勝さん、新さん、太郎さんによる民謡楽団、トリオG3の初ライブが行われるというので、ガジ丸と私の二匹で、ナハのユイ姉の店に出かけた。テーブルについて、酒を飲みながら演奏を待つ。もちろん、我々二匹は二人となっている。つまり、人間の格好に変身している。マジムンのままでは騒ぎになって、ユイ姉に迷惑がかかるからだ。
初ライブと言っても、『トリオG3初ライブ』などと大々的に宣伝したり、看板掲げたりしたのでは無く、ユイ姉たちによるいつもの演奏があって、その合間に、
「今日は、私の友人のウタシャー(歌手)が来ています。民謡グループです。何曲か演奏してもらいましょう。」とユイ姉の紹介があって、ついでという感じで4曲ばかりを歌った。その方が緊張せずに、楽に演奏できるだろうというユイ姉の心遣いだ。
人生経験豊富な爺さんたちでも緊張するのかと思って、演奏を終えて、我々のテーブルに合流した三人に訊いてみた。
「いやー、そりゃあ緊張するね。人前で生演奏だからね。」(新)
「お金を払っているお客さんだと思うと、失敗できないと思うからね。」(太郎)
「俺も久々に足が震えたな。でも、楽しかったよ。」(勝)
とのこと。勝さんの言った「楽しかったよ」はよく解る。彼らが演奏している間、私も楽しかった。盛んに声援が飛び、場内が盛り上がったからだ。
「唄が良いのだ。」とガジ丸は自慢げに言ったが、私の感じでは、爺さん三人が頑張って歌っている姿に、客が暖かく応えてくれたのだと思う。唄に乗ったのではなく、爺さんたちの頑張りに対する声援だ。それで盛り上がったのだ。
そうそう、ユイ姉の店には今、マミナ先生がいる。バイトという形で厨房を任されている。G3のライブが始まると、彼女も手を休めて我々の席に加わった。
「やー、久しぶりだね。元気そうだね、上手くやってる?」と訊いた。
「久しぶりって言ってもまだ一ヶ月だよ。やっと慣れてきたかなって感じ。店の仕事はね、普段やっていることと大きな違いは無いんだけどね。外がね、騒々しいのと、慌しいのとで、トゥンミグルー(目が回る)するさあ。」
「オキナワはまだのんびりしている方だと思うけど。それでもユクレー島に比べたら人は遥かに多いし、人間もシャカシャカしているね。」
「ナハはね。このあいだ、爺さん三人と一緒に南部戦跡巡りをしたんだよ。南部の田舎の方はね、まだいくらかのんびりした感じはあったよ。」
そんなマミナ先生、もう二ヶ月ばかりは、その暮らしを続けてみるとのこと。寝泊りはユイ姉の家に厄介になっているそうで、二人で仲良くやっているとのこと。
以上が、ユクレー島から離れオキナワにいる、旅の途中の三老人と一老女の近況。
ちなみに、その日のトリオG3の演奏曲目は、全てガジ丸の作で、既にガジ丸がユクレー屋で発表済みの『シニカバカの夜は更けて』、『すねかじり節』、『チャンプルーの肝心』の3曲と、もう1曲は新作で『新月の宴』という唄。
記:ゑんちゅ小僧 2009.5.22 →音楽(新月の宴)