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中小企業白書を読む第4回

2009年08月10日 | Weblog
白書課題の推移

 毎年の中小企業白書には、表紙に課題というか副題が付いていて、2009年のそれは「~イノベーションと人材で活路を開く~」である。21世紀に入ってのこの9年間の白書課題を挙げると、

2001年 目覚めよ!自立した企業へ
2002年 「まちの起業家」の時代へ
      ~誕生、成長発展と国民経済の活性化~
2003年 -再生と「企業家社会」への道-
2004年 多様性が織りなす中小企業の無限の可能性
2005年 ~日本社会の構造変化と中小企業者の活力~
2006年 「時代の節目」に立つ中小企業
       ~海外経済との関係深化・国内における人口減少~
2007年 地域の強みを活かし変化に挑戦する中小企業
2008年 ~生産性向上と地域活性化への挑戦~

であり、これだけを眺めても何となく国の中小企業に寄せる期待の変遷が見えるような気がする。

 すなわち、非常に大まかに捉えれば2001、2年頃は、気がつけば20世紀の後半、法人にあっても廃業が起業を上回っていた*6)。政府は中小企業IT化促進や海外進出、経営革新を支援すると同時に、バブル崩壊後の低成長時代の企業数減少に危機感を持った。金融セフティネット、創業支援、技術開発の促進とものづくり基盤の強化が唱えられたとのこの時期だ。しかし、2001年白書付属統計資料によれば、昭和61年(1986年)の企業数535万社は、平成11年(1999年)485万社になっている。2009年版白書では2006年421万社まで減少し、廃業に歯止めはかかっていないことが分かる。

 2003年の白書に再生支援が登場し、2004年白書では「多様性のシーズとなる中小企業」、「グローバリゼーションと中小企業」などの言葉が登場しているが、この年日本の経済成長率は2%を超え、主要行の不良債権残高も9月には4%台まで減少するなど、長かった低迷期から明るさが見え始めた年であった。この年の白書に登場した「多様性」は、2005年の「新連携」そして2008年の「農商工連携」へ発展してゆく。

 2005年白書は、日本社会の構造変化を捉えている。すなわち人口減少時代そして高齢化による労働市場の変化が、中小企業にもたらす影響を考えずにはおけない。マーケットを見据えた販路開発や新商品開発の重要性から、経営革新や事業連携が本格化した年ではなかったか。またこの年の白書に「地域再生」という言葉も見られるようになり、2006年白書の「まちのにぎわい創出、新たな地域コミュニティーの構築と中小企業」につながり、2007,8年では「地域」が白書課題のキーワードになった。

 2006年白書は、中国はじめ台頭する東アジア経済との関係深化から、中小企業の国際化の課題。それゆえの基盤技術の重要性、産業集積の役割の変化や下請け取引のメッシュ化などが取り上げられている。一方2007年問題に絡めて、事業承継と技能承継の問題。少子化対策観点からの仕事と育児の両立対策。またここに来て、フリーターの増加など若年者雇用の不安定化についても述べている。

 
 *6)全企業数ベースでは1980年代後半に廃業率は開業率を上回っている。
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