しみじみ思う
図鑑を開いて、翅の模様の違いを描いた絵をじーっと見つめる。老眼なので小さな絵柄や文字は見えない。虫眼鏡でじーっと見つめる。自分の撮った数枚の写真と見比べる。図鑑とパソコンの画面を何度も目が行き来する。裸眼で見るパソコン画面、虫眼鏡を通して見る図鑑の絵。2、3分経つと頭がクラクラしてくる。
そんなこんなしてやっと、「これはシルビアに違いない」と決める。確信があるわけでは無い。正確に言えば、「これはどちらかというとシルビアに似ている。よって、シルビアに違いないということにしておこう」といった気分である。ヤマトシジミとハマヤマトシジミとシルビアシジミはよく似ていると文献にも書いてある。まったく、その通りであると、大雑把な性格をした私は、少し吐き気も感じながら、しみじみ思うのであった。
ここで紹介するイワカワシジミ、ムラサキシジミ、ツバメシジミの3種は同じシジミチョウだが、似ているものが他に無かったからである。虫たちが皆そのように判りやすければ、私も吐き気せずに済む。
イワカワシジミ(岩川蜆):鱗翅目の昆虫
シジミチョウ科 奄美大島、沖縄島、西表島、台湾などに分布 方言名:ハベル
広辞苑を見ると、シジミは蜆の他に小灰という字も充てられている。「(翅の)裏面は灰白色」とあるので、そこからきているのだろう。イワカワ(岩川)は人名。
尾状突起を持ち、それが触角の擬態となり、翅端に黒点を持ち、それが目の擬態となって、両方合わせて頭部の擬態となっている。本物の頭部で吸蜜している間、偽頭で外敵を惑わすとのことである。
前翅長17ミリ内外。成虫の出現時期は3月から12月。幼虫はクチナシの新芽、つぼみ、花、実を食べる。
翅裏
翅表
幼虫
ムラサキシジミ(紫蜆):鱗翅目の昆虫
シジミチョウ科 関東南部以南、南西諸島、台湾などに分布 方言名:ハベル
翅表が紫色をしているシジミチョウなのでムラサキシジミという名前。
高知城では、翅を広げ、紫色が目立っていてすぐに気付いた。気温の低い時には日光浴のため翅を開いて葉の上に止まるとのこと。暑い日には翅を閉じて止まるらしい。
前翅長16ミリ内外。成虫の出現時期、本土では3月~11月とあったが、沖縄では3月~12月。暖地の蝶で照葉樹林周辺に発生する。食草、本土ではアラカシ、アカガシなどで、沖縄でもオキナワウラジロガシ、アマミアラカシなどの同じくブナ科植物。
翅裏
翅表
沖縄には生息しないが、もう一種、四国の旅で撮ったシジミチョウがある。
ツバメシジミ(燕蜆):鱗翅目の昆虫
シジミチョウ科 北海道からトカラ列島、北半球の温帯域に分布
成虫の出現は4月から10月。食草はマメ科のクローバー、ハギ類など。
成虫
記:ガジ丸 2006.9.24 →沖縄の動物目次
訂正加筆 2009.3.8
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行