まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

ヒラリー・クリントン   ( 再掲載 ) 来日時に期待するメッセージ

2009-02-15 13:29:00 | Weblog
       米国務長官 ヒラリー・クリントン (CNN)





(昨年掲載したものです)

米国大統領選挙も共和党はマケイン、民主党はオバマと両党の候補者が出揃い、いずれかが次期米国大統領になるはずだか、世界中の傍観者からすれば大鷲の飛び立つ方向がどうもすっきり見えてこない、見方によっては権力の空間、あるいは弛緩状態にも映るショートブレイク状態でもある。

それも日本の官僚制度と違って政権が代われば多くの政府職員がレイオフされるため、模様眺めの生活保全の計らいで息を潜めているからだろう。
ことに民主党のヒラリーとオバマの全米を巡回するロングレースは選挙舞台の名役者のように国民に刷り込まれ、そのテンションの高い演説と涙の映像は世界中の耳目を集め、ハリウッド映画さながらの人気を集めていた。

前回のフロリダの投票騒動はアメリカ人の得意な訴訟行動とともに、これぞ「民主主義、自由の米国の姿だ」とばかりに騒乱を繰り広げた。

米国産高利貸と不動産屋が繰り広げ、世界中の他人の褌で浮き利を稼ぐ連中が狂乱したサブプライムローン問題もなに吹く風のありさま、それが彼の国の政治なのだろう。それに比べれば似てはいるが、無感覚か、幾ばくの慎みか、判然としない我国の状況である。

よく「政治と経済」を分別した言い方をするが、どうも庶民からすれば際限のない欲望のコントロールなり規制を政治が行ってくれると、期待するものではないらしいと近頃分ってきた。
バブル後の住専問題の国会証人喚問で某社長は「民間同士の経済活動については政治が関与すべきではないかと・・」応えているが、警察も「民事には・・」と言って、「怪我でもしたら・・」「事件でも起きたら・・・」というのが通例である。

法の傍をウロウロする人間は・・・といい聞かされたものにとって、「法律では・・」と有無も言わせぬ窮屈さは、「難しいことはお任せ・・」と考えていた国民にとってハトマメ状態の忙しい時節だ。








その米国の経済だが、資本家の大きな分別として産業資本家、金融資本家、、商業資本家などあるが、それぞれが大が小を呑むことを効率化、独占化として絶えざる競争を生んだ歴史がある。

代表的なのは産業資本家である鉄鋼王のカーネギーの株を買収した金融資本家のJ・Pモルガンである。モルガンそのものは自身の富を使うのではなく、投資家の代理人として資金を集め買収するのだが、当時の金で4億3000万ドル、しかも白紙小切手という横柄で乱暴なありさまだったという。

使い途だが、カーネギーは「金持ちのまま、死ぬのは恥ずかしい」と、財産の9割を寄付、あるいは財団を創設して寄託している。その結果3000箇所以上の図書館を作り、有名なニューヨークのカーネギーホールも彼が作ったものだ。






               JPモルガン    (ウィキペディア)

それを買ったJ・Pモルガンもすざましい勢いで行動している。
彼が若い頃、まだ米国では資本、つまり金の流通が乏しく、ヨーロッパの資産家の投資を仰いでいた。彼はヨーロッパ資本家の代理人、今流に言えばファンドのマネージャーとして資本家の信頼を得ていた。父親はヨーロッパで資本家を募り、彼は事業を探すという、目先の利と情報の収集伝達の組み合わせは、中世ヨーロッパにおいて王族、貴族の財を預かり、高じて金利をとって金貸しを始め、ヨーロッパに張り巡らした情報を駆使して金を集合させ、ついには敵味方なく戦争当事者に貸し付け、ついには国家資産まで担保にするまでになった姿に似ている。

そもそも宗教的には我国同様、扱う人々を不浄の生業としていたために興った金融だが、J・Pモルガンは金融は政府より力の有る、そして世界を支配するものとの認識で行動している。事実1890年代は米国の権力者として市場の60%あった鉄道株の30%を所有し、かつカーネギーも買収した。

国家財政が苦境に陥ったとき大統領の要求に応じて、2,3日でヨーロッパから大量の資金を集めているが、この金利でも莫大な利をあげている。
彼が支配した企業体は、GE,、ATT、USスチール、など、大が小をのみ込む買収で莫大な利とともに米国の基幹産業を独占し、かつ国家としても経済の基礎的条件をつくっている。

ルーズベルト大統領は恐慌(資本家の作為的?)の折、多くの企業は倒産危機にありモルガンに助けを求めた。モルガンは銀行家を一部屋に集め鍵をかけて、のまなければ部屋から出さない、といった乱暴な恫喝で2500万ドルを集めている。銀行家でもない彼の不思議な力だった。


しかし、あまりにも強大になったモルガンの金融独裁により民主主義の危機を感じとった政府は連邦準備銀行をつくったが、これも彼の影響のある民間銀行の集まりだった。大株主はロスチャイルド、ロックフェラーである。
しかも、いまでもドル紙幣の発行は政府でなく、その民間金融機関の集合体である。

だが、あくまで資本家の代理人であったモルガンの遺産は少なかった。
それは人の金を集め投資して利を配分するという金融ファクサーに徹するという生業の哲学があったのだろう。ただ、彼の行為でわかったことは、たとえ人の財でも預かって大量に動かすことは、国家権力を従属させ、世界をも牛耳れるということだった。



             




その米国が資本主義に「消費」を冠して「消費資本主義」、それを自由と民主を添えて世界に広めている。事実、圧倒的な武力を背景として消費市場の開拓をすすめ、功利的金融を土台にプロパガンダを駆使して消費を煽り、その整理を安全と便利性を加えて「管理化」を推し進めている。国家もその範疇にある。つまり現在は「消費資本管理主義」なのである。

この集中は恣意的統制を生み、各国の固有の情緒は融解し、大衆は喚起された欲望のコントロールのすべを失い、思索、観照から生まれる問題意識さえ亡失させている。

人々の連帯を失った政府は判断力を失い、金を偶像視し始めた大衆によって無国籍かつ無統制な状況に置かれ、終には商業、産業が金融資本に支配された米国の歴史に見るように金融独裁という銃弾もいらない支配に誘引されている。

現在世界には資本主義経済圏の指導者が集う会議がある。対日年次要望書のように保険、郵便、医療などの開放欲求が二国間で行われる圧力交渉、それとは別に、環境、食料などを討議するサミット(先進国首脳会議)やG8(金融当局者会議)、があるが、その中でもスイスで行なわれるダボス会議が脚光を浴びている。なにしろ世界の経済人、政治家が縁や情報を求めて集まり、言葉が通じて口の堅い?選別された人たちで秘密会議も行われてるという。つまり謀、企てのようなものだ。

そこで表題にあるヒラリークリントン(当時大統領夫人)がこのような演説をしたことがある。資本主義の牙城、J・Pモルガン、カーネギー、ロックフェラーの国からのメッセージだった。



              




『いま、推し進めている自由の消費資本主義は多くの問題を含んでいることが分っ

てきた。それは、そのことを推し進めることによって多くの弊害のある影響を生ん

でいる。とくにその影響は女性と子供に及ぼされている。私たちはこの消費資本主

義というシステムの弊害を認め、慎重に考えるべき機会が来たのではないだろう

か・・』(筆者の記憶している趣旨)


ギブアップしない彼女の強さの背景にさまざまな評があった。それは我国の井戸端、三面、の類のようだが、なかには選挙資金、身の振り方の思惑など、我国の政治家に向ける商業マスコミの連れション記事に似たものがある。

ヒラリー・クリントンが「消費資本主義」に自由を加味して繰り広げることによって起こりうる危機の未来を予言したかのような演説だが、現代社会の患いの根源を明確に表わす考察と先見は、当時、夫のスキャンダルに面白がっていた世界中に向かって、「問題から目をそらさなれないで・! あなたの事よ・!」と言われたようで、目からウロコの状態だった。

現職アメリカ大統領夫人の問題意識も驚きだったが、何よりも彼女に大統領になってもらって宣誓式でこの演説をしてもらいたかった。それは流行りごとと虚偽に観る愚かな欲望に翻弄される女性、子供ばかりでなく、愚直にも従順になった男子諸君に女子の良質な強さを見せてくれるだろうという期待だった。

それは、嗜好の宴の後に訪れる悲哀と絶望に晒される危惧を予見した、ヒラリーのいう「弊害」に染まった同性に向けた優しさのメッセージにも聞こえる。

その意は、欲望のコントロールと贅沢への戒め「倹約」であり、次代への期待だったと観る。
コメント (2)
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