“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

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■科学技術ニュース■産総研、1万サイクル以上の耐久性をもつ調光ミラーを実現

2012-10-05 10:51:14 |    化学

 産業技術総合研究所(産総研)は、鏡状態から透明状態、透明状態から鏡状態に戻すことを1サイクルとした切り替えにおいて、10,000サイクル以上(1日に朝と夕方で2回の鏡状態と透明状態の切り替えをしたとき、約30年に相当するサイクル数)の耐久性をもつ調光ミラーをマグネシウム・イットリウム系合金の薄膜材料を用いて実現した。

 この調光ミラーを活用することにより、オフィスビルなどの冷房負荷を大幅に低減する窓ガラスの実用化が期待される。これは、NEDOの産業技術研究助成事業(若手研究グラント)の一環としておこなわれたもの。

 今回、調光ミラー用薄膜材料として、マグネシウム・イットリウム(Mg-Y)系合金が有力であることを見いだした。この合金を用いることで、透明状態と鏡状態の切り替えに対する耐久性が10,000サイクル以上まで飛躍的に向上した。

 耐久性(切り替えることができるサイクル数)は、パラジウムの膜厚に強く依存し、パラジウムの膜厚が薄くなるにしたがって急速に減少したが、調光ミラー薄膜層とパラジウム触媒層の間に中間層を挿入することで、パラジウム触媒層の膜厚を半分以下まで薄くしても10,000サイクル以上の耐久性を維持することができ、触媒層の厚さを薄くすることで透明状態における光学特性が向上した。

 このマグネシウム・イットリウム系合金を用いた調光ミラーは、10,000サイクル以上の鏡状態と透明状態の切り替えに対しても、鏡状態および透明状態における透過率は繰り返しサイクル数によらず一定の値を示しており、劣化していないことが確認された。

 10,000サイクルというサイクル数は、マグネシウム・ニッケル合金を用いた調光ミラーの7倍以上に相当し、1日に朝と夕方で2回の切り替えを行った場合、30年に相当するサイクル数。この耐久性の飛躍的な向上により、調光ミラーを用いた窓ガラスをオフィスビルなどで使用するなどの実用化が期待される。 

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