kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

日立株に刺さった二つの棘

2018-10-03 06:15:22 | 日記
日経平均が27年ぶりの高値を更新という威勢の良いニュースとは
裏腹に日立株はすっかり忘れられた銘柄になってしまったのでし
ょうか。子会社の日立建機が米中貿易戦争で影響を受ける中国関
連銘柄という立ち位置にはありますが、日立本体で手掛ける昇降
機事業を除けばグループ売上9兆円余りの日立にとって中国経済
減速への影響は限られると思われます。

しかし1月高値から2割近く安い株価のPERは僅か9.2倍です。PBR
も1.1倍と今期も二期連続で最高益見通しの企業としては寂しい
限りです。PERで同業のソニーの半分程度にしか評価されない大き
な要因はどこにあるのでしょう。

日立を評価するうえでいつもついて回るのが手掛ける事業が多岐
に渡り市場の評価が低くなる傾向が強い複合経営を挙げる市場関
係者がいます。もっともソニーだって本業のエレクトロ分野に加
えて映画や音楽のエンターテイメント事業や保険と銀行の金融部
門を抱えています。それでもソニーの市場における評価は高いよ
うです。

電機銘柄の中では異例の低PERにはやはり市場が懸念しているよう
な不安材料があるようです。一つは英国で計画が進んでいる原発
建設です。福島原発事故以来安全対策の費用がかさみ原発建設へ
の投資額は大きく膨らんでいます。国内での新設原発建設が当面
期待できない中で日立で英国での原発建設を推進してきました。

欧州では反原発だけでなく反化石燃料の掛け声とともに再生可能
エネルギー推進で大きな潮流になっています。建設費用の高騰で
もはや原発建設には世界的な逆風が強まっています。日立の英国
での原発プロジェクトは限りなく不透明になってきました。もし
現時点で撤退すれば日立の損失は2700億円とも言われています。

しかし今期純利益で4000憶円を見込んでいることから今なら屋台
骨を揺るがすような額ではありません。既に英国政府を巻き込ん
だ国家プロジェクトになっていますから日立だけで判断は出来な
いでしょう。しかしメイ政権自体がブレグジットの混乱からいつ
政権が崩壊するかもしれません。また欧州での再生可能エネルギ
ーシフトは従来の予想以上に急速に進んでいます。反原発の世論
の強い欧州ではビジネスとしてもはや成り立ちにくいのかもしれ
ません。

英国での原発事案の他にも三菱重工との火力発電事業での巨額な
賠償案件を抱えています。日立側の言い分が通り引当額程度の損
失で収まれば問題はありませんが、まだどう転ぶか分かりません。
不透明要因を嫌う市場では日立株になかなか長期資金が集まらな
いのは仕方のないことかもしれません。投資家としては数字に表
れないところにも目配りが必要なのかもしれません。日立が割安
株から脱却するには容易いことではないようです。
コメント
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