ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

我が身のこととして

2006年05月19日 | 通信-音楽・映画

 12月から3月までは仕事が忙しかった。4月は、そのせいで伸び伸びになっていた雑用を片付けるのに忙しかった。で、この間、映画を観に行っていない。毎月、桜坂劇場から送られてくる映画のスケジュール表も、この5ヵ月分は封も切っていない。3月上旬には小津安二郎特集があって、観たかったのだが、行けなかった。
 先週土曜日(13日)、そんな久々の映画へ出かけた。特に観たいと思う映画は無かったのであるが、概ね私好みの映画を上映してくれているので、とりあえず桜坂劇場へ。行く前に一応新聞の映画欄を見る。そこに、「もう一つのシンドラーのリスト」といった内容のキャッチが載っていた。それだけを読んで観ようと思った。『ホテルルワンダ』。
 新聞にある「アフリカの悲劇の裏側で、本当にあった感動の物語。もう一つのシンドラーのリスト」、私はその程度の予備知識しか持っていなかった。ルワンダ内戦のことも、その当時はニュースで知っていたと思うが、既に、すっかり忘れていた。
 遅れたいと思って遅れるわけじゃないが、映画の上映時間に私はたいてい遅れる。家からバス停に向かう。バス通りに出たらバスが来た。バス停までは約50m。走れば間に合うかもしれないが、走っても間に合わなかった時のショックは大きいので、走らない。次のバスまで待つ。よって、この日の上映時間にもまた遅れてしまった。
 チケットを購入して、中へ入ろうとすると、「混んでますよ」と係りの人が言う。ちょっと驚く。マニア向け映画の多い桜坂劇場が混んでいるなんて。そういえば、ロビーにも人が多く、なんだか賑やか。「頑張ってるんだ、桜坂劇場は」と少し嬉しく思う。
 中へ入る。確かに、桜坂劇場にしては混んでいたが、席はポツポツ空いている。全体としては8分の入りといった感じ。両隣に人がいる席に座る。両隣に人がいるなんて、桜坂劇場では初めての経験である。スクリーンは、幸いにも、まだ予告編だった。

 物語が終わって、スクリーンには出演者、スタッフを紹介するテロップが流れる。その時に席を立つ人も多いが、私はたいてい最後まで見る。映画の余韻に浸っている。その時もまた、場内が明るくなるまで座っていた。ちょっとウルウルしていたので、それが落ち着くのを待ってもいた。ちょっとウルウルは、その時きっと、多くの人がそうだったに違いない。暗い内に席を立つ人は少なかった。
 明るくなって、みんなが出口に向かう。私の前を歩いている人がモタモタしている。オバサンである。「さっさ歩かんか」と心の中で思う。見ると、そのオバサンの前の人がヨタヨタしている。バアサンである。前のオバサンの連れみたいである。バアサンはヨタヨタして、ついに、近くの席へ崩れるようにして座った。オバサンが寄り添う。「大丈夫?」と私は思い、バアサンを見る。バアサンは大丈夫であった。ハンカチを手にして、止まらない涙を拭いていたのである。涙が止まらない自分が恥ずかしくて、可笑しく感じているのか、泣きながら笑ってもいた。「あっさみよー、どーしようかねー」って感じ。
 バアサンの歳だと、沖縄戦を体験している。『ホテルルワンダ』にあった悲惨とおなじようなことを経験したに違いない。『ホテルルワンダ』の悲しみは、我が身のこととしてバアサンは感じたのであろう。涙が止まらないのであろう。
 『ホテルルワンダ』、最後には希望の光も見えて、私にとっても、良い映画でした。

 記:2005.5.19 ガジ丸