ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『イタリア的、恋愛マニュアル』

2007-05-08 23:48:20 | 新作映画
(原題:Manuale d'Amore)

----この映画って『2』もできているんだって?
監督のジョヴァンニ・ヴェネロージって知らないニャあ。
そんなにヒットしたの?
「うん。
続く『2』ではモニカ・ベルッチら
世界的スターが結集したらしい」

----どんな映画ニャの?
「そうだね。
昨今はやりの『ラブ・アクチュアリー』パターン。
いくつかの愛が数珠つなぎに紹介される。
この映画で語られるのは
『めぐり逢って』『すれ違って』『よそ見して』『棄てられて』の
4つのエピソード。
そして、そのそれぞれのドラマの中に、
他のエピソードの主人公が少し顔を覗かせるという仕組みになっている」

----う~ん。でもそれって最近ではあまり珍しくなくなったよね。
「そうだね。
でも、この映画のオモシロさは
たとえば『Sad Movie サッド・ムービー』などと違って、
結婚前の若いカップルは最初の一組だけ。
それ以外は既婚者の物語ばかり」

----へぇ~っ。イタリア人って情熱的で
恋の達人と言う感じするけど、
この映画でもやはりそんな感じニャの?
「いや、これがみんな悩んでいるんだね。
しかも浮気に関するものが多い。
第三章『よそ見して』の中に
『イタリア人の夫の85%、妻の65%も浮気をするの』という
セリフが出てくるけど、
彼らはみな割り切っているのかと言うと
まったくそんなことはない。
浮気された方の悩み、そして苛立ち、寂しさは
世界中どこでも共通と言う感じがよく出ていた」

----その夫婦のお話は『よそ見して』と『棄てられて』?
「『棄てられて』の方は
浮気ではなく本気だからもっと始末が悪いけどね。
あと、第二章『すれ違って』は倦怠期を迎え、
危機的状況にある夫婦のお話。
ところでフォーン、
この4つのお話、
つまりそれぞれの段階の恋を描いたと言うことで、
ある映画を思い出さない?」

----う~ん。ニャんだろう?
「それは『ふたりの5つの分かれ路』
でも彼ら夫婦に生まれた亀裂、
その始まりの瞬間を過去に遡って見つめる
フランソワ・オゾンと違って、
この映画は夫婦の修復もあれば、未来の新たな希望もある。
その描き方も、
これは韓流か----と思わせるベタなタッチで
冴えない男の美女アプローチ作戦を描く『めぐり逢って』に始まり、
徐々にイタリア映画ならではの艶笑コメディへと移行してくる」

----ニャルほど。
それでヴィットリオ・デ・シーカが
引き合いに出されているワケだニャ。
「パオロ・ヴォンヴィーの音楽も、どことなく60年代チック。
もちろん彼はイタリア人なんだけど、
フランシス・レイあたりを彷彿させてくれた。
そうそう、第一章『めぐり逢って』の主人公の青年シルヴィオ・ムッチーノは
『幸せのちから』の監督らしい。
あまりにも若いから、ちょっと信じられなかった」


※注:ここ、事実関係違いました。
『幸せのちから』の監督はガブリエレ・ムッチーノ。
この映画に出演しているシルヴィオ・ムッチーノの兄でした。
どうも、あまりにも若すぎると思った。
makoさん、ご指摘ありがとうございました。


----そう言えば、そのエピソードで黒猫さんが出てくると聞いたけど…。
「あっ、それは知らない方がいいかも」
----ニャんだろう?またまた気になるニャあ。

    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「黒猫は幸せを呼ぶのニャ」ぱっちり

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画像はイタリア・オフィシャルより。

『消えた天使』

2007-05-05 10:20:38 | 新作映画
(原題:The Flock)

----これ、ある意味話題作だよね?
「えっ、どういうところが?」
----だって主演がつい最近、
インドの国民的美人女優シェルパ・シェティに
ステージ上で激しくキスして逮捕状が出たリチャード・ギア。
結果、謝罪して収まったらしいけど……。
「あ~。あれはぼくも動画で観たけど、あまりにいきなり。
まあ、ギア自身はヒンズー語が喋れなくて、
その代わりに
ああいう形で親愛の情を表現したのかも、
それにしても、やはりしつこい気はしたけど…(笑)」

----そのギアの、これは珍しい<悪役>映画。
「う~ん。一言で<悪役>と決めつけるのも
どうかと思うけどね。
ただ、けっこう危険な要素を孕んでいることは確かだね。
ギアが扮するのは、
長年にわたる性犯罪者管理で精神的に傷を負った、
仕事一筋の管理官バベッジ。
行方不明の少女の捜索を担当した彼は、
彼が追っている凶悪犯の一人が少女を誘拐したと確信。
で、ここが問題なんだけど、
彼ら犯罪者たちは“Flock(群れ)”になっていて、
必ずや犯人に対する情報を知っていると、
かつての犯罪者たちを追跡調査するんだ。
彼ら前科のある者たちは
出所後も決して更生することはないと決めつけているかのような
その内容は正直ゾクッとしたね。
しかもこれがハリウッド・デビューとなる監督のアンドリュー・ラウは
ざらついた映像とノイジーな効果音で観る者の不安をかき立てる」

----クレア・デインズはどういう役ニャの?
「例えて言えば『トレーニング・デイ』の
デンゼル・ワシントンとイーサン・ホークのような関係。
引退間近のバベッジは彼女に
規則破りともいえるような仕事のテクニックを教唆。
映画はその過程で、
平和な日常生活の隣に横たわる
いくつものおぞましい世界を見せていく」

----それは寒々としてそうだ。
これは夏向きかもね。
「そんな冗談言わないの」
----あっ、じゃあこれはどう??
リチャード・ギアがこの映画に出演するのは
運命づけられていた-----。
「えっ、どうして?」
----だってアンドリュー・ラウの出世作は
『インファナル・アフェア』。
リチャード・ギアの悪役映画と言えば
『背徳の囁き』。
これって確か原題が『INTERNAL AFFAIRS』。
最初日本で公開された時のタイトルも
『インターナル・アフェア/背徳の囁き』だったでしょ。
「それ、絶対ありえないって(笑)」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これはヘビーそうだニャ」もう寝る

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画像はオリジナル・ポスターです。

『アドレナリン』

2007-05-03 10:44:29 | 新作映画
(原題:CRANK)


「いやあ、これは巧いアイデアだったね。
主人公はプロのスナイパー、シェブ。
ところがのっけから彼に毒が注射されてしまう。
しかし、この毒が即効性がなく致死まで1時間。
かくして主人公は
死へのカウントダウンを刻むと言うお話なんだ」

----ふうん。でも助かる方法はあるんでしょ?
「その作用を抑えるには
アドレナリンを出し続ければいいんだって。
で、そのことを旧知の医者から知らされたシェブは、
タイムリミットの1時間を、もう走る走る(笑)。
車を爆走させて、あらゆるものを破壊しつくしたあげく、
ついにはエスカレーターにまで乗り上げてしまう。
とにかく自分が興奮し続ければいいわけ。
迷惑この上ないけど、
生き延びるためだから仕方がないやね」

----(笑)。でも、そのプロットは巧いニャあ。
これぞ正真正銘のノンストップ・アクションてヤツだね。
ニャんだか『スピード』みたい。
「うん。少し似ているね。
ただ主人公が裏社会の人間。
向こうが乗客を助けるためなのに対して、
こちらは自分が助かるためというところが決定的に違うけどね。
そうそう。
サイドストーリーとして
シェブの恋人イブとの話が出てくるんだけど、
シェブは自分のほんとうの職業を彼女に話してないんだね。
と言うわけで襲いかかる敵を迎え撃つところを
恋人に見られないように苦心惨憺。
ここが、けっこう笑いを誘う。
死を目前にしてもそれだけは
まだ余裕がある」

----女性が絡むと言うことは
ロマンス・シーンなんかもあるのかニャ。
「いや。かなりHなシーンはあるけどね。
死を先延ばしにするべくシェブは病院へ。
医師に指定された薬を強奪しようとするんだけど、
入院患者に化けるため
彼は手術着一枚を羽織っただけの姿になってしまう。
で、その格好のままアクションを続けるモノだから、
あまりきれいとはいえない体がちらりちらり。
しかもアドレナリンを放出させるため
公衆の面前でイブとセックスまでしてしまう(笑)」

----あらららら。
主演は『トランスポーター』のジェイソン・ステイサムだっけ?
「うん。よくぞここまでやったものだと感心。
クライマックスではヘリの上での格闘もあるけど、
そのスタントも自分でやったらしい」

----と言うことは、かなりの高得点と言ってもいいのかニャ?
「そうだね。全体の3/4くらいまではね。
最後敵地に乗り込むところで
薬の影響でシェブに奇妙な幻覚が現れる。
これがちょっと余計だった気がする。
そこまでのスピード感がここでストップしてしまった。
それさえなければ
“B級アクションの拾いモノ”として
もっとほめちぎったのにな」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でも、ちょっとやりすぎじゃないかニャ」ご不満


※まあよくやる度
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『クィーン』

2007-05-01 14:56:40 | 映画
----ヘレン・ミレン、よかったニャあ。
さすがにアカデミー主演女優賞を取っただけあるや。
「そうだね。
どこまでリアルなのかは分からないけど、
人間エリザベスの苦悩が
シンパシーを持って感じられたものね」

----それとは逆にあのダイアナが
もう、それほど魅力的には写らなくなっちゃった。
「うん。この映画のオモシロさはそこにある気がする。
ここで描かれているのは、
すでに王室を離れていると言う理由から、
交通事故で亡くなったダイアナの葬儀を内輪で済ませようとし、
公式声明を出さない王室に対して、
自分たちへの批判を交わすべく批判的立場を取るマスコミと、
その空気に乗って王室への怒りをぶつける国民----と言う構図。
おそらくこの映画が生まれる前までは
多くの人たちがマスコミ&国民連合の立場に立っていたはず」

----でも、この映画を観たら考えが変わるよね。
女王として生まれ、
その人生を国と国民に捧げる以外の選択肢がないエリザベス。
確かに時代遅れとは言え、
彼女が考える国王や王室のあり方が
なるほどとうなずける形で描かれている。
フォーンもエリザベスが可愛そうになったよ。
「それを感じさせたヘレン・ミレンの演技はさすが。
でも、それもある意味危険なんじゃないかな」

----どういうこと?
「この映画を観ることで
それまで王室批判の立場だった人たちまで、
エリザベスの気持ちに寄り添い、
いままでとは真逆に王室へのシンパシーを抱いてしまう。
だけど、それってあまりにも単純すぎない。
映画によって簡単に思考を左右されている。
実は、映画ではそれに近いことも描いてあるんだけどね」

----あっ、トニー・ブレア首相ね。
「そう。
労働党党首と言う左派的立場ながら
エリザベス、そして王室を守るため奔走。
そして逆境の中でのエリザベスの生きざまを絶賛する。
そんな彼に対する妻のシェリー・ブレアの冷めた目線もオモシロい」

----監督のスティーブン・フリアーズも左翼なんでしょ?
「そう。『ヘンダーソン夫人の贈り物』もある意味反骨の映画だったよね。
でも監督はそんな政治的な立場よりも、
このような形で大勢に流されてしまう人々の危険性こそを訴えたかったんじゃないかな。
そしてそれを観ている観客であるみんなも
そんなムードに乗ってしまいやすい人間たちのひとりではないか----とね。
つまりこの映画は劇中で展開していることに対する国民感情と
それを観ているぼくらの感情とを合わせ鏡にした
二重構造になっている」

----ふうん。
そう言う意味では、脚本も巧いのかニャ?
「ピーター・モーガンね。
『ラストキング・オブ・スコットランド』もそうだけど、
彼の書く脚本は気取りがなく実に親しみやすいね。
そう言えばあの映画のとき
70年代のサスペンスを引き合いに出したけど、
この映画も『フォロー・ミー』など
70年代のイギリス映画の匂いがしたね。
紗がかかっているような淡い色調。
パンフによると
王室は35mm、ブレア首相のシーンは16mmなのだとか。
最近のハリウッド映画のようなクリアすぎて
しかもCGが多用された映像とはまったく異なる。
そういう意味でも、
<映画>を堪能できた作品だったね」


   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「あの鹿さん、かわいそうニャ」悲しい

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