日本経済新聞の朝刊の、最終面に「私の履歴書」というコーナーがある。各界の著名人が、自分の生い立ちから、青春時代、そして活躍した時代を経て、現在の状況まで語ってくれる。連載で、約30回位にまとめられている。同時代に生きているものだから、理解できるところ、共感できるところが多い。さすがに、一流の人たちの人生は、それぞれに味があって、すばらしい。ある意味、日本を作り上げてきた中心的な人々なのだ。たしかに、自伝というのは、本当のことばかりではないと言われる。その人にとって、どうしても、書けないことがあると言われている。そういう人もいるだろうが、一流の人は、ごまかしでなれるとは思えない。挫折や苦労の話が、いっぱい出てくる。本質的なことは、書かれているのだろうと思う。泰吉は、完全な庶民である。庶民が、中途半端に人生を語っても、意味がないのかもしれない。しかし、庶民が、圧倒的に多いのである。泰吉の周囲をみても、一流になれるだろう人が、そうはならずに、その人生を終えるのをみている。庶民の悲哀や、喜び、のなかに、これからの世の中の進歩に益することがあるのではないだろうか。