ジーグイハーグイ、ゴーグチハーグチ
前回(6月13日付)の沖縄の言葉『ヤガ』の最後に、
「マーヤガ、ターヤガ、ヌーヤガ、チャーヤガは、ジーグイする時にも、ゴーグチする時にもよく使われる。それは・・・ジーグイ、ゴーグチの意味も含め次回に」と書いた通り、今回はジーグイとゴーグチについて。ジーグイもゴーグチも沖縄の言葉。
沖縄語辞典によると、
ジーグイは名詞で「不平」という意。
ジーグヤーはジーグイムンと同意で「不平ばかり言う者」という意。
ジーグイハーグイは「不平ばかり言うこと。不平たらたら。」という意。
ゴーグチは名詞で「苦情。不平をいうこと」という意。
ゴーグチャーは「苦情ばかり言う者」という意。
ゴーグチハーグチは「さかんに苦情を言うさま。不平の多いこと。」という意。
ジーグイもゴーグチもよく耳にする言葉、私が子供の頃、家の中では祖父母、両親がよく口にしていた。お使いを言いつけられ、私が「嫌だなぁ」とブツブツ言っていると、
「ブーブー アビーシェー ターヤガ ジーグイ サンケー」と叱られる。アビーシェーは「言っているのは」、サンケーは「するな」という意で、全体では「ブーブー言っているのは誰だ?文句垂れるな」となる。
父が酒飲んで夜遅く帰った時、母がガミガミ文句言うと、
「ヌーヤガ アンスカ ゴーグチ サンケー」と父が言い返す。アンスカは「そんなに」という意で、全体では「何だ、そんなに文句言うなよ」となる。
ジーグイもゴーグチも和語にすると「文句」と訳されるが、私の感覚では、両者にはいくらかニュアンスの違いがある。ジーグイは自分にふりかかる嫌な事に対してブツブツ文句を垂れる。ゴーグチは相手の良くないことに対し文句を言う、ジーグイはブツブツであるが、ゴーグチは、時には怒鳴るようにガミガミ文句を言う。といった違い。
漢字にすると、ジーグイについては想像つかないが、ゴーグチはおそらく強口であろうと想像する。強情(ごうじょう)の強だと思われる。
ジーグイハーグイのハーグイ、ゴーグチハーグチのハーグチは両者とも特に意味のある言葉ではなく、重ね詞みたいなものだと思われる。リズム良く聞こえるための。
ハの発音は、沖縄語では概ね「フヮ」に聞こえるのだが、ハーグイのハ、ハーグチのハはそのままハと発音されている。地域性によるものかもしれないが、ハーグチのハは「ヒャ」となったりする。私の祖母は「ヒャ」だった。祖母は今帰仁の生まれ。
ちなみに、沖縄語の発音では、カは「クヮ」、ガは「グヮ」となることが多い。会社は「クヮイシャ」、学校は「グヮッコウ」、公民館は「コウミンクヮン」となる。
もう1つちなみに、私は耳に覚えが無く知らなかったが、沖縄語辞典をみていたらクヤーハヤーという言葉もあった。「不平を言うさま。不平。」の意とある。クイハイという言葉もあり、クヤーハヤーと同意。クイハイスンで「ぶつぶつ言う」意となる。
記:2018.6.15 ガジ丸 →沖縄の生活目次