「知ってました?Sさんの会社ダメになっちゃったの」
「初耳だね、何にも聞いてないよ」
「詳しくは聞いてないんですけど、資金繰りに行き詰ったみたいですよ」
退職する前に勤めていた会社で一緒に仕事をしたHくんから、Sさんが経営陣の一人となっている会社が「倒産」したという連絡があったのは、少し前のことである。
かれこれ1年ほど前になるが、昭和40年代から50年代にかけて10年間ほど一緒に仕事をした仲間4人のうち小生の上司だったSさんが、65歳になって知り合った、ある中小企業の若い社長と意気投合し、この社長のために一肌脱ごうと情熱を燃やしていることをブログで紹介した。(2007・11・5 ブログ「65歳の青春」)
そのブログを書きながら、65歳になってもまだ「夢」を追い求め、情熱を燃やせるSさんをすごいなと感心すると同時にうらやましく思ったことを今も覚えている。
そのSさんの会社が倒産するなんて、とHくんの電話が終わってもしばし信じられない思いであった
そして、当のSさんから電話があったのは、Hくんの連絡があってからしばらくたったある日のことであった。
「Hくんから聞いたんですけど、会社ダメになっちゃたんですって」
「そうなのよ、やっと残務整理が終わった所。これからは、素浪人ってわけ」
「あれほど、入れ込んで若い社長を支えて、良い会社にするんだって張り切っていたのに・・・・・。残念ですね、何がどうなっちゃったんですか」
「直接的には、銀行の<貸し渋り>、<貸し剥がし>による資金繰りの行き詰まりなんだけど、例の<耐震偽装問題>で建築確認が下りるまでにえらく時間がかかってしまったのがこたえたよ。」
「新聞などで最近、マンション業者、不動産会社、中小の住宅会社が倒産するニュースが出てたけど、Sさんのところは大丈夫だと思ってたんですが・・・・」
「われわれの業界に対する銀行のスタンスが、予想以上に厳しくてね。受注残もあり、業績も悪くなかったんだけど、銀行は<金は貸さない、貸した金は引き上げる>で、資金繰りが手の打ちようがなくなっちゃって」
「それじゃあ、言って見れば黒字倒産みたいなもんじゃあないですか!」
「これまでも、零細企業の<悲哀>を何回も味わってきたけど、今度ほど大企業と中小・零細企業の格差を身にしみて感じたことはなかったね」
「そんなに、ひどいんですか!」
Sさんの話からは、実体経済の想像を上回る深刻さが伝わってくる。
小生は所謂「大企業」と言われる会社に定年まで勤めたが、Sさんは早期退職して、ある企業の役員として経営に参画するという別の道を選んだのだが、そのSさんが、「大企業」を辞めて実感したこととして常々口にしていたのは、大企業はそう簡単にはつぶれないけど、零細企業はいとも簡単につぶれてしまう、という「大企業」の優位性と零細企業の「危うさ」についてであった。
きっと、毎日が「真剣勝負」、神経を研ぎ澄まし、神経をすり減らす日々だったに違いない。
しかし、それでも、そこには大企業では見ることができなかった「夢」や「希望」という自己実現の道が、日々の頑張りを支えていたに違いない。
それだけに、Sさんにとって、こういう形で自分の「夢」に幕が下りるなんて想定外だったことだろうと思う。
しかし、「寄らば大樹の陰」という道を敢えて捨てて、自ら選んだ道を「自分流」に貫いてきたSさんの生き様は立派であり、65歳のチャレンジは実を結ばなかったが、「Sさん、本当にご苦労様でした、そして、お疲れ様でした」と心から拍手を贈る次第である。
「初耳だね、何にも聞いてないよ」
「詳しくは聞いてないんですけど、資金繰りに行き詰ったみたいですよ」
退職する前に勤めていた会社で一緒に仕事をしたHくんから、Sさんが経営陣の一人となっている会社が「倒産」したという連絡があったのは、少し前のことである。
かれこれ1年ほど前になるが、昭和40年代から50年代にかけて10年間ほど一緒に仕事をした仲間4人のうち小生の上司だったSさんが、65歳になって知り合った、ある中小企業の若い社長と意気投合し、この社長のために一肌脱ごうと情熱を燃やしていることをブログで紹介した。(2007・11・5 ブログ「65歳の青春」)
そのブログを書きながら、65歳になってもまだ「夢」を追い求め、情熱を燃やせるSさんをすごいなと感心すると同時にうらやましく思ったことを今も覚えている。
そのSさんの会社が倒産するなんて、とHくんの電話が終わってもしばし信じられない思いであった
そして、当のSさんから電話があったのは、Hくんの連絡があってからしばらくたったある日のことであった。
「Hくんから聞いたんですけど、会社ダメになっちゃたんですって」
「そうなのよ、やっと残務整理が終わった所。これからは、素浪人ってわけ」
「あれほど、入れ込んで若い社長を支えて、良い会社にするんだって張り切っていたのに・・・・・。残念ですね、何がどうなっちゃったんですか」
「直接的には、銀行の<貸し渋り>、<貸し剥がし>による資金繰りの行き詰まりなんだけど、例の<耐震偽装問題>で建築確認が下りるまでにえらく時間がかかってしまったのがこたえたよ。」
「新聞などで最近、マンション業者、不動産会社、中小の住宅会社が倒産するニュースが出てたけど、Sさんのところは大丈夫だと思ってたんですが・・・・」
「われわれの業界に対する銀行のスタンスが、予想以上に厳しくてね。受注残もあり、業績も悪くなかったんだけど、銀行は<金は貸さない、貸した金は引き上げる>で、資金繰りが手の打ちようがなくなっちゃって」
「それじゃあ、言って見れば黒字倒産みたいなもんじゃあないですか!」
「これまでも、零細企業の<悲哀>を何回も味わってきたけど、今度ほど大企業と中小・零細企業の格差を身にしみて感じたことはなかったね」
「そんなに、ひどいんですか!」
Sさんの話からは、実体経済の想像を上回る深刻さが伝わってくる。
小生は所謂「大企業」と言われる会社に定年まで勤めたが、Sさんは早期退職して、ある企業の役員として経営に参画するという別の道を選んだのだが、そのSさんが、「大企業」を辞めて実感したこととして常々口にしていたのは、大企業はそう簡単にはつぶれないけど、零細企業はいとも簡単につぶれてしまう、という「大企業」の優位性と零細企業の「危うさ」についてであった。
きっと、毎日が「真剣勝負」、神経を研ぎ澄まし、神経をすり減らす日々だったに違いない。
しかし、それでも、そこには大企業では見ることができなかった「夢」や「希望」という自己実現の道が、日々の頑張りを支えていたに違いない。
それだけに、Sさんにとって、こういう形で自分の「夢」に幕が下りるなんて想定外だったことだろうと思う。
しかし、「寄らば大樹の陰」という道を敢えて捨てて、自ら選んだ道を「自分流」に貫いてきたSさんの生き様は立派であり、65歳のチャレンジは実を結ばなかったが、「Sさん、本当にご苦労様でした、そして、お疲れ様でした」と心から拍手を贈る次第である。