まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

裕福な家のメイドより、貧乏でも自由が欲しい. 15.8/13 再

2023-11-17 03:02:21 | Weblog


ある在日の若き韓国女性の呟きごとだ。

姉は結婚もせず事業に邁進しているが、独りよがりな強引さに妹は鬱陶しくなっている。
姉も淋しがりやだが性格なのか他人を信じない。また金で人はついてくると考えている。
別段、何に追いかけられているわけでもないが、つねに頭から事業が離れない。
姉妹は普段は人情もあり仲は良いが、喧嘩するとパトカーが来る激しさがある。

日本に来てスッキリしない自分の国の問題と情緒に染みついている感情は、ときに嫌になる。他人に烈しくみえるのは、我が解らない、いた堪らないなのかもしれない。
今まで周りは「我」として生活してきた。「自分」という考え方が習慣化されていないようだ。本当の自分を知って広い心で周りの人をみるべきだろう

だが、そうしなければ生きられなかった地域の諦観(あきらめ)なのでしょう。
儒教でもかたくなな朱子学の囲いなのか、文句を言っても姉から離れられない。もちろん経済的なこともあるが、姉も妹が自立して離れていくことに戸惑いがある。

こちらに来て感じ、おきた心だが、本当は日本に生まれた人が羨ましいのかもしれない。
でも、このように考えることができる不自由な生活中での自由な考えは、いままで心を支配していた金銭的問題や生活感覚の戸惑いを超えて、貧乏は不自由と考えていたことから解き放たれたような気分がある。

姉とは性格の違いもあるが、成功価値も安心感にはそれほど違いはない。
ただ、追われることと、失うことの恐れが余りにも現実を支配しているからだろう。
多くの日本の人は戸惑っても心の中で解決する。問題があってもどこかで自分のこととして次に期待をしている。

昔から比べて・・というが、まだ蛍が「こっちの水は甘いよ・・」といわれる環境がある。
自分を失くした憧れや過大な希望を抱かなければ、貧乏でも自由は楽しい










以上は真剣に吐露した自由の語りだが、それは知ってか知らずか日本人がよく使う「自分」という呼称を自然に駆使する日本人の気風を語ったことへの応えだった。
「自」とは、オノズから(自然)と、ミズからの意があり、否応なく老化する、心が怠惰になることを、化粧したり、運動したり、読書や宗教で自浄する相対作用がある。

しかも、「自」は己の中心に位置する「鼻」であり(自の下部は音記号)、己のなかで互いにせめぎ合っていることでもある。自制が勝れば怠惰にはならない。大食したり鯨飲しても、運動したり、精神を豊かにすれば病気にならない。放っておけば自然に劣化・老化することを、制し、抑える、つまり自己免疫性を高めることの促しを教えてくれる。
つまり、本性的欲望を否定することなく、程よく上手に使う融通性も必要なのだ。

そして自分の「分」は、不特定多数の混在する中での一人、つまり全体の一部分という認識が必要だ。家族でも国家でも「我」意識で云いたいことを勝手な合理性を唱えて主張しても調和はとれない。民主主義だからこそ「自分」意識が必要なのだ。
なにも個人の尊重は他人がすることでなく、いわんや己の存在理由から知らないものが勝手に主人になっては主義を維持すべき全体は成り立たない。

二人いれば二分の一、世界七十億ならその一部分であり、独りとして同じ人はいない。そしてその特徴があるのに、人のモノマネをしたり、流行に流される。しかも今どきの成功価値である地位、財力、学校歴などの数値比較に翻弄されると自分を見失い「我」の意識で全体が分裂して、依って立つ位置さえ判らなくなる世代の繰り返しが止まらない

自を求め知るには、修行なり探求して知ることと、全体の中で己の能力や位置を知る方法があるが、「我」だと往々にして比較優越や劣性を覚えるだけで、しかも目に見える範囲の情報知や、単なる知った覚えた類の学識でしか世界を読み取れなくなる。
「分」には、人間だけでなく自然界の神羅万象に自身を照らす世界もある。あるいはイメージ(感性)を研ぎ澄ます衝撃や感動も含まれている。







それを包み込んで他人なり諸々な事象に応ずれば自然と己に合った(分)が自得できる。
幕末の賢人勝海舟は貧乏な頃に家財や家屋の一部を燃やして暖をとった。その感慨を「赤貧、また愉しからず」と遺している。貧乏もここまで来ると愉快になるということだ。
今どきのパチンコ貧乏、着道楽、ブランド貧乏とは趣が違う愉しみ方だ。
また、そんな共感できる歴史の先達が存在したことも、うれしいことだ。

そんな酒呑み話に応えた若き美麗な韓国女性の理性に、賛意をもって盃を重ねたことは言うまでもない。



イメージは関係サイトより転載

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