まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

金にまつわる百年に一度の危機とはいうが・・・  2008 あの頃

2022-10-25 14:16:47 | Weblog

                 日本の少年




江戸の金貸しや両替屋が銀行だとしたら、駕籠かきはタクシー、旅籠はホテル、馬方は運送業、武士が役人、藩主が議員か知事、変らないのが坊さんと医者、数多の職種が分派して面白い横文字名称が増えたが、当時は金や地位名誉に志向する人間は限られていた。

竹下総理がリクルート事件で辞任したが、その際「武士(モノノフ)の心で・・」と心境を語ったが武士は金を不浄なものとして触れない気風があった。しかも江戸の口入屋の変化した人材紹介業リクルート社からの賂(まいない)つまり袖の下にまつわる辞任だが、お白州(裁判所)に呼び立てられたのは御家人頭である。



               
                  1989.6 北京


古来より米穀を生産する範囲を石(こく)高知行として土地を配分していたが、そうそう無限にあるモノでもなく、ときには茶碗や壷、香炉、または金銀に価値を設けて下賜していたが、各藩主への仮払い、前払い、あるいは参勤交代の支度金、幕府直轄事業の負担金など、今どきの割合補助に似て、゛生かさず殺さず゛といった風の支配方法は忠義立てを奨励し競わせ、時には藩運営に困窮して騒動(事件)などが多発している。もちろん賂に関する不祥事も歴史に多く記されている。

先ずもって資金だが、そこは武士の気風か、゛喰わぬど高楊枝゛と、面子のやせ我慢が過ぎたのか小商人からの借金をするものも出てきた。



              

               50年前の日本の家族


為政者や役人の呼称は異なっても人間のすることにはそうそう変化はないようだが、古今にわたって指摘されていることは金に触れるときの用心、つまり心がけだろう。

多く稼いで持ち続ける、それは経済人(小商人)のナリワイだが、丁稚や番頭など今どきはサラリーマンや、はたまたその女房までが算盤変じたパソコンでの儲けの算段に走る姿は、子供の教科点数まで将来の投資対象になる浅ましさがある。


昨今は百年に一度の危機と云われているが、危機ならず嬉々としている一群も見え隠れするなか、事の問題で多くの深層の変動が起こっているようにみえる。
それは「矜持」と「自尊」について、あるいは人格を云々するであろう人間の必須となる条件が薄れ、誰彼ともない群れの煩雑な混交として良なり善なり、あるいは敬することなりが埋没してしまっているようである。




                  
                  
               80年前の日本人家族




以前、旧知の侍従が逸話を語ってくれた。
東京の過ごしやすい冷夏に安堵する侍従の言葉に、
『東北は冷害で大変だろう』

「庭の雑草を刈り取りました」の報告に、
『雑草とて名もなくても其処に生存している、やたら刈り取らないように』

今どきは皮肉に聞こえるだろう、あるいは立場における嫉妬も入り混じるだろうが、また或る時期までの多くの日本人は普通に聴こえた。かつ、そのような意見や言葉に尊敬や畏敬の念を自然に抱いていた。

翻って金に纏わる危機とは云うが、金を働かせ利の子を増やし、勤勉な労働の上前をはねる鉄火場の乱高下に一喜一憂する博打経済の色目の胴元の苦渋は論外として、内では埒外から柵の中の様子を横目で伺う羊飼いのような官吏の有り様は,百年に一度ならず通年危機として、『冷夏・・・』『雑草刈り取り・・』の言辞を汚しているようだ。

山中の賊を除くは易し、心中の賊を祓うは難し

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1 コメント

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Unknown (愚庵)
2009-03-29 00:24:34
小学1年の我が息子が先日突然に「学校の先生は自然を破壊しているよ。」「どうゆうこと?」「あのね、今みんなでチューリップを育てているんだけれど、先生は雑草を全部とっちゃうんだ。それって自然破壊でしょ?だから僕の鉢だけは雑草もいっしょに育てることにしたんだ。雑草もかわいくてきれいな花を咲かせるし、だからきっと僕のはすてきになるよ!」と。
そんな我が子の芽だけは決して摘まないと、親として心に刻んだ一事でした。
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