MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

足首の痛み、家を襲う

2011-02-24 00:09:42 | 健康・病気

2月のメディカル・ミステリーでございます。
 
2月21日付 Washington Post 電子版

Medical Mysteries: A Teen's Swollen Ankle メディカル・ミステリー:少女の腫れた足首

Jra

Michelle Picard さんは当初、娘 Abby の足首が痛いという訴えを軽く考えていた

By Sandra G. Boodman

 2009 年の感謝祭からほどないころ、14才の Abby Picard は右の足首の痛みを訴え始めた。両親はそれを軽く考えており、その訴えは、彼女のおしゃれな細い靴底のスニーカーやひどく重いバックパックを愛用しているためだろうと考えていた。「私たちは全く気にしていませんでした」と、Arlington 郡の幼児・小学教育の指導者である母親の Michelle Picard さんは思い起こす。
 12月中旬、その足首が腫れ、痛みが増悪したたため、Abby は、家族が利用していた Northern Virginia にある大規模なプライマリケア医療事業所と提携している家庭医の元を受診した。レントゲン撮影によって、骨折だけでなく、さらには骨腫瘍の一つである骨肉腫など性質の悪い原因も除外された。一方、血液検査で疑わしい原因が見つかった。
 「医師から電話があって、連鎖球菌感染症が彼女の足首に及んでいるため、きわめて深刻に受け止める必要があるし、場合によっては彼女がリウマチ熱を発症する可能性があると告げたのです」と、Michelle さんは思い出す。
 その医師の口調に驚いた Michelle さんは、連鎖球菌がどのようにして足首に達したのか不思議に思った。Abby は彼の処方した抗生物質とステロイドホルモンを内服したが、良くなるどころかさらに調子は悪化した。
 それから2ヶ月も経たないうちに、この高校の新入生は自宅の階段を上がれなくなり、父親に上げ下おろしをしてもらわなければならなくなった。またそのころまでには不眠症に陥っており、数週間学校を休むことになる。そして彼女の原因不明の疾患は家族の日常生活の中心を占めるようになっていた。その後受診した数人の医師たちによって原因が解明されることはなく、ある小児科の専門医によってようやく病因が解明されるまで3ヶ月を要することになる。
 「親として、非常に情緒不安定になっていました」と、Michelle さんは思い出す。「彼女は眠らなかったし学校にも行きませんでした。自分の子供が苦しんでいるのを目の当たりにし、まさに苦痛の連続でした」

Suspected Lyme disease 疑われたライム病

 2009年12月の末までに、Abby の足首はひどく腫れ上がり、痛みは右の膝、臀部、さらには肩にまで広がっていた。そのクリニックの2番目の医師は Abby に消炎鎮痛薬 naproxen(ナプロキセン)を内服するよう勧めた。しかしそれが無効であるとわかると、彼は彼女に整形外科医を受診するように言った。
 母親によると、2010年1月中旬、彼女が受診した整形外科医は“彼女の足首をひと目見て”この疾患は骨に関係するものではないと判断したという。彼は関節疾患が専門であるリウマチ専門医に彼女を紹介した。
 彼女を3回診察したそのリウマチ専門医は Picards 夫妻に対して、子供やティーンエイジャーを治療した経験はほとんどないと話していた。彼は解析のために彼女の足関節から液を吸引し、ますます増えてゆく彼女の症状すべてに耳を傾けた:倦怠感、気分の変動、そしてひどく悪化している湿疹などである。この湿疹は通常は薬物でコントロールされていた。
 「私たちは本当に心配していました。彼女の痛みがひどくなっていたからです」と母親は言う。
 1月下旬、このリウマチ専門医が電話をかけてきて、採取した関節液が解析に十分な量でなかったと言い、穿刺を再度行う必要があると告げた。適切でない血液検査も行われていたが、その一つから Lyme disease(ライム病)の可能性が示唆されるようだと、彼に告げられたことを Michelle さんは思い出す。しかし、ライム病の確定診断、ウェスタンブロット法では2回とも陰性であり、Abby にはダニに咬まれた覚えはなかった。その医師は1、2週間のうちに関節液を再度採取するために、消炎鎮痛薬を飲むのをやめるよう Abby に希望した。
 「ライム病であると彼は確信していたようでした」と、Michelle さんは思い起こすが、彼は確証のないまま治療を始めたくないと思っていた。その医師は可能性として関節炎の話もほのめかしてもいたが、やはりライム病を中心に考えていたと、彼女は言う。
 しかし1月の終わりに Abby の痛みはさらに増悪したため元の家庭医の診療所に戻ったが、かかりつけの医師の手が空いていなかったため3人目の医師の診察を受けることになった。
 「彼女がてっきりライム病であると私たちは思っていましたが、誰も彼女を治療してくれていないことでひどく気が昂ぶっていました」と Michelle さんは振り返る。両親の要請により、その家庭医は想定上のライム病を治療するため抗生物質を21日コースで処方することに同意した。
 その抗生物質で Abby はひどい吐き気を催したがその痛みや腫れを抑えるのに何ら役に立たなかった。「来週には学校に戻れると期待し続けていましたが具合は悪くなってゆくばかりでした」と彼女は思い起こす。倦怠感がある一方、不眠が問題となっていた。さらに足首の痛みがひどいため彼女は何日もベッドで過ごしていた。
 ますます心配に思った Michelle Picardさんはナース・プラクティショナー(上級看護師)をしている友人に電話をかけた。彼女の助言は明確で、小児リウマチ専門医を受診しなさいというものだった。Abby は Bita Arabshahi 氏に紹介された。彼女はワシントン地区で開業している数少ない小児リウマチ専門医の1人である。
 Inova Fairfax Hospital と提携している Arabshahi 氏は2月中旬に Abby を診察した。初診時、Abby には enthesitis-associated juvenile rheumatoid arthritis(腱付着部炎関連若年性関節リウマチ)の疑いがあることを Picard 夫妻に告げた。この疾患は骨に付着した腱の炎症を生ずるものであり、確定診断にはさらなる検査が必要となる。
 「私はこう言いました。『関節リウマチ?どうしてそんなことが?』」と、Michelle Picard さんは振り返った。「彼女はまだ14才だったのです」

A missed clue 見逃されていた手がかかり

 関節リウマチは自己免疫疾患であり、免疫系が自身の組織を攻撃する。若年性関節リウマチ(JRA)は複数の関節にこわばりや炎症を生ずる疾患であり、16才以下の若年者に発生する。少女が少年の2倍の頻度で罹患する。永続的で慢性の成人の関節リウマチと異なり、それから脱却できる子供もいる。
 New York にある NYU Langone Medical Center のウェブサイトによると、この疾患はいくつかの原因を持っていると考えられている。それには未知の環境因子、あるいは自己免疫疾患の家族歴や HLA B-27 抗原陽性となる血液検査に反映されるような遺伝的感受性が含まれる。
 JRA に特異的な検査は存在しないが、際だった症状としては、特に朝に認められる少なくとも6週間持続する関節の炎症、そしてこわばりである。Abby が他の関節に感じた痛みは倦怠感と同様、典型的なものである。彼女の不眠、増悪する湿疹は恐らくストレスに関係するものだろうと、Arabshahi 氏は言う。
 JRA の患者が正しい診断を受けるまでに多くの医師を受診しているのはよく見られることであると、Arabshahi 氏は言う。不必要な手術まで行われてしまう患者もいる。Abby のケースでは Arabshahi 氏はMRI検査、HLA B-27 抗原検査陽性、および Abby の家族歴に基づいてこの診断を下した。彼女の何人かの親族が別の自己免疫疾患を持っていたのである。
 「6週間続く関節の腫脹があれ時には必ず医師はJRAを考慮すべきです。特に外傷歴がない場合はなおさらです」と、Arabshahi 氏は言い、これまでにもライム病と誤診された若者を治療した経験があると付け足した。「科学的根拠に基づいた医療(evidence-based medicine)を実践していない医師がいるのだと思います」と彼女は言う。
 ウェスタンブロット検査が陰性であることはその人がライム病ではないという決定的根拠であると疾病対策センターや他の専門家らは考えている。
 Abby にとって、JRAであったことを知ったことは、たとえその疾患が重篤であるとしても安心につながった。「少なくとも今はそれが何であるのかわかっています」と、彼女は言う。
 適切な薬物を取捨選択するのに数週間を要した。Abby があまりに長く学校を休んでいたので、彼女は自宅で家庭教師から教えを受け、6月の最終試験を受けるため最後の2週間復学した。
 「今調子は最高です」と、最近彼女は言う。依然この疾患により炎症が起こりやすい状態ではあるが、彼女のケースは軽症に分類されると、Arabshahi 氏は言う。これまでのところ、より重症例の治療に用いられる注射薬治療は回避できている。
 今にして思うと、Abby のかかりつけ医に診てもらうことにこだわっていたならよかったと Michelle Picard さんは 言う。「彼女の親として、私たちはプライマリ・ケア医に調整してもらうことなく勝手に話をまとめ決定しようとしていました」と彼女は言う。
 「そして、より早く小児の専門医の元に行かなかったことを後悔しています。自分の子供が痛がっていてそのことで自分たちの生活が影響されるとしたらそれはつらいことです。私たちは専門家たちに翻弄されました」と、彼女は付け加えた。

JRA とは日本中央競馬会でもではなく日本赤軍でもなく
若年性関節リウマチのことである。
若年性関節リウマチは16才以下の小児に発生する
多発性の関節炎であるが、
成人の慢性関節リウマチとは病態が異なるため最近では
若年性特発性関節炎(JIA)と呼ばれることも多い。
全身型では関節以外の
全身性病変(皮膚・心膜・胸膜・肝・リンパ節)を伴う。
また少関節型では眼球内の虹彩炎を併発することがあり
注意が必要である。
10万人あたり約20人の頻度でまれな疾患ではあるが、
全国には約1万人の患者がいると推定されている。
診断には MRI 検査の他、リウマトイド因子や抗核抗体、
細胞表面マーカーであるHLA B-27 を検出する。
HLA B-27 は本例のような健付着部関連関節炎の患者で
高率に陽性となる。
本疾患に対する治療には根治的なものはない。
成長とともに症状の完全消失を見る例も多いが、
症状の強い例では、軟骨や骨の破壊が進んだり、
内臓病変が進行することもあり、
子供たちが普通の生活が送れるよう薬物治療を行う。
非ステロイド系消炎鎮痛薬やステロイドの他、
メソトレキセート、免疫抑制薬、生物学的製剤などが
用いられる。
手術療法は関節破壊が進んだり、
拘縮の強い例に対して行われる。
本疾患の予後は病型によって異なり、
完全寛解が得られる良好な症例から、
深刻な関節症状が続く症例まで様々である。

この難しい病気…
何はともあれ一刻も早く正しい診断を下し、
患児の苦痛を少しでも軽減してあげること。
それによって親の苦悩が緩和され
子供に正しく向き合うことができるようになれば
親として真の支えになってやれるに違いない。

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