折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

とにかく「泣かせる」話です~重松 清著「とんび」

2011-11-05 | 読書
重松 清と言う作家は、居合道仲間のT先生が、この作家の一連の作品を取り上げて、読後の感想をミクシィに掲載しているので、名前だけは知っているが、その作品は読んだことがなかった。

その重松 清を読んで見ようと思ったきっかけは、数日前の新聞に載っていた、この本の紹介文章。

父ひとり子ひとり。
我が子の幸せだけをひたむきに願い続け、
ありったけの愛を注ぎ込む熱く不器用なヤスさん。
魂ふるえる父親物語の最高傑作!


                    「とんび」(重松 清著、角川書店)

丁度、読む本がなかったので、早速本屋に足を運び、先ずは裏表紙に書かれている大まかなストーリーを読む。(ここを読んで面白そうだと思った時に購入することにしている)


アキラへの愛あまって、時に暴
走し時に途方に暮れるヤスさん。
我が子の幸せだけをひたむきに
願い続けた不器用な父親の姿を
通して、いつの世も変わること
のない不滅の情を描く。魂ふる
える、父と息子の物語。


これを読んで、即購入することに。

そして、本文を読み終ると巻末の「あとがき」に著者自身が書いたこの物語の『エキス』が。

不器用な父親の物語を描きたい、というのが始まりだった。
ただし不器用さをシブさにしてはいけない、と自分でルールを決めた。
寡黙であるよりは間の抜けた饒舌を選んでしまう父親がいい。堪え忍んで動かないこと
よりも、むしろ暴走して空回りしてしまうことのほうに、父親の「男」を背負わせたい。
正しさではなく愚かしさで愛されるひとであってほしいし、強さではなく熱さで我が子を
愛し抜くひとであってほしい。

結果、ヤスさんという父親が物語の中に生まれた。いささか騒々しく、乱暴で、意外と
涙もろい男になった。



そのエキスを、人情の機微を弁えた、さまざまなエピソードを交えて肉付けし、展開させる手法、筆力は実に見事で、物語の中にグイグイと引き込まれていく。

417ページの長編だが、2日間であっという間に読み終っていた。

世に「泣かせ上手」の作家がいる。
小生の知る限り、さしずめ浅田次郎などはその筆頭だと思う。

かの「壬生義士伝」を読んでいて、何度こみ上げる涙を押しとどめるのに苦労したことか。

本作「とんび」も、一言でいえば、とにかく『泣かせる』話なのである。
重松 清という作家、まだ、たった1冊読んだだけだが、その「泣かせ上手」の一人に数えられるのではなかろうか。


この小説「とんび」は、堤 真一、小泉今日子主演で、来年の1月7日、14日(土)NHK総合テレビ土曜ドラマスペシャルで放送されるとのこと、確かに本作品、映像化にはもってこいの素材であると思うが、原作が持っている良さをどこまで映像で表現できるか楽しみであると同時に一抹の不安もなしとしない。(壬生義士伝も映像化されたが、文章の力に映像は遠く及ばなかった。)