中央は若かりし頃の邦彦氏(下中邸観桜会)
下中邸は国道二号線の池上を過ぎたあたりを右折した小高いところにあった。
閑静な住宅街のなか、石垣塀に囲まれた高台に広々とした芝生の庭が続き、玄関を覆い包むように桜の大木があり、和洋折衷の家屋がカネの手に作られている。
観桜会はライオンから生ビールのケータリングと邦彦さん好物の瓶覗きという壺酒が用意され、新筍の照り焼きや混ぜ飯、そして主人の鍋奉行でおでんが提供された。
参会者は各々庭で歓談しているが、主人は開け広げの縁側で楽しそうに眺めている。和服姿の麗人もいるが、さすがに飲み仲間の杯は早い。
ともあれ、あの出版界の怪物と謳われパル博士と義兄弟の契りを結んだ下中弥三郎が思索を廻らした庵である。
好物の銘酒カメノゾキを傍らに鍋奉行を任ずる亭主の箸捌きに具が踊る。
「弥三郎釜の桜の会も楽しい、行きましょう。嵐山光三郎さんも来ますよ」
「お父さんの趣味ですか」
「横浜の戸塚です。そこで陶芸を習っている人たちが大ぜい来ますよ」
C:Documents and SettingsNEC-PCuserMy Documents下中丹波篠山の有名人 下中弥三郎.htm
そこは想像した以上の桜だった。光三郎さんの挨拶から始まったゴザ敷き宴会も下中流の風流遊びなのだろう。
「弘前の桜もいいですよ」
「行きましょう。計画してください」
何か、今年は意地になって桜を追いかけているようだが、酒も桜も人を求めることの楽しさからだろうか、どうも馬が合うのだろう。
世間では、゛白足袋゛という呼び方がある。床の間の置物といわれる御仁もいるが、まさに弥三郎の子息邦彦氏はその風でもある。
それは、出版会の風雲児といわれた邦彦氏の一方の姿でもあつた。
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- jejakseoc76@gmail.com (Sewa Mobil)
- 2023-11-15 19:58:11
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