションコピーシステム」は従来のモーションキャプチャなどとは異なり、「力の入れ加減」や、「ものに触れた時の感覚」も記録、再現できるのが特徴。さらに、インターネット等を利用して遠隔地間で情報をやり取りすることで、スキルのトレーニングに応用することも可能。特に、力加減は他者に伝えることが困難だったために、熟練技能の習得には長時間の修業が必要であった。「モーションコピーシステム」のスキルトレーニングへの応用により、これまで「勘と経験」に頼っていた熟練技能の伝承を効率良く達成できるものと期待される。

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