ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

眠った馬の目は抜かれる

2006年06月02日 | 通信-社会・生活

 阪神の株を大量取得して、それを高く売りつけようとしているムラ噛みファンドの代表者が、非難めいた質問をする記者に答えて曰く、「そういうこと(買収されること)が嫌なのであれば、上場なんかしなければいいんです。」
 その通りだと思う。常に高い位置で勝負をしている人たちにとってはその通りなのだと思う。「生き馬の目を抜く」は、「事をなし、利を得るのに抜け目なく素早いさまをいう」(広辞苑)ということだが、まさに、そういった世界に彼らはいるのだろう。
 昔の沖縄は、他府県の田舎もそうだったと思うが、家の戸締りなんてしなくて済んだ。盗まれるような物も無かったんであろうが、皆がのんびりしていたのである。が、今はそうでは無い。「泥棒に入られたくなかったら、戸締りはちゃんとしなさい」となっている。沖縄でも今は、少なくとも、「眠った馬の目は抜かれ」てしまうのである。

 先週、現場に出て、その帰りはダンプトラックの中、運転手は20代前半の若いM、私は真ん中に座り、左の席にはMよりもちょっと若いY。途中、Mが脇道からの車に道を譲る。その車の運転手は若い女性、入る前に会釈して、入った後にはライトをチカチカさせた。ここ1、2年くらい前から気になっていたことなので、若い二人に訊いた。
 「あーやってライトをチカチカさせるのは『ありがとう』って意味だろうけど、いつごろから流行っているの?」
 「もう、数年前からだと思います。僕は免許取ってからずっとやってます。」
 「譲っても、やらない車がいたりするとムカつきます。」などと代わる代わる言う。最初の会釈だけで十分じゃないかとオジサンは思う。ライトをチカチカさせなかっただけで若者にムカつかれたら、オジサンは怖い。これからは真似しよう。
 「チカチカはどうやってやるの?」
 「ハザードをつけるだけです。2回くらいで止めます。」
 じつは、運転歴の長い私であるが、自分の車も持ってはいるが、私にとって車は、単に移動の機械でしかなく、安全に運用することの他には、車そのものにはほとんど興味が無い。したがって、車の各部の名前などで知らないことは多い。「ハザード」と聞いて、ゴルフ(もあまり興味無いが)のバンカーや池などをハザードって言ったっけ、英語で「危険」とか「障害物」とかいう意味だったっけ、などと頭の中をグルグルさせながら、
 「ハザードって何?」と訊いた。何言ってんのこのオジサン、冗談で訊いてるの、本当にハザードランプを知らないの、とYが困ったような顔をして、
 「停車するときにつけるランプです。」と答えてくれた。ありがとう。

 道を譲ってもらった時などにチカチカさせるハザードライトのことを、「サンキューハザード」と言うらしい。チカチカが「アリガト」に思えることがほとんどなので、概ねそういう意味であることを私も認識している。ところが、強引に突っ込んで、こっちを驚かせた後のチカチカも2、3度経験している。その時のチカチカは、やった本人は「悪かったな」という思いか知らんが、私には「どうだ!」と言っているように感じる。「利を得るのに抜け目なく素早いさま」に成功して、「生き馬の目を抜」いた気分なのであろうか。私は眠っていないし、馬でも無いのだが、目を抜かれた気分になる。

 記:2006.6.2 ガジ丸