ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『サヨナラ COLOR』

2005-07-01 20:03:23 | 新作映画
-----この映画、観たの昨日だったよね。
なぜ、一日延ばしたの?
「う~ん。あまりにもビミョーな映画で、
自分の中でも考えがまとまらなかったんだ」

-----どういうところが?
これ、確か竹中直人監督作品だよニャ?
「うん。あの監督は<映画>として観た場合、いつも申し分ない。
映像の吸引力とでも呼びたくなる何かを持っていて、
観る者の目をスクリーンに釘付けにする。
それはやはり<作家>と呼びうる、一部の才能ある人のみが持ちうるもの。
ただ、そこに描かれた世界をどう見るかは、それこそ人それぞれ。
今回は、あまりにも私的な世界すぎて
これはけっこう、好悪が激しく分かれそうな気がするな」

-----でも、もともとシナリオがあったんだよね。
「そう、名手・馬場当のね。
タイトルも『ミセス「洋燈」へ』と言って、
竹中直人をイメージして書かれたのだとか。
で、当初は竹中主演でという話だったのが
SUPER BUTTER DOGの『さよならCOLOR』を想起した竹中が、
自身のアイデアも織り込み馬場と共同で脚本を執筆...監督もということらしい」

----ニャるほど。お話はどういうの?
「主人公は医者の正平(竹中直人)。
その彼のもとに、子宮がんを患った未知子(原田知世)が入院してくる。
未知子は正平が恋い焦がれた初恋の人。
独身を謳歌してるかに見えながら、ずっと彼女を思っていた正平。
すっかり自分を忘れている未知子の素振りに傷つきながらも、
彼は献身的な治療を施す。
未知子は徐々に回復し、やがてはその心も...というお話だ」

----う~ん、いままでにもどこかにあったような...。
ずっと片思いだった男が、オトナになってその想いを遂げる。
あっ、『華麗なるギャツビー』だ。
「(笑)。もちろん、あの映画ほど正平は裕福じゃないし、
未知子のキャラクターもまったく違う」

-----第一、竹中直人はロバート・レッドフォードのように
かっこよくない(笑)。
「そう、そこがポイントなんだ。
この映画は竹中直人のキャラクターとしてみんなが抱くであろう実像イメージが
そっくりそのまま盛り込まれている」

-----ん?アブラぎってるとか、しつこいとかかニャ?
しかもHなおっさん(笑)。
「そういうことだね。一方、竹中はこれまでそれらと並列して
自分のセンチメンタリズムを自作の中で明らかにしてきている。
『119』しかり『東京日和』しかり。
今回も主旋律はこのセンチメンタリズム。
でもこれまでにも増して露悪的。
たとえば彼には飲み屋の愛人がいて、援助交際もやって(正平談)。
看護士のお尻をムギュッと掴む...なんてのはこれまでどおりか。
でも、好きな女性への想いは一途。
で、最初は『しつこくされて不機(気)嫌なんです』と言っていた未知子が
最後には『あのしつこさが私を救ってくれたと思う...』、
さらには『しつこいのね、好きよ』に変わる」

-----それって一歩間違えればストーカーじゃニャいの?
「そこなんだ。この映画はしつこさが軸になってるわけだけど、
そこには、見てくれがダサイ男は、そうするしかないという切実さがある。
これは後日話すけど『青空のゆくえ』という映画と正反対。
『青空のゆくえ』では主人公の男がかっこいいこともあり、
最初から女生徒たちが彼に胸襟を開く。
一方、この正平は『ささ菌』と呼ばれ、女生徒は誰も近づかなかった男。
ところが、そんな男にも当然に恋心はあるわけで、
高校時代、未知子の家の周りをうろうろ。
木の上から「好きだー。大好きだー」と町中に聞こえる大声で叫ぶ。
その気持ちは痛いほど分かるけど、やはりこれって相手にとっては迷惑。
でも、そんなことに若い正平は思いが及ぶはずもない。
まあ、それが恋だけど...」

-----ニャるほど。となるとこの映画は“愛の奇蹟”を描いてるわけだ。
「そうだね。20年以上想いを捧げていた男がその気持ちを通わせる。
しつこくて何が悪い。
しつこくても続けていれば、こんなにいいことがあるんだよというわけだ。
この考え方が広く受け入れられるかどうか、ほんとにビミョーだ。
相手が不治の病だったと言う設定もビミョーだし、
そこに、ここまで自分の地を出されるとなあ...。
もちろんテーマ曲もいいし、
『愛することは長い夜にともされた美しい一条のランプの光だ』の
名セリフも忘れがたい印象を残す。
撮影=佐々木原保志&照明=安河内央之コンビによる映像も
いつもながら申し分ない。
影絵のシーンは長く語り継がれるだろうし、
『あのしつこさが私を救ってくれたと思う...』と
毅然と言う原田知世を捉えたショットも素晴らしい。
これほど美しい彼女も久しぶりに観たよ」

-----う~ん、よく分からないニャ。
結局、どうだったの?よかったの、ダメだったの?
「だからビミョーだって」
     (byえいwithフォーン)

※ビミョー度
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