ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『街のあかり』

2007-05-10 00:56:49 | 新作映画
(原題:Laitakaupungin valot)


「……」
----おや、どうしたニャりか?
「う~っ。
ヘビーだった。
よく、ここまでキツい映画作れるな、
このアキ・カウリスマキって人は……」

----でも彼って人気あるよね。
この映画ってチャップリンのタイトルに似ていない?
「うん『街の灯』だね。
あのクラシックな名作と同じく、
主人公コイスティネンはヘルシンキの街をさすらうんだ。
彼は夜警を職業としていて
周囲との付き合いはほとんどない。
でも人生をあきらめているわけではなく
いつか自分の会社を持とうと考え、
株式界者設立の講習会にまで通っている。
ところがそんな彼に、魔の手が忍び寄る」

----魔の手って?
「それはミルヤと言う女性。
監督いわく
『イヴの総て』でアン・バクスターが演じたイヴ以来のファム・ファタール。
実は彼女は、あるマフィアの男の情婦。
彼の命令を受けたミルヤはコイスティネンを誘惑し、
ショッピングセンターの宝石を強奪。
しかも彼に罪をなすり付けてしまうんだね」

----あらららら。コイスティネンはそれに気づかないの?
「うん。ボスの言葉を引用すれば、
彼は『犬のように従順で、ロマンティックで馬鹿』。
いわゆる時代遅れなんだけど、
自分に誠実で、決して裏切った彼女の名を口にしない。
そこがまた一味に利用されて
底なし沼の不幸に引きずり込まれていくわけだ」

----それは観ていてつらそうだニャ。
救いがなさそう。
「いや、チャップリンの『街の灯』を引き合いに出しているくらいだから、
最後、主人公は救われるけだけど、
それは決して劇的に訪れるものではない。
静かに、でもほんわかとあったかいもの。
でもこの映画のような徹底した<孤独>にはその方がいい。
心の交感を示すそのラストショットは
外からの強烈な光よりも
主人公をそして観る者を体の芯から暖めてくれる」

----そう言えば、これ<敗者三部作>と言うんだって?
スゴいネーミングだね。
「どうもフィンランドも格差社会のようだね。
住む場所を失った人たちの共同宿泊所などが出てくる一方で、
贅沢を極めたようなレストランの食事も出てくる。
賭けトランプを楽しむマフィアのボスの部屋には、
高そうなアルコールの瓶がずらり。
そこで情婦とはいえ、ミルヤは電気掃除機をかけている。
このシーンも切なかったな。
あっ、そうそう。
映画のシーン転換はフェイドアウトで統一していたな」

----フェイドアウトと言えば<暗転>。
主人公の人生も<暗転>が連綿と続いてるってわけか。
ニャるほどね。

     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「犬がポイントニャんだって!?」もう寝る


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画像はドイツ・オフィシャルより。