コスモス畑にて
「パパ、待ってよ」とコスモスの花の中、パパを追う孫のKちゃん。
携帯で娘と話していたかみさんが、突然、大声で笑い始めた。
それは、「笑い転げる」と言った方が、ぴったりの笑い方であった。
何事かと、こちらも興味をそそられ、ことの成行きを注視する。
この10月で3歳になった孫のKちゃんから、毎日のようにかみさんの携帯に電話がかかってくる。
我々夫婦は、これをKちゃんの「定期便」と呼んで楽しみにしている。
この時も、いつもの定期便で、しばらくKちゃんのお相手をしてから、娘と電話を代わったのだ。
ようやく長い電話を終えたかみさんの話によると、
Kちゃんが余りにも言うことをきかないものだから、「がみがみ」小言を言ったのだそうだ。
その時、Kちゃんがとった態度が面白いのよ、とかみさんは思い出し笑い。
「何をしたの」と話の先を促すと、
「Kちゃんたら、ママからがみがみ小言を言われた時に、下を向いて
『まったく、うるさいな』
と小声でつぶやいたんだって!!」
まさか、そんなリアクションが返ってくるなんて思っても見なかった娘は、その小生意気な態度に、カチンと来て「誰に向かって言ってるの」と大声を上げると、
『ママ』
とすまして言ったんですって。
「全くあの子には、カリカリしちゃう」と娘がかみさんに愚痴ったのだそうだ。
それを聞いて、下を向いて「まったく、うるさいな」とつぶやくKちゃんの姿を想像して、思わず手を叩いて笑ってしまった。
「それって、多分、パパがママに何か言われた時の『口ぐせ』なんだろうね」
「それを見ていて、Kちゃんが『学習』した」
「多分、そうなんだろうけど、それを状況に応じて使い分けているところが、感心を通り越して恐れ入るね」
「手前味噌になっちゃうけど、Kちゃんの言動は『T・P・O』をわきまえてるって言えるんじゃない」
「でも、まだ3歳になったばかりだぜ、そんな知恵が回るのかね」
「もう、何でもわかるのよ。だから、娘にはいつも言ってるの、子供の前では夫婦喧嘩をしないで」と。
「<子は、親の鏡>と言うけど、子供を通して夫婦の日常生活の一端が透けて見えて来ると言うわけだ」
この日の夕飯は、こんな会話でいつになく盛り上がったが、それにしても、3歳にして、すでにこんな能力が備わっているとは!
幼児の知恵の発育の速さには、改めて目を見張らされる。
一体、孫の頭の中はどうなっているのだろう、その中をのぞいて見たいものだと興味をそそられた次第である。
T・P・O=Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の略。
T・P・Oをわきまえる=時と場所、場合にあった物や、行動、ふるまいをすることができると言うこと。