ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『禅 ZEN』

2009-01-12 12:20:48 | 映画
-----あらら、まさか連休中にこの映画を選ぶとは。
これはちょっと意外だニャあ。
「うん。普通だったら後回しにしそうなところだよね。
でもいくつかの偶然が重なって、
この映画にしたんだ」

----その偶然って?
「ほら。お正月のバス・ミステリーツアー。
その二日目にプログラミングされていたのが
永平寺への初詣だったんだ」

----あ~っ。あのフォーンを寒い中、
置いてきぼりにしたときね。
「それは仕方ないじゃない。
さすがにフォーンを高速バスには乗せられないよ。
で、この永平寺というのがビックリものの広いお寺。
雪は降っていたし、寒い中長い時間並んで参拝かと覚悟していたら、
なんとお寺の中を回るんだ。
もともと寒い場所に建立されているから風雪対策も万全。
で、その日は参拝が無料。
パンフはもらえないはずなのに、
僧侶の人が何か配っている。
それが、なんとこの映画『禅 ZEN』のチラシ」

----あら~っ。確かにそれは珍しい体験だ。
「でね、この永平寺がとにかく
見事な建造物。
一つひとつの磨き上げられた床や柱を見ているだけで、
いにしえの職人たちの技に思いを馳せてしまう。
そして、この寺を開いたのが本作の主人公道元というわけだ。
映画は、道元が8歳の頃に抱いた、
『浄土は現世にこそあるべきではないか』との疑問に始まり、
16年後、仏堂の正師を求め、入宋。
悟りをえて帰国。
建仁寺に身を寄せ、弁道に精進。
比叡山から邪教の烙印を押され,
洛外の安養院に身を寄せ、やがて興聖寺を建立。
しかしそこも僧兵たちに焼き払われ、
越前に移り大仏寺(後の永平寺)を建立する。
こういう流れかな。
かなりはしょったけど…」

----道元の役は中村勘太郎だよね。
「うん。永平寺に納められている道元の肖像画と勘太郎の顔がそっくりらしい。
彼は歌舞伎の人だけど、
今回はそれが効いたね。
禅というのはただひたすらに座ることを説く。
それ以外にもいろんな決まりの型があるんだけど、
その形式をぴたっと決めることができるのは、
やはり同じく形式の世界に住む彼のような人間でないと無理だ。
発音もしっかりしていて、
道元の『言葉』を伝えることが軸となるこの映画では、
ぽっと出の俳優には無理だね。
その好例が僧兵による焼き討ちのシーン。
ここは臨場感を出すため
同時録音で録りたいところ。
しかし炎の燃え上がる音が激しく、それは難しい。
そこでスタッフは実際に燃やす前のテストで音を録り、
編集段階で本番の画とあわせることに」

---そんなこと可能ニャの?
「それが可能となったのは、
勘太郎の演技がぶれなかったからこそ。
この映画、予想以上に“泣ける”作品になっていて、
そのほとんどは勘太郎のセリフからきている。
いかに、彼の果たした役割が大きかったかということだね」

---へぇ~っ。仏教用語が多くて
セリフなんて分かんないんじゃニャいの?
「さすがに、
僧侶たちを相手に説く道元の難しい仏教用語は無理だったね。
でも、普通の庶民を相手にするときの言葉は分かりやすい。
映画としては,先ほど話した入宋シーンでの中国ロケ、
叡山の僧侶たちによる焼き討ちのスペクタクル、
さらには藤原竜也の狂気演技が圧巻の、
北条時頼が怨霊に悩まされるシュールな映像、
そして本作オリジナルの遊女おりん(内田有紀)と、
彼女に色欲を感じる俊了(高良健吾)の物語が加わり,
道元や曹洞宗に興味がない人でも
堪能できる作品となっている。
また、道元の亡友・源公暁と、道元が宋で知り合う寂円を
テイ龍進が一人二役で好演。
ここがこの映画のキモだろうね。
公暁が寂円に生まれ変わったかのような錯覚を
観る者に抱かせるんだ」

----ふうん。見どころは多いんだね。
でも、肝心の道元の言葉の中身については
あまり言っていないニャあ。
「それを言い始めると、
前後のシチュエーションまで説明しなければならなくなるから、
さすがにここでは無理。
ただ、この映画の中で描かれる
徹底して自分を律する道元たちの生き方は
拝金主義が進んだあげく、
さまざまな問題が噴き出しているこの荒んだ時代に生きる人々の心に
それこそ岩清水のように清冽にしみてくると思う。
今日はちょっと熱が入っちゃった嫌いもあるけど
主旋律も中国の作曲家・三宝を思わせて心洗われるし、
今年の始めに観るにはいいと思うよ」



           (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「元達磨宗の義介を演じている安居剣一郎って伸びそうだニャあ」身を乗り出す

※これは日本版『ブラザーサン・シスタームーン』だ度

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
良かったです。 (たいむ)
2009-01-19 22:02:43
えいさん、こんにちは。
勘太郎さんのゆったりとした口調、厳しくも優しい凛とした禅師っぷりがお見事でした。
すっかり見入ってしまい、涙をぽろぽろこぼしてました。
返信する
■たいむさん (えい)
2009-01-20 22:00:48
こんばんは。

ぼくもいつしか涙、涙、また涙。
自分にはまず不可能な、
ストイックな人を目の当たりにしたからでしょうか?
こういうのに弱いことを忘れていました。
返信する
大いに不満なのだが・・。 (晴雨堂ミカエル)
2009-10-15 02:07:24
こんばんは、映画ブログの晴雨堂です。
 
 私は大いに不満を抱きながら鑑賞していたのですが、何故か涙ぐんでしまう不思議な映画でした。
返信する
■晴雨堂ミカエルさん (えい)
2009-10-17 10:05:47
こんにちは。

こういう映画って、
映画として語ろうと思っても、
それを超えた部分で
心がほぐれていくところがある気がします。
ぼくもいつしか涙ぐんでいました。
返信する

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