有名なダンスの達人ミスターボージャングルは、だぶだぶのズボンを穿いていたとも伝えられている。島の娘ユーナはダンスが上手いというわけではなく、いつもだぶだぶのズボンを穿いているために、ミス・ボージャングルとあだ名され、略してミスボー、あるいはバギー(ーにアクセントを付けてバギイという風に読むとウチナーグチらしくなる)って呼ばれたりしている。
ズボンだけでなく、彼女は靴もぶかぶかのを履いている。ズボンも靴も彼女の父親の物だ。父親は2年前のある日、突然島から消えた。島の者たちの多くは、「娘一人を残して失踪するわけが無い。おそらく酔っ払って、海に落ちて死んでしまったのだろう」と考えていたが、ユーナは、「父ちゃんは生きている。何かの事情で島を離れたのだ。いつかきっと帰ってくる」と信じていた。父親の物を身に付けることで、その願いが叶うような気がしていたのだった。
ユーナがまだ1才を過ぎたばかりの頃に、ユーナの父親は娘と二人で島にやってきて、そのまま島に住みついた。ユーナの母親は彼女が生まれてすぐに病で亡くなっていた。父一人子一人の生活が10年続き、そして、ユーナが13才の歳に突然、父がいなくなったのだ。とても仲の良い親子だった。ユーナにとっては何よりも誰よりも大切な、深く愛する父だった。ゆえに、彼女の悲しみは尋常のものでは無く、島の人たちは彼女が自殺するのではないかと心配するほどであった。
そんな彼女を支えたのはシバイサー(サーにアクセント)博士、ガジ丸、チシャといった島の仲間たち。特にシバイサー博士の「お前の父親は、世界の平和のために働いている秘密結社の一員で、今、大変重要な任務にあり、それで連絡もできないのだ。でも、その任務が終われば、いずれ帰ってくるさ。」という話によって、ユーナはその深い悲しみから少しは救われたのであった。
仲間の助けで立ち直ったユーナではあったが、しかし、元々気の強い性格で、喧嘩も強い。だぶだぶズボンのウエストからはパンツ丸見えなのだが、見られても全然平気。ただし、面白がって覗こうなどとすると、そのぶかぶか靴で蹴り飛ばされる。モク魔王の仲間のいたずら野郎どもはしょっちゅう彼女に蹴られている。ために、彼らは彼女のことをイカリボーと呼んでいる。
そして、今日もイカリボーはだぶだぶズボンにぶかぶか靴で、元気に島を歩いている。
語り:ゑんちゅ小僧 2004.11.19