叢雲の裏はなやげる今日の月 加藤信子
今年の十五夜は確かこんな月だった。雲ひとつない十五夜も確かに美しいが、雲のかかった十五夜も決して引けを取らない。さて、「はなやげる」ものが、「叢雲の裏」という確かな写生である。まるで金箔を施した襖絵のような映像が浮かび上がる。「今日の月」と置かれ、他ではない特定された名月の感が表出されて、余韻のある一句となっている。「滝」11月号〈滝集〉より抄出。(Midori)
今年の十五夜は確かこんな月だった。雲ひとつない十五夜も確かに美しいが、雲のかかった十五夜も決して引けを取らない。さて、「はなやげる」ものが、「叢雲の裏」という確かな写生である。まるで金箔を施した襖絵のような映像が浮かび上がる。「今日の月」と置かれ、他ではない特定された名月の感が表出されて、余韻のある一句となっている。「滝」11月号〈滝集〉より抄出。(Midori)