十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

熟柿

2015-11-15 | Weblog
混沌のつつまれてゐる熟柿かな     石母田星人

熟柿の皮は、まだ張りがあってパリッとしているのに、触るとふわふわと柔らかく、果肉が熟しているのがよく分かる。少し力を入れるとすぐに破れてしまいそうだ。一枚の皮に包まれた果肉は、まさに「混沌」そのものである。しかし、「熟柿」の定義づけとして、「混沌のつつまれてゐる」と詠んだところは、一歩上級の技だろうか。「滝」11月号〈瀬音集〉より抄出。(Midori)

秋日和

2015-11-15 | Weblog
縞馬に水のゆらめく秋日和     菅原鬨也

縞馬の白黒の縞模様は、サバンナに生きるために描かれた天与のものだと思われるが、あの美しい曲線はまさに芸術的でもある。さて、掲句。「縞馬」という文字にしても流麗な印象を覚えるが、「水のゆらめく」によって、縞馬の「縞」と水影が互いの動きを増幅させて、印象鮮明である。「秋日和」が、たっぷりとした明るい光が感じられて効果的であり、サバンナの長閑な一風景を想像させる。「縞馬」という動物でなければ決して得られない詩情である。「滝」11月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)