折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

ドキュメント・『ザ・株主総会』⑤

2006-10-28 | 仕事・職場
第5回  議長、正常化に向けて懸命な努力


思わぬハプニングに瞬時呆然の体であった議長だが、すぐに立ち直って事務局を一瞥する。

顧問弁護士が、「当事者二人を、即、退場させてください」と小声で伝える。

議長は、即刻、その場で二人の株主の退場を命じると共に、席を離れて議長席周辺を歩き回り、気勢を上げている総会屋に対し、席に戻るよう再三要請を繰り返す。

一方、株主席においても、S 課長がこの状況に機敏に対応し、総会屋の手を引っ張って、倒してしまった社員株主を議長の「退場命令」が出ると、間髪を入れずに会場から連れ出し、会社の小部屋の中に「退避」させた。

総会屋連中も、この社員株主の身柄を確保しておかなければと、すぐに後を追ったが、一瞬の差で見失い、飛び出していった総会屋は、空しく会場に戻ってきた。

総会の正常化には、先ず何をおいても事態の沈静化が必要であり、議長は株主に席に戻るよう懸命な努力を続ける。

一方の総会屋側としては、いかに混乱状態を長引かせ、議事を混乱させるかが狙いであるから、議長の再三にわたる要請を完全に無視して、議長席の前で不規則発言を繰り返している。

ここは、まさにこれからどちらが指導権を握るかのせめぎ合いである。

総会屋は、盛んに今起こった暴力行為について質問させろと議長に迫っているが、議長はここで総会屋の質問に応じれば、彼らのペースにはまり、混乱に拍車がかかり好ましくないと判断し、少々強引であったが、

「先ほどの二人の株主さんについては、退場を命じました。本件を含め、株主様からのご質問は、後ほど質問の受付時間を設けておりますので、その時に十分におうかがいし、また、ご説明申し上げますので、どうか議事の進行にご協力をお願いします」

と述べて、議事を再開した。

総会屋側は、猛反発したものの、議長は毅然として、株主から事前に文書で提出されている質問状に対する「一括回答」まで、一気に議事を進める。

「一括回答」とは、株主から事前に文書で提出された質問事項を会社側でまとめた上で、その回答を総会当日、株主の質問を受ける前に回答し、当日の質問との重複を防止しよう考え出された、総会屋対策の一方式のことを言う。

今回株主からの質問は約200問にも及ぶが、これを会社側で整理し、作成した回答を担当の常務が読み上げていく。

全部読み終わるまでには、20分以上を要するので、この時間が事態の沈静化と態勢を立て直す余裕をもたらしてくれた。

この間も、総会屋からは「総会は無効なんだから、そんなもの読んだって無駄だよ!」等々議事を牽制するヤジが飛び交うものの、担当常務はひたすら一括回答の文言を読み上げることに専念する。

そして、約30分、一括回答が終った。
これから、株主との一問一答、正念場である。

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