ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『鋼の錬金術師・シャンバラを征く者』

2005-07-13 01:05:01 | 新作映画
-----『ハガレン』映画になったんだ?
「よく知ってるね。ぼくはタイトルを聞いたことがある程度。
でもこれ、すごい人気なんだね。試写室は満員御礼状態だったよ」

-----けど、それじゃ、わかりにくかったんじゃニャいの?
「あらかじめプレスに目を通して予習してはおいたんだけど、
それでもまだ全貌は掴みきれなかった。
おそらくこの映画は『ハガレン』のファン限定で作られたものなんだと思う。
それ以外の観客は眼中にない。でももったいないなあ?」

-----もったいない?
「うん。これが思った以上によくできてるんだ。
ぼくが理解した、この映画以前の『ハガレン』の設定、
それは
エドワードとアルフォンソ、『錬金術世界』のエルリック兄弟。
あることがきっかけで、兄は右腕と左足を、弟は体そのものを失ってしまう。
エドはアルを命を賭けて錬成するものの、
何かを得るためには何かを失う等価交換の原則により
アルは記憶を失い、エド自身は『現実世界』に飛ばされた...ということのようだ」

-----ふうん、凝ってるニャあ。
「おそらく、もっといろいろあるんだろうけど、
基本はこの二つの世界の兄弟を軸に話が進んでいく。
エドが飛ばされたのは1923年のドイツ。
そこでは破滅的なインフレが訪れ、
その状況に不満を抱く若者たちはトゥーレ協会を名乗り
シャンバラへの道を開き、
排他的な単一民族国家形成を目指していた。
そんな中、エドは弟の面影を持つ
アルフォンス・ハイデリヒの力を借りロケット工学を学び、
元の世界へ戻ろうとするが....」

-----するが....?
「そこにトゥーレ協会に追われるジプシーの予言少女ノーアや、
マブゼと名乗るユダヤ人、そして伝説のドラゴンなどが絡んでくる」

-----ファンタジーにしては少し異色だね。
「そうなんだ。さっきジプシーという言葉を使ったけど、
ノーアは『自分たちではジプシーと言わずに<ロマ(人間)>と呼ぶ』と、
現代にもつながる問題提起を行う。
また、マブゼというのも実は『怪人マブゼ博士』のことで、
実は、このユダヤ人は実在の映画監督フリッツ・ラングだったりもする。
そうだな。それらの時代背景を知っていれば、
この映画はさらに楽しめること間違いないだろうね」

------しかし、なんでまたそんな時代を背景にしたんだろう?
「これについては、プレスに監督の水島精二自身の説明が載っている。
それを少し引用してみよう。
『実際にナチが台頭してくるバックボーンにはオカルト思想がありましたし、
今の時代に戦争に向かっていく人々を描くことには意義があると思っています』。
そう、映画の中では、国家社会主義ドイツ労働者党や
それに心酔する人々が、先の大戦で自分たちは本当は負けてはいないと主張。
敗因をユダヤ人たちのせいだと決めつけるばかりか、彼らを恐れ、排斥する。
こういうところに、監督は今の時代と似た空気を感じ取ったんだろうね」

-----ニャるほどね。アニメの技術的にはどうだったの?
「空中戦なども多く、大友克洋の『スチームボーイ』と似たところもあるけど、
こちらの方が物語も起伏に富み、アクションシーンも魅せてくれる。
あの巨匠の作品より、よっぽど親しみが湧いたよ」

                (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『ミュウと波導の勇者 ルカリオ』(劇場版ポケットモンスター)

2005-07-09 15:14:28 | 新作映画
-----今日は「ポケモン」だ。
今度はミュウが出るんだって?
第一作の『ミュウツーの逆襲』以来だね。
「そうだね。毎回、さまざまなファンタジーの要素を入れているこの作品だけど、
今回は、またまた時を超えたお話」

-----へぇ~っ、オモシロそうだ。詳しく話して。
「旅を続けるサトシとピカチュウたち一行は、
数百年前、ポケモン史上最大の争いを止めた
“波導の勇者アーロン”を称える祭りが行われているロータの街にやってくる。
サトシは、街の中心にあるオルランド城で開催された、
その年の勇者を決めるポケモンバトルで優勝。
見事“波導の勇者”に選ばれるものの、
そこに突然幻のポケモン、ミュウが現れ、
ピカチュウとニャオスをどこかに連れて行ってしまう。
一方、サトシたちの前には、
数百年の封印を解かれた“波導ポケモン ルカリオ”が出現。
さまざまな謎の中、サトシはピカチュウを探しに、
<世界のはじまりの樹>へ向かう」

-----<世界のはじまりの樹>?
「うん。これがなかなかオモシロいアイデアで、
<樹>とは言いながら全部<鉱物>で出来ているんだ。
その<樹>でサトシたちを苦しめる敵もアナログなロボット風ポケモン(?)。
この姿形もシンプルでユニークなんだけど、
これは実際にスクリーンで観てもらうしかない。
プレスにもチラシにも一切載ってないしね」

-----ポケモンって、確か何作か前まで短編が同時上映だったよね。
「うん。それら短編に出てくるのは、
ピカチュウらポケモンたちばかり。
人間の登場は最初と最後だけのため、
その間、まったくセリフなしで、ナレーションによる説明...ってヤツだった。
今回、お城でのパーティ中、ポケモンたちは
その場を抜け出してみんなでお城の冒険(?)に出ちゃう。
このあたりのテイストは、それら『ピカチュウのなつやすみ』
『ピカチュウたんけんたい』といった、傑作短編を思わせる」

----じゃあ、小さな子供たちも楽しめそう。
「うん。今回は低年齢層にも楽しめるようにという配慮がなされた作りとなっているのが特徴。
ミュウはひたすら無邪気でかわいいし、
ウソハチ、マネネといった新キャラもマンガチックで、より子供向けに描かれている。
しかも、分かりやすいギャグがいっぱいだ」

-----それにしてもサトシとピカチュウ、すごく仲いいよね。
「そうだね。今回の作品は
サトシが命がけでピカチュウを探しに行く話。
いわゆる<友情>と<信頼>、そして<心の絆>ってヤツだ。
しかも、ふたりの心がふれあうようになったきっかけも
初めてサトシの口から明かされる。
このポケモン、8年連続夏興行を実施。
今回の仕上がりを観ていると、まだまだ続きそうだね」

(byえいwithフォーン)

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猫ニュー


『青空のゆくえ』

2005-07-07 01:43:39 | 新作映画
-----今日は前から話してた『青空のゆくえ』だ。
「うん。でも夜も遅いから、ささっとやっちゃうね。
これは中学3年生の1学期終わりから
夏休みを挟み、2学期を迎えるまでの話」

-----おっ、「中学生日記」か。好きそうだニャ(笑)。
「茶化さないでくれます(笑)。
でも、この映画、なんか珍しいんだよね。
主人公は親の仕事の関係でアメリカに行くことになった正樹。
その発表が彼の周囲にざわめきを巻き起こす。
女子バスケ部キャプテンの有見(森田彩華)、
学級委員長の亜里紗(黒川芽衣)、幼なじみの春菜(多部未華子)、
帰国子女で無口な尚子(西原亜希)、何かと正樹が面倒を見ている貴子(悠城早矢)」

-----ちょ、ちょっと待ってよ?何かと面倒見てる.....って?
「不思議でしょ。貴子には他に友達がいない。
でも正樹は自分から彼女に近づき仲良くなる。
日本に溶け込めないでいる帰国子女の尚子ともそう。
共通の話題を見つけて、ふたりだけの世界を作れるし、
優等生タイプの亜里紗も、彼の前では学級委員長と言うより夢見る女の子。
でも、それは分からないでもない。
正樹は明朗快活なスポーツマン。涼しいかっこよさがある。
ルックスもいいし、もちろん背だって高い。
小さな頃からいつも一番陽が当たるところを歩んできた感じなんだ。
だからおのずと、自分にも自信が出るし、
女性に対してもイヤミなく自然に積極的に振る舞える。
それがいい循環作用を生み出し、さらに彼を魅力的にしていく」

-----ニャるほど『サヨナラ COLOR』とは正反対だ。
「でしょう。もちろん正樹にもハンディは付けてある。
中学一年の時に、起こったある事件への負い目が、
彼の心に深い(?)傷を落としている。
あまり詳しくは描かれていないけどね。
それにしてもこの映画は画期的だと思う。
普通、この手の青春映画って、
青春の挫折や苦しみと言った影の部分を
いかに乗り越えるかに主眼が置かれるものだけど、
これはまったく逆だもの。
こんなにいろんな女の子に好かれる主人公なんて
一昔前の少女マンガくらいしかないって」

-----そうだね。そう言われれば珍しいや。
「とは言え、舞台となる三軒茶屋のロケ、
チャン・イーモウ映画でおなじみのサン・パオの音楽、
そして5人の女の子たちの初々しい演技など、
見るべきところは多かったし、
『中学生日記』が好きなぼくとしては、けっこう楽しめた方だったよ」

      (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『乱歩地獄』

2005-07-05 19:36:34 | 新作映画
----この映画のキャスティングはスゴいね。
舞台挨拶付きだったんだって?
「うん。カメラ・クルーも入って会場は超満員。
浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平が並ぶんだから圧巻だ。
あっ、もちろん監督も挨拶に立ったよ(笑)」

----江戸川乱歩って、ときどき映画化されてるよね。
「そうだね。ただ、こういうビッグネームの作家で、
しかも独自の怪奇幻想世界を描いた小説は
映像化が難しいということを改めて感じたね」

----今回はオムニバスなんだっけ?
「『火星の運河』(竹内スグル)『鏡地獄』(実相寺昭雄)
『芋虫』(佐藤寿保)『蟲』(カネコアツシ)の4本。
竹内、カネコの両監督は本作がデビュー作だ。
それぞれアイスランドロケしたり(『火星の運河』)、
原作にはいない人物を登場させたり(『芋虫』)、
舞台の「蔵」を「楽園」に置き換えたり(『蟲』)と、
自分なりの個性を出そうとしている」

----あれっ?『鏡地獄』は?
「実を言うと、これが最も興味があったんだ。
原作の読後感が強烈だったしね。
『球体の鏡の中に入ったら何が見えるか?』
子供の頃、けっこう悩んだよ。自分で作れないかとも思った。
で、クラスのできるヤツに聞いたら...」

----聞いたら?
「『光源をどこに置くかだろうね』だって。
そう言われるといよいよ興味が出てきた。
たとえば実際に人が鏡に入らなくても、
球体の中心にカメラを置いて
外でそれをモニターしたらどう見えるか?とかだね」

----話が映画からずれてきた(笑)。
「ま、それはともかくとして、
この小説では最後に球体の鏡が完成して
そこから、中に入り狂ってしまった主人公が出てくる。
ぼくは当時ココを読んで、相当に大きな球体の鏡をイメージした。
ところがこの映画の球体鏡は
しゃがんだ人間がやっと入れるくらいの大きさ。
思ってたのとだいぶ違う。
と、このことに象徴されるように、
乱歩が頭の中で作り出した世界は、
読んだ人によって受け取るイメージが千差万別。
それだけに映像化は難しい...と、これが言いたかったわけさ」

----ニャんだか、今日のお話、だまされてるみたい。
           (byえいwithフォーン)

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『鳶がクルリと』

2005-07-04 20:24:46 | 新作映画
----これって窪塚洋介の復帰が話題になった映画だよね。
「監督が『凶気の桜』でデビューした薗田賢次。
復帰は、まず彼の作品でってところみたい。
役どころも美容師でアクションはおろか
セリフもほとんどなかったよ。
でも本格復帰の手応えは掴めたんじゃないかな」

----原作も『凶気の桜』のヒキタクニオだっけ?
「そう。どうもぼくにはこの原作・監督コンビの映画は分からない。
いまの時代の空気が出てるのかな...とは思うけど。
タイトルだけ聞けば、これはコメディかなって。
でも、そこに徹してるわけじゃないし」

----歯切れ悪いな。どういうお話なの?
「主人公は大企業に勤めるOL・貴奈子(観月ありさ)。
ところが夢を賭けたプロジェクトに失敗して
突然<鳶職人>との新プロジェクトを任される。
しかしどこに行っても断られ、
彼女は因縁浅からぬ<日本晴れ>という会社へ。
工期が迫る中、彼女はガンコな鳶職人を口説き落とせるか?
というストーリー」

---う~ん。シンプルな話だニャ。
ライバル会社の妨害とかあるんじゃニャイの?
「いや、そういうことも最初の段階で終わり、
ほとんどは、この貴奈子の交渉を通して、
彼ら鳶職人の生きざまを描くことに費やされる。
そこで彼女が目にするのは神社で柏手を打ったり、
彫り物に褌姿姿で水を浴びたりと、
日本古来からの伝統を今に残す職人たちの姿。
この日本的なアイテムを至るところに散りばめつつも、
ヒップホップやレゲエといった“現代”の音楽を取り入れ、
さらには小刻みなカッティングでマンガチックな部分も入れる。
これが前作とも通じる、薗田監督の手法みたい」

---みたい...って、あまり巧く機能してないわけ?
「うん。映像や効果音の<遊び>が入れば入るほど冷めちゃうんだよね。
て言うか、それ以前に、鳶職人が働く現場の恐怖が醸し出せていない。
高所恐怖症で、ちょっと高いところの映像が出てきても
クラクラするはずのぼくなのに、まったく平気。
これはどうしてだろう?
もしかして風景は合成なのかな?
でもそうではなく、実際に高所でロケしているのだとしたら
<高さ>を出せていないという演出的問題になっちゃう。
この映画のテーマ自体よく掴みにくいけど、
もし、このような危険な場所で命を懸けて働く
鳶職人に敬意を表する映画だったら
<高さ>はきちんと表現してほしかったと思う」

     (byえいwithフォーン)

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猫ニュー


『宇宙戦争』

2005-07-03 12:01:33 | 映画
------これってもう公開されてるよね。
すごい秘密主義だったみたいだけど、予想と比べてみてどうだった?
「スピルバーグって『未知との遭遇』で
それまで映画で描かれていた宇宙人=侵略者のイメージを覆した人。
そこで放たれた<We are not alone>のメッセージは
『E.T.』で個と個の友情にまで発展していく。
でもこの『宇宙戦争』は
H・G・ウェルズの原作を基に侵略をテーマに描かれた映画。
すでにバイロン・ハスキンが53年に映画化。
50年代SFの代表とも言われている。
もっとも製作のジョージ・パルの方が有名で、
この映画はジョージ・パルの名で語られることが多いけど...」

-----そういうことはどうでもいいから、この映画はどうだったの?
「うん。これは<家族愛>を前面に打ち出した宣伝展開になってるけど、
どちらかというと<ホラー>映画という感じだったね。
もちろんタイトルに偽りなしで<戦争>もあるし<SF>もある。
でも、観ている途中ぼくの頭をよぎっていったのは
『ゾンビ』『タイタニック』『プライベート・ライアン』
『ポルターガイスト』『エイリアン』、そして『GONIN』」

-----えっ?『GONIN』って石井隆の?
「まあ、それは後で話すことにして、
この映画、冒頭はニュージャージー。
主人公レイが別れた妻と面会するシーンから始まる。
ある期間だけ子供たちと過ごせるというこの設定はアメリカ映画に多く、
正直、またか...という気にもなったけど、
この<父と子の関係>が映画を最後まで牽引していく。
反抗的な息子ロビーと、神経過敏な娘レイチェル。
前触れもなく唐突に始まった異星人の侵略に対し、
その現場に立ち会ったレイは二人の子供を抱え、
ニュージャージーから妻の住むボストンへ向かうわけだ。
自分だけじゃないからサスペンス色もさらに増してくる」

----なるほど。全地球規模の戦争でありながら、
一家族の物語にスポットを当ててるわけだ。
「うん。でも最初はこれは夢落ちかと思わせるほどの強引な展開。
他人の車を盗んで夢中で飛ばすレイ。
事情が飲み込めない子供たちは半パニック。
彼らは現場を見てない上に、もともと親を信頼してないわけだからね。
ぼくも、ここはレイの幻覚、妄想かも...と思ってしまった」

----いくらなんでもそれはニャいでしょ?
「うん。それはなかった(笑)。
さて、この後さらなる<悪夢>が彼を襲う。
フェリー乗り場近くで、一台だけ動いている彼らの車を目がけて
人々が<ゾンビ>の群れのように突進。
どうにか乗り込んだフェリーでは乗り遅れた人々が船に飛び乗る」

----ああ、ここが『タイタニック』か。
「必死に岸に泳ぎ着いた家族が目撃するのは異星人に立ち向かう軍隊」
----ここが『プライベート・ライアン』ね。
「で、身を切られるような親子泣き別れのシーンを挟んで
映画の中軸をなす廃屋のシーンが始まる。
彼らを廃屋に招き入れた男(ティム・ロビンス好演!)は異星人と戦うことを主張。
一方のレイは彼らの目を逃れて生き延びることを選ぶ。
この<生きざま>の対立の中、
廃屋内を異星人の<眼>が巨大蛇のように彼らを探し回る。
ばくがさっき言った石井隆『GONIN』というのはここ。
あの映画でもっとも恐かったのは
押し入れに身を潜めて隠れた恋人たちが見つかるところ。
見つかればその先に待ち受けるのは<逃れられない死>。
ただ、今回ちょっと不満なのは
そこで<眼>を避けて逃げ回る3人の<脅え>が足りなかったところ。
もし、実際にあんな事態に遭遇したら、
震えて足も動かないんじゃないか....そう思ったわけだ。
たとえばこれを時代劇に置き換えてみよう。
城を攻められ、秘密の小部屋に隠れ息を潜める城主。
外には刀を手に彼を探し回る敵軍。これはほんとうに恐いと思う。
吉良上野介の気持ち、分かるなあ...」

----ちょっと、ちょっと。話がとんでもない方向にってニャい?
「あっ、ごめんごめん。
さて、ここでついに異星人が姿を現す。
最初は『エイリアン』を思わせたけど、
やはりあれを超えるほどの造型ではなかったね。
ま、この後の見どころは
異星人のマシーンに飲み込まれた後、彼らがどうするか?ってことかな」

----ニャんだか、あっさりまとめようとしてニャい。
結局はどうだったの?オモシロかったの?オモシロくなかったの?
『ポルターガイスト』の話もしてないし...。
「スピルバーグってファミリー・エンターテイメントのイメージが強く、
あまりホラーなんて作ってないよなあ....と思って出かけたため、
その過激なまでの残酷描写にびっくりしたというのが正直な気持ち。
でもよくよく考えてみれば、彼は『激突!』『JAWS・ジョーズ』という
どちらかと言えばショッキングな作品から、そのキャリアを始めているわけで、
こういうのはもともとお手の物だったわけだ。
あとトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』なんだけど、
これは実質的にはスピルバーグが監督したと言われている。
<少女を未知の脅威から守る父親>という、その構成も似てるけど、
あの映画の中に、キッチンでぐにょぐにょ動くステーキ肉という、
スピルバーグらしからぬグロテスクな映像が出てくる。
(ここだけはトビー・フーパーが演出したという説もあり)
今回の映画は、あのシーンを観たときの胸のざわめきと近い。
いままで封印されていた
スピルバーグの闇の部分が描かれたという意味でも、
ぼくはオモシロかったよ」

     (byえいwithフォーン)

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『サヨナラ COLOR』

2005-07-01 20:03:23 | 新作映画
-----この映画、観たの昨日だったよね。
なぜ、一日延ばしたの?
「う~ん。あまりにもビミョーな映画で、
自分の中でも考えがまとまらなかったんだ」

-----どういうところが?
これ、確か竹中直人監督作品だよニャ?
「うん。あの監督は<映画>として観た場合、いつも申し分ない。
映像の吸引力とでも呼びたくなる何かを持っていて、
観る者の目をスクリーンに釘付けにする。
それはやはり<作家>と呼びうる、一部の才能ある人のみが持ちうるもの。
ただ、そこに描かれた世界をどう見るかは、それこそ人それぞれ。
今回は、あまりにも私的な世界すぎて
これはけっこう、好悪が激しく分かれそうな気がするな」

-----でも、もともとシナリオがあったんだよね。
「そう、名手・馬場当のね。
タイトルも『ミセス「洋燈」へ』と言って、
竹中直人をイメージして書かれたのだとか。
で、当初は竹中主演でという話だったのが
SUPER BUTTER DOGの『さよならCOLOR』を想起した竹中が、
自身のアイデアも織り込み馬場と共同で脚本を執筆...監督もということらしい」

----ニャるほど。お話はどういうの?
「主人公は医者の正平(竹中直人)。
その彼のもとに、子宮がんを患った未知子(原田知世)が入院してくる。
未知子は正平が恋い焦がれた初恋の人。
独身を謳歌してるかに見えながら、ずっと彼女を思っていた正平。
すっかり自分を忘れている未知子の素振りに傷つきながらも、
彼は献身的な治療を施す。
未知子は徐々に回復し、やがてはその心も...というお話だ」

----う~ん、いままでにもどこかにあったような...。
ずっと片思いだった男が、オトナになってその想いを遂げる。
あっ、『華麗なるギャツビー』だ。
「(笑)。もちろん、あの映画ほど正平は裕福じゃないし、
未知子のキャラクターもまったく違う」

-----第一、竹中直人はロバート・レッドフォードのように
かっこよくない(笑)。
「そう、そこがポイントなんだ。
この映画は竹中直人のキャラクターとしてみんなが抱くであろう実像イメージが
そっくりそのまま盛り込まれている」

-----ん?アブラぎってるとか、しつこいとかかニャ?
しかもHなおっさん(笑)。
「そういうことだね。一方、竹中はこれまでそれらと並列して
自分のセンチメンタリズムを自作の中で明らかにしてきている。
『119』しかり『東京日和』しかり。
今回も主旋律はこのセンチメンタリズム。
でもこれまでにも増して露悪的。
たとえば彼には飲み屋の愛人がいて、援助交際もやって(正平談)。
看護士のお尻をムギュッと掴む...なんてのはこれまでどおりか。
でも、好きな女性への想いは一途。
で、最初は『しつこくされて不機(気)嫌なんです』と言っていた未知子が
最後には『あのしつこさが私を救ってくれたと思う...』、
さらには『しつこいのね、好きよ』に変わる」

-----それって一歩間違えればストーカーじゃニャいの?
「そこなんだ。この映画はしつこさが軸になってるわけだけど、
そこには、見てくれがダサイ男は、そうするしかないという切実さがある。
これは後日話すけど『青空のゆくえ』という映画と正反対。
『青空のゆくえ』では主人公の男がかっこいいこともあり、
最初から女生徒たちが彼に胸襟を開く。
一方、この正平は『ささ菌』と呼ばれ、女生徒は誰も近づかなかった男。
ところが、そんな男にも当然に恋心はあるわけで、
高校時代、未知子の家の周りをうろうろ。
木の上から「好きだー。大好きだー」と町中に聞こえる大声で叫ぶ。
その気持ちは痛いほど分かるけど、やはりこれって相手にとっては迷惑。
でも、そんなことに若い正平は思いが及ぶはずもない。
まあ、それが恋だけど...」

-----ニャるほど。となるとこの映画は“愛の奇蹟”を描いてるわけだ。
「そうだね。20年以上想いを捧げていた男がその気持ちを通わせる。
しつこくて何が悪い。
しつこくても続けていれば、こんなにいいことがあるんだよというわけだ。
この考え方が広く受け入れられるかどうか、ほんとにビミョーだ。
相手が不治の病だったと言う設定もビミョーだし、
そこに、ここまで自分の地を出されるとなあ...。
もちろんテーマ曲もいいし、
『愛することは長い夜にともされた美しい一条のランプの光だ』の
名セリフも忘れがたい印象を残す。
撮影=佐々木原保志&照明=安河内央之コンビによる映像も
いつもながら申し分ない。
影絵のシーンは長く語り継がれるだろうし、
『あのしつこさが私を救ってくれたと思う...』と
毅然と言う原田知世を捉えたショットも素晴らしい。
これほど美しい彼女も久しぶりに観たよ」

-----う~ん、よく分からないニャ。
結局、どうだったの?よかったの、ダメだったの?
「だからビミョーだって」
     (byえいwithフォーン)

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