ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

クスノハカエデ

2018年04月18日 | 草木:高木

 末吉公園は那覇市首里末吉にあり、那覇市という都会の中にありながら沖縄島南部の原生林が残された公園。奥へ入っていくと、大きな木、小さな木、それらに絡みつく様々な蔓蔦が茂り、いかにも亜熱帯の森といった雰囲気になっている。
 ガジ丸HPで沖縄の植物を紹介し始めた頃には既に、末吉公園にはいろんな種類の植物があるということを知り、以来、私が散策する最も頻度の高い公園となっている。
 末吉公園に植栽されている樹木には、幹に名札のあるものがいくつかある。その多くはよく知られた木で、私もだいたい知っている木だが、森の深い(園路からは近い)場所にとても大きな木の、その幹に掛けられてある名札には知らない樹名があった。
 
 クスノハカエデ、聞いたことも無い名前。家に帰って調べると、多くの文献にその記載があった。樹木に興味のある人なら知っている、それなりに有名な木のようであった。ところが、末吉公園のクスノハカエデは他の樹木が多く茂った中にあり、しかも、周りの木よりもずっと高くて、5、6mから上は他の樹木に邪魔されて見えない。枝ぶりが見えない。全体の姿が見えない。写真は幹肌と葉しか撮れなかった。
 それから数年が経った今年の春、ふと立ち寄った、那覇新都心にある沖縄県立博物館の前庭でクスノハカエデに出会う。その木はまだ若くて、高さは3mほど、全体の写真も撮れて、葉の近写も撮れた。もちろん、木を見て、それがクスノハカエデだと判ったわけでもなく、写真と図鑑を見比べて判断したわけでもない。そこにも名札があったのだ。
 
 クスノハカエデ(楠の葉楓):盆栽・公園
 カエデ科の常緑高木 奄美以南の南西諸島、台湾などに分布 方言名:マミク
 カエデの仲間なのでカエデ、葉がクスノキの葉に似ているのでクスノハ(楠の葉)という解りやすい名前。広辞苑にも「葉はクスノキを思わせる」とあった。カエデの由来は広辞苑にあり、「カエルデ(蛙手)の約。葉の形が似ているからいう」とのこと。葉の形がクスノキに似ている本種は蛙手の形とは遠い。だけどカエデ。
 カエデはカエデ科の落葉高木の総称で、日本にあるカエデの仲間は、『野外ハンドブック樹木』にイタヤカエデ、イロハカエデ、ヤマモミジ、オオモミジ、蛙手は無いヒトツバカエデなどを含め20種ほど紹介されているが、どれも落葉高木で落葉する。クスノハカエデはカエデ科ではあるが、日本のカエデ科の中では唯一つ常緑。なので、「カエデ科の落葉高木の総称」の「落葉高木」には当たらないのだが、でもカエデ。
 落葉せず、紅葉もしない。蛙手の形でも無いが、果実にはカエデ科らしく翼が付いている。2センチほどの長さで、平たく細く、2個が根元でくっついてプロペラ状となり、風に乗って、回転しながら飛んでいく。7月から10月に熟する。
 高さは5~15mと文献にあった。末吉公園のものは大木。枝先に集散花序をつける。花は小さく目立たない。紅色、白色~黄紅色で、開花期は3月から4月。
 海岸や、石灰岩地帯に多く自生する。盆栽、景観、庭園、公園樹に利用され、材は建築や家具に利用される。幹はゴマダラカミキリの幼虫に食害されやすいとのこと。
 
 葉

 記:島乃ガジ丸 2010.11.15 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行