友人が拙宅に同伴した渡辺さん、当時は中国レスリングのコーチ招請があった頃だ。
189連勝、オリンピック金メダル。それでもずい分と昔のことだった。
今どきのスポーツ選手と違って、当時は目の前に賞金やCM収入も無かった。
純朴さと忍耐力、世間慣れもなく、ゆえに騙されることもあった。
だが、流行りごとのように、騒いでいた人たちは、飽きると散る。
※故事「小人、利に集い、利薄ければ散ず」
幾度か連絡を頂いた。
そんな頃の手紙だった。
渡辺長武さんへ
69連勝だった横綱双葉山は敗れたとき、外遊中だった安岡正篤氏に打電している。
「我、いまだ木鶏にいたらず」
それは、騒がず、うろたえず、無闇に競わず、といった境地になかなかなれません、と報告しています。
勝った負けた、あるいは言い負かした、叱った、と言ってもすべて自分の至らなさだと双葉山は悟ったのです。
木で造った鶏のように落ち着いて、それでいて人が尊敬し、時には畏れられる人物にならなければならない。
おろかな人を責めるより、また、そうならないような人格と、落ち着きを養うことの修めが足りなかったと、その至らなさを「我 いまだ木鶏にた至らず」と打電しました。
名横綱として相撲界に名を残した双葉山の精神修養は、もう一歩、高いところにおいていました。
頓 首
イメージはosny meroさん・関連画像サイトより転載
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