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統計(学)のすすめ6

2010年06月16日 | Weblog
続、バラつくということ

 新規事業として、電機・電子部品等の開発を進めていた会社で、ある製品の委託生産先工場の生産・品質管理を担当していた時期がある。ある程度商品化の目処はあったものの、製品の歩留まりも悪く、研究部分も多く残されていたため、職場メンバーの主力は優秀な電気工学の技術者たちであった。私など、僅かな品質管理技術を拠り所に、委託先から送られてくるロットサンプルの検査の監督の傍ら、得られた生産工程データの解析を行っていた。

 ある時親しい技術者の一人が、ある工程の歩留まりの悪さを指して、なぜ委託先工場の現場は、いい時の状態が維持できないのかと嘆いていた。見れば、ある特性値が合格ラインを跨いで上下している。合格ラインの上に来たものだけが次の工程に進めるわけで、歩留まりが悪いのも当然である。とは言って7割程度は合格しているわけだから、その状態をなぜ100%近くに維持出来ないかというのが、技術者の不満であった。委託先工場の管理の稚拙さを歎き、信用できないところからくる思い込みもあった。

 私は、製品に関する専門的知識はなかったから、技術者に聞いた。このバラついている特性の値を上昇させる最も大きな変動要因は何ですか。この工程の条件を特性の値が上昇するよう少し変更しましょう。このような場合二律背反。こちらが良くなれば、他方が悪くなることが多いものだが、このケースそうはならなかった。歩留まりは劇的に向上した。ある程度のバラつきを自然のものとして容認し、全体をいい方向に移動させる変動要因に手をつけたことが功を奏したわけだ。

 ただ、歩留まり向上には良かった条件が、見えにくいところで製品の品質に悪影響があるかも知れず、時間をかけて検証していく注意は必要である。より良いものを作りたい研究技術者と、効率化に力点をおく管理技術者の凌ぎ合いもあるかもしれず、一般的に現実問題はそんなに単純ではない。

 ここで言いたかったことは、ものごとはバラつくものであること。勿論容認できないバラつきを是正するのが品質管理であるけれど、良いものを作るために知識と腕力だけで向かうのでなく、チョットした技を使って欲しいということなのだ。しっかりと統計をとる。データを取っているとそこが見えてくるような気がする。
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