私は、詩はあまり読まない(最近は小説もほとんど読まない)が、沖縄産の詩人、山之口獏は大好きである。若い頃、女にもてない不幸な境遇にあり、結婚したいという詩をたくさん書いた詩人。その後、何とか結婚できたのではあるが、若い頃からの貧乏は結婚後もずっと続き、次には、お金が欲しいという詩をたくさん書いた詩人である。
『鮪に鰯』という題の詩がある。
鮪の刺身を食いたくなったと
人間みたいなことを女房が言った
と始まる。これだけでも面白そうでしょう。続きを読みたくなった人は山之口獏詩集を買うなり、図書館で借りるなりして読んでいただきたい。
焦げた鰯のその頭をこづいて
火鉢の灰だとつぶやいたのだ
で終わる。全体には「俺たちゃ貧乏人」という表現の中、途中に「ビキニの灰」という言葉があり、原爆に対する批判がこの詩には込められている。
植物のヒイラギを調べていると、鰯が出てきた。鰯というと真っ先に私は、この山之口獏の詩『鮪に鰯』が浮かんだのであった。ヒイラギとは何の関係も無い。
ヒイラギ(柊・疼木):主木・添景
モクセイ科の常緑中木 原産分布は関東以南、沖縄、台湾、他 方言名:なし
疼はヒイラと読み、疼ぐはヒリヒリと痛むという意味がある。葉に棘があって、触るとヒリヒリ痛む木ということで疼ぐ木、これが詰まってヒイラギとのこと。
沖縄には無い風習だが、「節分の夜、この枝と鰯の頭を門戸に挿すと悪鬼を払うという。」と広辞苑にあった。ヒイラギの棘は鬼も痛かろうが、鰯の頭が何なんだか?
「鰯の頭も信心から」という諺がある。「鰯の頭のようなつまらないものでも、信仰すると、ひどくありがたく思える。」(広辞苑)ということ。これが関係しているのか。
10月から11月、葉の付け根から花茎が出、小さな白い花が集まって咲く。高さが3~5mに留まり、樹形が整うので庭木に用いられる。剪定が効き、段作りもできる。
葉
記:島乃ガジ丸 2005.11.28 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行