JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

新と未には弱い

2007年06月08日 | d-f

世の中、年金やらコムスンやら、聞いていると腹立たしいようなニュースばかり、ムシャクシャする時には、ジャズを聴くのが一番ということで、今日は珍しくジャズのお話でもしようかと・・・(いちおうジャズ・ブログでもあるもので、笑)

まぁ、腹立たしいからというのは、取って付けた理由でして、じつは先日、レコードでも正規CDでもないのですが、ある音源を入手したのです。
誰に録音していただいたかは別として、これが正真正銘のエリック・ドルフィー最期の音源とも言われる演奏であります。

死後、何年たっても、「新音源!」「未発表!」「新発見!」と、新たな演奏が世に出るのは常です。我が神(笑)コルトレーンにしても、どれほどのものが死後発見され販売されてきたことか、いやいや、息子のラビ・コルトレーンが、「母のクローゼットに仕舞っておいたテープは、私自身、未聴のものがまだあるから。」てなこと言ってますから、未だ発表されていない音源もおそらくは数多くあるはずです。
特にドルフィーに関しては、死後に偉大さを認知されたと言うこともあり、下手をすると死後に発売されたレコードの方が生前より多いんじゃないか、というくらいです。(なんだか、貧乏画家が死後に評価され、本人には何の恩恵もなかった、みたいな話で寂しいですけど)

御存じのとおり、1964年チャールス・ミンガスのジャズ・ワークショップに参加し、ヨーロッパに渡ったドルフィーは、4月29日の最終公演を終えても、そのままヨーロッパに残り各地で演奏活動を続けていました。二ヶ月後の6月29日、突如持病の糖尿病が悪化、ベルリンで息を引き取ったのであります。

ドルフィー最後の演奏として、まず頭に浮かぶのは「LAST DATE」ですよね。しかし、これは私がドルフィー・ファンになった頃には、すでに非常識になっていました。(笑)
ドイツのレーベルWEST WINDが6月11日のパリでの演奏をアルバムとして出したからです。
「おそらくは、これが最後の録音で間違いない!」

よくよく考えてみると、この録音は死の18日前のものですよね。1日とか、数時間前とかならまだしも、18日間もあれば何処かで誰かが録音していてもおかしくない・・・・

それにしても、どうしてドルフィーはアメリカに帰らず、ヨーロッパに居残ったのでしょう?この時、ドルフィーは永住すら考えていたといいます。
当時のアメリカでのジャズ・シーンを考えたとき、先に進みきれない、つまりは頭打ちな状況があったのだと思います。
「アメリカは自由の国」しかしながら「保守的国家」でもあるわけで(これは今でも変わらないところがありますが)、ドルフィー的音楽指向がアメリカでは受け入れられなかったという事実、そしてなにより、その後のヨーロッパでの自由なジャズの発展を考えれば、そこにこそドルフィーの求める何かがあるように感じたのかも知れません。
この時も、ヨーロッパであればこそ、ドルフィーの演奏は各地で高い評価を得、演奏活動も続けていけたというそのものが、彼をヨーロッパに止め置いた答えなのでしょう。

話がそれてしまいました。
それほどまでにドルフィーを受け入れていたヨーロッパのファンが、18日間もの間、録音もせずにいられたのでしょうか?こっそり録音していても不思議ではありません。

「バブさん、ドルフィーの最後の演奏を収めた海賊版があるの知ってます?」
と、知り合いに言われたのはいつ頃だったでしょう。
彼曰く、亡くなる一週間前の録音といわれるイタリアの海賊盤があると言うのです。
本当のドルフィン・ファンの間ではよく知られたことなのかもしれませんが、私は聴いたことも見たこともありませんし、知ってもいませんでした。

よくよく調べてみると、この海賊盤は「LAST DATE」や「NAIMA」からの引用もあったりして、かなりの眉唾物。しかしながら、3曲ほど未発表の曲が含まれ、録音日は定かでないものの「これが死亡一週間くらい前の録音であるようだ。」というものらしいのです。

「一週間前だろうが、三ヶ月前だろうが、未発表となれば聴いてみたい」そう思いますよね。
それで、この知り合いに頼んでおいたのが、何と今になって届いたのでありました。(忘れるくらい前に頼んだんですがね)

いちおうメンバーと曲名を紹介しておきます。(アルバム名はラストの曲「SERENE」を付けているようです。)


ERIC DOLPHY(as, bcl, fl) SONNY GREY(tp) JACK DIEVAL(p) JACQUES B.HESS(b) FRANCO MANZECCHI(ds) BILLY BROOKS(perc)
5.ODE TO CHRALIE PARKER
6.G.W.
7.SERENE

そこで感想です。
正直、新たな展開(生きていたらどうなったのだろう)を感じることは私には出来ませんでした。
悪く言えば、やっぱりドルフィーの最後の演奏は「LAST DATE」でいいかな、みたいな(笑)、あるいは、これを無理に聴くなら、今日紹介するWEST WINDのアルバムでじゅうぶんかな、みたいな。
私は、探してまでこの海賊盤を買い求めるつもりはありません。

いずれにしても、そこそこ長く活動されたミュージシャンの全録音を聴くというのは現実的ではありません。しかし、短命であったドルフィーであればこそ「全記録を耳にしてみたい」と思うのは、けして無謀なことでは無いとも思えるのです。
そういった意味で、この音源を聴かせてくれた知り合いには心より感謝をしています。

さて、今日の一枚は、WEST WINDから出た、6月11日のパリでのドルフィーです。
WEST WINDからは「LAST RECORDING」と「NAIMA」、それに今日のアルバムと三枚出ているかと思いますが、「LAST RECORDING」と「NAIMA」を「足していいとこ取りしちゃったぁ」的に1988年(24年後のアルバムってのも凄いでしょ)発売になったアルバムです。
内容は、上記感想に近いものがあります。確実に「LAST DATE」の方が上でしょう。(私がそう思うだけかも知れませんが)
ただ、それでもドルフィーはドルフィー。そこらのくだらないアルバムと一緒にされては困りますよ。

UNREALIZED TAPES / ERIC DOLPHY
1964年6月11日録音
ERIC DOLPHY(as, bcl) DONALD BYRD(tp) NATHAN DAVIS(ts) JACK DIEVAL(p) JACQUES B.HESS(b) FRANCO MANZECCHI(ds) JACY BAMBOU(conga)
1.SPRINGTIME
2.245
3.GW
4.SERENE

おまけ、
ちなみに、1964年4月12日オスロでのミンガス・ジャズ・ワークショップのコンサートは、映像も残っています。以前、LDを紹介済みですので、お知りになりたい方はこちらをどうぞ。

ところで、今日のアルバムのジャケ写真ですが、何を意味しているのでしょう?
御存じの方は、ぜひコメントを(笑)



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