中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

「現場力」再考 第1回

2019年10月01日 | ブログ
働き方改革

 政府の「働き方改革」の方針が打ち出された折、これは本来企業の「働かせ方改革」ではないのかと思ったものだ。農業や漁業または自由業など、自分で自身を管理する、また管理し得る働き人ならいざ知らず、勤め人は建前上会社や上司の裁量によって労働を行っており、働き方を改善しましょうと言われても、「上に言ってよ」の筈である。

 ただ、「働き方」というフレーズが企業労働者にも響くのは、いつの間にか権限が委譲され、残業なども労働者の裁量で行っているからであろうと思う。職場の残業管理は中間管理職の悩みの種でもあり続けていたのだ。

 企業内でパラハラと言えば、上司から部下へが一般的だが、一般職の部下の集まりが職場の実務を取り仕切り、横滑り人事の彼らの上司であるキャリア社員は、部下の意向に逆らい難い職場が現出したりする。キャリア社員は、部下とのトラブルで経歴に傷を付けたくないが、一般職の部下はどうせ出世とは無縁の立場だ。逆パラハラが暗黙の裡に成立する場合がある。

 人事権を持つ上司は、職場の癌細胞を摘出すれば良いのだが、大企業では簡単に社員を馘首できないから人事課等と連携して配転となるが、そのような社員の受け入れ先がなかなか見つからないことが多い。どこの職場も問題社員は受け入れたくない。

 そこで、工場の中には吹き溜まりのような職場が出る。懲りない社員は転出元の上司の悪口などほざいて正当化するけれど、そのような社員の多くなった企業は衰退する。救済合併などの大手術しか手はない。

 横並び査定で、良い社員も普通の社員も悪い社員も待遇がほとんど変わらず、残業が多いか少ないかで手取りに大きな差が出るだけの給与システムも問題だ。

 そんなことを続けているから、この国の労働生産性は先進国中では最低グループで、これでは世界の中で見てくれが悪いと、政府が残業はなるべく止めて早く帰るようにしましょうなどと言わなくてはならないまでになった。一方労働者団体は政府施策で残業が減って所得が落ちたと文句を言う。

 以前、この国の企業でTQC(現在はTQMと言う)花盛りの頃は、現場力が高いと評判だった。現場力が本当に高ければ、労働生産性も高くなければいけないと思うけれど、現場力を高めるために一般職社員にまでなし崩し的に権限を委譲してしまったからおかしいことになった。この国の人口が増えていた時代には、現場力の高さが、労働生産性の低さをカバーしておつりが来たが、低成長時代ではそうは行かない。

 人手不足と言いながら労働者の実質所得は増えず、それが当たり前となって久しい。抜本的解決策として、消費税増税が庶民の生活を直撃する中、どこかのIT企業のように、1兆円規模の利益を出しながら欠損金を計上して法人税を免れるような企業は解体すべきところから始めなくてはならない。




コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 輝く人へのエール 第10回 | トップ | 「現場力」再考 第2回 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ブログ」カテゴリの最新記事