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中小企業白書を読む第3回

2009年08月07日 | Weblog
雇用動向

不況によって心配なのが雇用問題である。倒産やリストラで職を失う人が増えるほど社会不安を増大させるものはない。年金だ、少子化だと大きく問題視されているけれど、働き盛りの人が職を失うほど辛いものはないように思う。また、雇用状況の悪化に便乗して、低賃金で長時間労働などを強いる企業が増加する懸念もある。経営には常に大きなリスクが伴っており、経営側にはそれに相応しい見返りは必要なのだけれど、雇用者側の論理で被雇用者を犠牲にさせてはならない。一方、最低賃金の引き上げが議論されているけれど、仕事の中身(生産性)との整合性がなければ、運用現場では新たな問題を生む恐れがある。

 2009年白書は、前半の第3章に「中小企業の雇用動向と人材の確保・育成」として2008年度の状況が述べられている。2008年10月時点で経済状況の変動に対する対応策は、人件費以外の経費削減が69.5%と優先されていることは健全である。続いて商品、サービスへの価格転嫁28.5%で、賃金調整や雇用調整は18.8%と3番目の対策になっている。そして、その賃金調整や雇用調整の中身は、ボーナスの切り下げなど賃金調整が57.0%、残業規制38.5%、中途採用の削減・見直し20.1%、派遣・パート・アルバイト・契約社員等の再契約停止17.8%、業務日数の短縮15.8%と続くが、希望退職者の募集や解雇というのも各3%強見られる。

 2008年10月は、今回の大不況の初期にあり、中小企業における雇用の過不足感でも、不足感と過剰感が入れ替わる形で交差した時期にあたる。今不況下の雇用動向をまだ十分反映していない恐れはある。2009年1-3月期いずれの業種においても雇用の過剰感が不足感を上回り、特に製造業や卸売業において、その差が非常に著しい。企業内失業者が数百万人といわれる所以である。

 白書データから外れるけれど、2009年6月末で失業率は5.4%、有効求人倍率は0.43倍とある。この第Ⅱ四半期(7-9月期)に入り、政府のエコ補助金制度の効果もあって乗用車生産などが持ち直しつつあり、景気は回復基調と思われるけれど、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ごとく、なお失業率は上昇し、求人倍率は低下していると聞く。雇用状況が悪いと、人事制度が必要以上に賃金の切り下げ方向で見直しされる恐れがある。しかしそれは、一層の内需拡大を促さなければならないと言われている時に、全く逆行する話しともなる。

 派遣切りなどでもそうなのだけれど、政府の施策に十分な配慮が重要だけれど、法制度の現実社会での運用にあたっては、国民一人ひとりが正しく対応すべきであり、特に大企業は影響力が大きく社会的責任は重い。経営陣は特に人事制度や雇用問題にあって、国家レベルの見地からの運用を心がけて欲しいものである。
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