侵略者
広辞苑のマメコガネの説明の中に「1916年頃北アメリカに侵入して大害虫となり、ジャパニーズ‐ビートルと呼ばれる」とあった。アメリカ人は(たぶん)豆が好きだ。少なくとも豆を(たぶん)よく食う。その豆の害虫ならば「許されざる奴ら」であり、日本からやってきた侵略者であり、「日本め!」と腹を立てたに違いない。
アメリカ人は豆をよく食うのだということを、私は子供の頃に観たテレビ番組『ローハイド』で知った。『ローハイド』は、今ではもう知らない人も多いと思うが、アメリカのテレビドラマで当時大人気の番組であった。内容は、大雑把にいえば、カウボーイ達が牛を移動させる状況下で起きる様々な出来事をドラマにしたもの。
私が覚えている限りで言えば、カーボーイたちは馬に乗っているが、一行の中には馬車もあった。馬車には料理人が乗っていて、荷台には調理道具や食料が載っていた。
食事時になるとカーボーイたちが馬車の周 りに集まってきて、器を手に並ぶ。順番が来ると料理人が器の中に料理したものを入れる。その時に、「また、豆かよー」というセリフを私は何度か聞いたと覚えている。それで、「アメリカは、カーボーイたちがうんざりして料理人に愚痴をこぼすくらい豆料理が多い」と子供の頭にインプットされた。
さて、今回紹介するオキナワマメコガネ、倭国に生息し、アメリカへ侵略したマメコガネとは変種関係らしいが、マメ類の害虫としてはあまり強力ではないようだ。沖縄にアメリカ人は多く住んでいる(アメリカ軍基地があるせいで)が、「沖縄にも憎い奴、ジャパニーズ‐ビートルがいるぜ!」と騒いでいるという話は、これまで聞いたことが無い。
ちなみに、アメリカ軍が沖縄に駐留し続けていることを、アメリカ軍による沖縄侵略と秘かに思っている人達がいることは、これまで何度か聞いたことがある。
オキナワマメコガネ(沖縄豆黄金虫):甲虫目の昆虫
コガネムシ科 沖縄島、久米島に分布 方言名:不詳
名前の由来、マメコガネが広辞苑にあり、豆黄金虫と漢字表記され、「コガネムシ科の甲虫。体長1センチメートル内外。成虫はマメ類・葡萄などの葉を食害」とのこと。コガネムシ科なので黄金虫、豆は「体長1センチで小さいから」では無く、「マメ類を食害するから」だと私は考える。ということで豆黄金虫、発音する際はマメコガネと虫は無視されている。オキナワについては「沖縄島、久米島に分布」だからであろう。
マメコガネは本土にいて「豆類の大害虫」とのこと。本種もまた、マメ科植物の葉を食べるようだが、マメ科以外のヤブガラシやアワユキセンダングサも食べ、また、「個体数は多くない」(沖縄昆虫野外観察図鑑)ということもあって、「豆類の害虫」という話はあまり聞かない。何しろ、ヤブガラシやアワユキセンダングサはたくさんある。
体長は9~10ミリ内外。寄主は各種植物の根。成虫は植物の葉を食べ、幼虫は植物の根を食べる。マメコガネに比べて点刻が弱いとのこと。成虫の出現は5~8月。
腹側
記:2013.7.15 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行