goo blog サービス終了のお知らせ 

空をみながら

 地球規模、宇宙規模で考える。死角のない視野の獲得。憲法9条を守ろう。平和のための最高の武器だと思う。

空をみながら(29)

2007年10月24日 08時30分18秒 | 思考試行
 本というのは、著者がいろいろ考えて、工夫して、苦労して書いたものを、あっさりと読ませてくれるので、本当に贅沢な感じがする。泰吉は義母に影響されて、池波正太郎さんのエッセー「日曜日の万年筆」を、読み出したが、わずか、二日ほどで、寝る前とか、寝起きとか、ちょっとした時間を使ってもう読んでしまった。まことに、得るものが多かった。泰吉は、読書のうまみを、これほど明確に体験したことはなかったように思う。なんとなく、考えていたことを、文章にしてくれて、はっきりさせてくれたと思った。エッセーの中で、池波さんは、小説より、苦労することを書いている。さもありなんと思う。読む方は、生身の筆者に触れる感じで、エッセーの方が親しみがもてる。筆者が苦しんでいるということは、うそや誇張を禁じられて、思うさまに書けないということであろうが、それは、読者として、そういうところは、見せて欲しいところである。ホラ話は、面白くても真面目にとらえられないから、まともに受け取るわけにはいかない。役にはたたない気がするのである。しかし、エッセーの中で、作家としての仕事の仕方、考え方を書いていて、それが、包み隠さずという姿勢であり、泰吉は、今度彼の小説を読むときには、その中に、池波さんの真実をみることが出来ると思った。単なるフィクションという見方はしないと思った。彼は、小学校をでたきりで、上級の学校にはいっていない。そのことは、人間の原点を表現するためには、実は、有利なことのように思った。生活の本当の苦労、真実、生きる意味を教えてくれる真に得がたい先生の条件を備えているのである。泰吉は、いい出会いを得たと確信した。泰吉は、ヨボヨボの義母に、大きなプレゼントをもらったのである。世話をしているつもりが、きっちり、世話をしてもらっている。だから、人生は面白いといえる。泰吉は、人生に広がりを実感しつつあった。