大相撲の厳粛な緊張感が、1人の乱入者によって妨害された。幕内の豪栄道(ごうえいどう)-豪風(たけかぜ)の仕切中、大量のビラを持った女が土俵に上がろうとした。女性警備員が必死に制止するがそれも振りほどいた。近くにいた審判員の錦戸親方や土俵下で出番を待っていた高見盛関らが女を取り押さえ、ようやく事なきを得た。この後、女は警備室へ連れられ、警察に引き渡された。
しかし、この女は一体何がやりたかったのか。持っていたビラには歌手福山雅治さんが悪霊に取り付かれているとする内容が書かれていたらしい。だがそれをアピールするために何故国技館を選んだのか、そして何故あの取組の時だったのか、謎は深まるばかりだ。
現場で女を取り押さえた高見盛関は「心臓に悪い。みんなが注目する大一番でなんてことをするんだ!」と怒りをあらわにした。
相撲に限らず、スポーツは選手にとって戦いの場であり、仕事の場、つまり職場である。そこへ邪魔をするという行為は当然許されない。会社などの職場で言えば、自分の机の上を荒らされて必要な書類が紛失してしまうなどの支障が出るのと同じことだ。
ところが、今回の事件を「土俵に女性を上げてしまい、1400年の伝統が破られたのは事実」などと土俵の女人禁制の伝統が破られたとする報道が一部にあるのには驚いた。(*1)
勿論そんな解釈は誤りである。何故なら、今回の場合は単なる不法侵入に過ぎず、たまたま乱入者が女性であったというだけで、決して相撲協会が土俵に女性が上がることを許可していたわけではないからだ。不法侵入であれば、男性であっても今回と同様に制止されるのは当然だ。つまり、土俵の女人禁制とは何の関係もないことなのだ。
もし仮に、そんな不法行為により伝統を破壊出来るというのなら、痴漢が増えれば痴漢は犯罪という規則が脅かされ、やがて無罪になるのかということになってしまう。長年培われた伝統により形成された規則というものは大きな意味があるのであって、不法行為などで破れるわけがないのだ。
だが、今回の事件を機に土俵問題が再燃する可能性はないとは言えない。今回現場で女を取り押さえた錦戸親方は「特に女性だし、土俵に上げちゃいけないと思った」と発言している。この発言を逆手に取れば、男性ならいいのかという疑問が出る。
しかし、親方の心中を察すれば、今回の件が土俵問題に発展してしまうのを恐れての発言ではないかと思う。相撲協会にも男女共同参画局はじめフェミニズムの圧力が相当強烈なものであるという認識はあるだろう。連中がどこから付け入る隙を狙ってくるかわからない。そうしたフェミニズムの「したたかさ」を危惧するあまり、乱入者が女性であることを強く意識してしまった故の発言ではないだろうか。
また、土俵問題で話題になった太田房江大阪府知事が東京出張の際、実家に宿泊していたにもかかわらず、朝食、夕食代として1泊につき3300円を受け取っていたことが発覚した。(*2)偶然とはいえこのタイミングに、何かの因果だろうか。
更に、次期首相の最有力候補である福田康夫氏は男女共同参画担当大臣を務めたこともあり、女系天皇を容認するための「皇室典範に関する有識者懇談会」を設置した人でもある。今後も、政治の流れや報道のあり方には引き続き充分注意していく必要があるだろう。
(*1)女性が土俵乱入、高見盛ら取り押さえ
http://www.nikkansports.com/sports/sumo/p-sp-tp3-20070920-258653.html
(*2)大阪府知事、実家宿泊でも食事代支出
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070919-258396.html