ガジ丸が想う沖縄

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民主政治の危機?

2014年12月19日 | 通信-政治・経済

 村の家々からその家の代表者(概ね家長)が集まって会議をした。村の家々100家族からもれなく100人の代表者による会議、その日の議題は新設するゴミ焼却炉を村のどこに造るかという話。誰も自分の家の近くにそんなもの建って欲しく無いのだが、新しいゴミ焼却炉は必要であった。喧喧諤諤の会議が続き、結局、いくつかの候補の中から多数決で設置場所は決まった。決まった後は異論を唱える者はいず、皆仲良く宴会となった。
 新設のゴミ焼却炉は真一郎オジーの畑の傍、もちろん、真一郎オジーは初め大反対したのだが、場所選定の理由が「村の最も南にあり、一年を通して風下になる日が最も多い、特にこの地方の農繁期である冬場はほとんど北風が吹くから」ということと、村人の過半数がそれに賛成したということで、承諾することになった。一度納得してしまえばもう文句は言わない。「グダグダするのは男の恥」とオジーも後は楽しく飲んで踊った。

 それから50年後、老朽化したゴミ焼却炉を廃炉にして、また新たに焼却炉を設けることになった。50年前と同じように村の全体会議が開かれた。会議は、始まる前から新設のゴミ焼却炉は今ある焼却炉の敷地内に設けるという雰囲気であった。その時、真一郎オジーは既に天国に召され、彼の孫、真三がその家の家長になっていた。真三はその雰囲気を打ち破るべく最初に壇上に上がり、自らの意見を述べた。
 「南が一年を通して風下になる日が最も多いのは確かだ。しかし、夏場は南からのゆるい風が吹き、冬場は北からの強い風が吹くことが多い。南からのゆるい風は焼却炉の煙を長く村中に留めている。北からの強い風はあっという間に煙を村から遠ざける。ここにここ5年のデータがあるが、焼却炉から出た煙の成分が村に残っている量はこの表の通り。もし村の北側に焼却炉を置いたとしたらどうなるかが次の表だ。一年を通して村に煙が留まる量は、焼却炉を北に置くより南に置く方がずっと多いということがこれで明らかになっている。というわけで、私は今の場所に焼却炉を設置することに反対する。」
 
 その後、「いや、別の場所に移してそこをまた汚すより、今の場所にあった方が良い」といった内容の意見を述べる人が何人かいて、そして、結果、多数決で現在の場所に新設するということになった。50年前の真一郎オジーと同じく、真三もまた、多数決には従うことにしたのだが、潔く従ったオジーとは違い、真三は渋々だった。なので、その後の宴会には参加しなかった。「こんなことではいけない」と真三は強く思っていた。
 真三が思う「こんなことではいけない」は、もちろん、より良い方向を目指さず「現状維持」という惰性といってもいい村人たちの姿勢にもあるが、彼が最も危惧したのは、村の大事なことを決める全体会議に不参加者が多くいたことだ。100人の内45人が「面倒、そっちで決めて」と参加しなかった。「村が危ない」と真三は思った。
          

 以上は私の作り話。さて、話は現実に戻って、日曜日の衆議院議員選挙、新基地建設に反対の私は自民大勝利に残念な思いだが、それよりも、投票率の低さが気になった。
 国民が政治に関心を持たないのは政府と官庁に責任があると思うが、「民は国に黙って従えばよい」と彼らは思っているのかも知れない。それより、「面倒、そっちで決めて」と思っている国民が増えているのであれば、それはもう民主政治の危機だと思う。
          
          

 記:2014.12.19 島乃ガジ丸