驚愕の全面広告
新聞全面にわたっての「カムイ外伝」一色のPRには度肝を抜かれる思いであった。
同時になぜ今「カムイ」なのか、それも実写なのかと、素朴な疑問を持った。
本文中の夢枕 獏氏のコメントもこの広告の中で書かれている。
丁度2カ月ぶりに映画を見た。
「カムイ外伝」である。
雑誌「ガロ」の時代から40数年来の「カムイ」ファンにとっては、映画のできの良し悪しはともかくとして、見ておく「義務」があるかなと思って、映画館に足を運んだ次第。
何時もの悪いクセで、映画を観る前に久しぶりにこの映画の原作である白土三平の「カムイ外伝【スガルの島】」を読み返してみた。
映画の原作「カムイ外伝【スガルの島】」(白土三平 小学館)
差別から逃れるために忍者となり、「掟」を破って命を狙われる身となったカムイ。そのカムイが逃亡の末流れ着いた島には、同じ抜け忍のスガルが漁師の妻として暮らしていた。
猜疑心の強いスガルとは衝突しながらも、カムイは島の暮らしに次第に惹かれていく。
しかし、そこにも追手の非情の魔手が・・・・・。
そして、戦慄の惨劇が・・・。
遂に、カムイの怒りが爆発する。
何せ20数年前に読んだ本だけに、ほとんど内容は忘れていたが、改めて読んでみると、数ある「カムイ外伝」のエピソードの中で、質・量とも最も充実した作品であり、これならば映画化をしたくなるのもむべなるかなと納得したが、同時に、映画化するには結構リスクもあるなとも感じた。
例えば、アクションシーン。
原画では、追う者と追われる者との間で繰り広げられる壮絶極まる死闘をカムイを始め、忍者たちの人知を超えた「体技」を遠近法等さまざまな画法を駆使して、実にスピーディーに、そしてリアルに描き切っていて、鳥肌が立つようなその見事な構図には、魅了される。
これは、「劇画」だけが良くなしうるものであり、実写ではCGやワイヤーアクション技術の進歩がいかに著しいと言っても、生身の人間に劇画の凄味を出させるのは、不可能に近いのではないだろうか。
作家の夢枕 獏氏も
「カムイにアクションシーンは欠かせないのに決まっているんだけど、生身の人間があれをどうやって演じるだろうと見当がつかなかったんですよ。実写の「カムイ外伝」はもちろん見たい、でも、期待よりも不安が大きかったと言うのが率直なところ」
と語っているが、この点については、小生も全く同感で、ただ、夢枕氏と違って小生は、端から期待していなかったというのが正直なところである。
だから、ネットなどで
曰く、CG技術が拙劣。
曰く、ワイヤーアクションも稚拙。
と言ったさまざまな酷評を目にしても、それは、CGやワイヤーアクションの出来、不出来と言った問題もさることながら、あの劇画を実写化すること自体の問題なのだとと思っていたので、そういう評価自体は、ほとんど気にしなかった。
むしろ、見終わった後の小生の感想は、前出の夢枕氏の
「そんな僕が、映画を見終えた時、どんな気持だったかというと―”ホッ”としました。そして、ああ、よくやってくれたと思った」
と言うコメントに共感し、「言われてるほど悪くはないじゃないか」というものであった。